古代のイタリア、ローマの近くにネミの森と呼ばれた森があり、そこには森の神ディアーナに仕える司祭「森の王」がいた。森の王になりたいものはネミの森の近くの湖のほとりに生えているヤドリギの枝(陽光を浴びてきらきら輝くので「金枝」と呼ばれる)を折って、現在の森の王を殺害しなければならないという決まりがあった。但しヤドリギの枝を折ることが許されているのは逃亡奴隷だけ。
なぜ森の王は殺されなければならないのか?ヤドリギの枝には、何の意味があるのか?このような問題意識に取り組んだイギリスの社会人類学者ジェームズ・フレイザーは、古代の欧州における神話、呪術、信仰のあり方についての研究を進めます。その研究の範囲は次第に欧州からアジア、オセアニア、アメリカのインカやアステカ、北米ネイティブアメリカンの社会の研究にまで広がっていきます。原著は全13巻になる壮大なものですが、広範な図版を収録しできるだけ簡略化されたものが写真の『図説 金枝篇』上・下(講談社学術文庫2011年)です。引き込まれて気が付くと読了していました。