邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「ぼんち」

2004年09月17日 | ★人生色々な映画
磨きこまれて黒光りした廊下を真っ白な足袋がツツツ~っと走る。

市川雷蔵が大阪船場の15代続いた足袋問屋の跡取り息子
“喜久ぼん”、「ぼんち」を演じています。

この喜久ぼんがまた女にもてる。
めかけの2,3人は男の甲斐性と言われた?らしい時代です。

原作があの財前五郎を生んだ
山崎豊子
だけありひとりひとりの人物描写が鋭く書き込まれていて、
脚本もそれに準じています。

特に雷蔵の母親役山田五十鈴の「婿取り娘」ぶりは必見。
家をとりしきる祖母・毛利菊枝(怪演)にくっついて、
嫁・中村玉緒をいびる、
とてもすごいシーンがありました。(ネタバレするからヒ・ミ・ツ)

若尾文子演じる芸者ぽん太の“あっぱれめかけ道”ぶり、
京マチ子のお色気、草笛光子の美しさ、
越路吹雪のモダンガールぶりなど見所満載。(み~んな、喜久ぼんのめかけ/愛人!)

この映画を「女は強し」とする方もいるでしょうが、
ぼんちもなかなかどうして、たいした男です。
私はぼんち道ここに見ました。

船場言葉が軽妙で味わいがあり、後味すっきりです。
人生はケ・セラセラ~~

1960年:監督は市川崑
撮影は宮川一夫
ぼんち@映画生活

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「約束」

2004年09月14日 | ★愛!の映画
「蛍がこの世の中にいるなんて、もう信じない」
Q:この台詞を詩のようにつぶやけるやつは誰か他におるか!
A:ハイ上官殿!岸恵子しか、いないであります!

こんなサムいギャグを飛ばすまでも無く、
日本映画でありながら、フランス映画のよう・・と評された
由縁のひとつは、
「立っているだけでもフランス」・岸恵子の存在感でした。

テーマが日本映画ではなかなか見られない「大人の恋」であること、
そして斉藤耕一監督の詩的な世界が仏映画的なものを
感じさせたのかもしれません。

「約束」という言葉はなんと我々の好奇心をそそるのでしょうか。

宿命を背負った女(岸)と青年(萩原健一)の切ない恋を描いた、
この叙情詩のような映画を、私はつぶれかかった田舎の映画館で見ました。

お客はなぜか妹と私の二人のみ。
がらんとした映画館の真ん中には
大きなダルマストーブがあって
もぎり兼、掃除婦兼、経営者のおばさんが、
私たちだけのために火をつけてくれました。

とうていロマンチックとは言えない環境だったのにもかかわらず、
チロチロと燃えるストーブの傍らでスクリーンを見つめながら
しばし遠い街へ旅をしたような気がします。

斉藤監督にはずいぶん前ですが、お会いしたことがありました。
ジャズがお好きなダンディな紳士でした。

一度見たら忘れられなくなる、切ない愛の映画。
秋から冬にピッタリの映画です。

*注:写真と記事は全然関係ありません

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「幕末太陽傳」

2004年09月06日 | ★ぐっとくる時代劇
フランキー堺主演。幕末の江戸・品川宿を舞台にした人情劇、群像劇。
古典落語がベースに据えられています。

フランキーといえば、「私は貝になりたい」での名演技が知られていますが、
この映画では、肺病を病みながらも
明るくシブトク生きる男を演じて、
キネマ旬報男優賞ならびにブルーリボン男優主演賞を受賞しています。

ちゃっかりしてるくせに愛嬌があって人が良い、
こんな主人公、
誰だって応援せずにはいられなくなるでしょう。
彼をとりまく人々も愉快で魅力的です。
遊女役の左幸子と南田洋子が信じられないくらい(失礼)美しい。

見終わった後、
「なあに、なんとかなるさ!」「なんとかなって欲しい!」「なんとかなってチョウダイ!」
と主人公と自分自身にもエールを送りたくなること請合いです。

人生、どう生きるかは自分次第。
深刻な状況をカラッと笑い飛ばす、そんな生き様気持ちいいです。
とてつもなく楽しいんだけど、なぜか泣けてくるんだよなあ。

昭和32年度 川島雄三監督作品。
助監督と脚本には今村昌平の名が。
音楽は黛敏郎

共演は豪華です:左幸子、南田洋子、石原裕次郎(高杉晋作役!)、
芦川いづみ、金子信雄、山岡久乃、小沢昭一、殿山泰司、
小林旭、美青年の頃の岡田眞澄など。

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「黒蜥蜴」

2004年09月02日 | ★妖しい映画
宝石とともに寝る夜は 冷え冷えときらめく臥所
不眠症の月 凍った刺青
熱い血は下水に流せ
犯罪とともに寝る夜は ときめきと悩みのソファー
不眠症の星 死体の瞳
火のような吐息は殺せ
黒蜥蜴 夕暮れの肌 黒蜥蜴 朝焼けの爪
街はみな倒れ伏す 恐ろしいその名に・・・

京マチ子主演「黒蜥蜴」のテーマ。
黛敏郎作曲、歌詞は三島由紀夫による。

愛は盗人
私の心を
スリよりもすばやく
盗んで逃げた・・♪

愛する明智探偵を海に沈めるシーンで歌う
劇中歌もたいへんムーディ。

かと思うと、
泥棒の歌で脱力必至!

とにかく台詞がふるっている。
江戸川乱歩の原作を三島由紀夫が戯曲にし、
さらにここでは新藤兼人が忠実に脚本化しています。

はじめて見る方も冒頭からすぐに妖しくモダンでナンセンスな
黒蜥蜴の世界に引き込まれていくことでしょう。

有名な美輪明宏の舞台は未見なんですが、
京マチ子は黒蜥蜴にピッタリの女優さんだと思う。
SKD出身な見事な踊り、ダイナミックな容姿で
貫禄も申し分なし。

さあ、今宵は良い働きをしたお前に爬虫類の称号を与えよう!by 緑川婦人

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