マクドの4人だけじゃなく、
岩崎や、あんまり投げていない筈の球児まで限界を超えている。
(球児は元々こんなもんか?)
今こそフランキー安藤の一軍登録を!
KYKとなにやらあってファームで飼い殺し状態だけど、
ずっと好調を維持している。
恩讐を越えて、ベテランに頼るべきである。
そうしないと、プロ野球ニュースの解説陣の予想通り、
旧阪神タイガースは今年もCS進出を逃してしまう!
リンゴーン、という呼び鈴でドアを開けると、1人のボーイが立っていた。
僕らをプールに呼び出しにきたようだ。
どうしたんだ?
という問いに、ボーイはただ
驚かれますよ
と意味ありげに笑うだけだった。
僕は奥にいた婚約者の美佐子を呼び、とりあえずボーイについていった。
「わあ!」
「おお!」
プールを目にしたとき、僕らは感嘆の声を同時にあげた。
僕と美佐子の親族と友人でできた人垣の向こうには、荘厳な寺院を思わせる、蓮の池が出来上がっていた。
僕と美佐子の家、花重家と木禾家は日本有数の名家であり、日本を代表する富豪でだ。
そういう家柄のせいか、幼馴染みとだった僕らだが、次第に惹かれあい、結婚するにいたった。
せっかくなので、大型客船を借り、雄大な海の上で式をあげ、そのまま新婚旅行を満喫するつもりだった。
美「凄ぉい!何本あるのかしら!?」
興奮する美佐子に、
確認したところ、88本です
と先程のボーイが恭しく答えていた。
弘「88本かぁ。末広がりで縁起がいいね(笑)」
美「睡蓮なんて珍しいチョイスよね。しかもね」
美佐子は興奮と嬉しさの満面の笑みで、
美「睡蓮の花言葉は『清純な心』『甘美』『優しさ』『信頼』『純情』なのよ」
弘「まさに今の僕らにはぴったりってわけか」
美「本当、凄かったわねぇ☆」
部屋に戻ってからも、美佐子ははしゃいでいた。
美「本当、明日が楽し、み…」
と、幸せそうな美佐子の顔が、刹那あからさまに曇った。
弘「どうしたの?」
美佐子の変化に驚きながら聞いた。
美「え…ほら、アイツのこと思い出しちゃって」
弘「アイツ?」
美「ほら、記者会見のときの」
弘「ああ…」
美佐子の言葉に、僕も顔を歪めた。
弘「本当に失礼な奴だったな」
美「本当よ。『金はあなた方の下にあるんですね』だなんて…何考えてるのかしら!」
弘「名家同士、富豪同士、確かに、金が1つの家に集まるかもしれない。でも、世間が言う様な政略結婚じゃないのにな…」
美「愛ゆえだもんね☆」
美佐子の、不貞腐れた様な顔が再び笑みに変わった。
弘「ところで睡蓮、88本も誰が送って来てくれたの?」
美「さあ?それがわからないみたいなの」
*****
『引き続き、お伝えします。昨晩、花重弘若さん・木禾美佐子さんの結婚式場となっていた客船が座礁しているのが発見され、生存者の捜索が行われていますが…』
★「生存者なんかいないのになぁ」
ニュースに応えるように独り呟いた。
『詳細は不明ですが、生存者は絶望視されており、また、発見された遺体にも不可解な点が多いとのことです。』
俺は持っていたカードをパラパラと弄んだ。
★「睡蓮…まあ、鳥兜じゃあからさまだし、無難だったよな」
言いながら引いた1枚のカード。
それは―