未だ原因不明の部下の死から、一週間が経った。
行方不明だった二人の部下の内、一人が某廃ビルのエレベーターシャフト内で死体となって発見された。
もう一人は依然として見付からず、連絡も取れない。
数日内に三人も記者を失った責任から、俺はこの仕事を最後に辞職しようと考えている。
この事件の発端は、俺が真冬に心霊スポットを取材して記事にすれば面白いのではないか、と言ったことだ。
反対を唱える者もいたが、編集長という地位を使って無理矢理この企画を押し通した。
そして部下数名を取材に行かせた結果が、この有様だ。
正直、この件にはもう関わりたくないのだが、犠牲となった三人のためにもこの企画をやり切るつもりだ。
三人以外で取材に行った者達は、次は自分が死ぬのではないか、と怯えているが、なんとか説得して記事を書かせている。
仕上がった記事の校正に集中していると、ガリガリに痩せ細った手が書類を差し出してきた。
「編集長、記事書キ上ガリマシタ……」
えらく枯れた声だな、と思いながら、差し出した者の顔を確認せずに原稿を受け取ろうとし、
「あつっ!」
思わず手を引っ込めた。
俺が触った場所から、突如原稿が燃え出したのだ。
慌てて顔を上げたが、そこには誰もおらず、残ったのは灰だけだった。
その晩、俺は全身汗だくになって目が覚めた。
嫌に現実味のある夢だった。
夢の中の俺は、暑く照りつける太陽の下、村の中を水を求めて歩き続ける。
どうやってこの村に来たかも覚えておらず、ただただ歩き続ける。
やっとのことで井戸を見つけ、水が飲めると喜んでその井戸に飛び付き、中を覗いた。
そこで目が覚めた。
行方不明だった二人の部下の内、一人が某廃ビルのエレベーターシャフト内で死体となって発見された。
もう一人は依然として見付からず、連絡も取れない。
数日内に三人も記者を失った責任から、俺はこの仕事を最後に辞職しようと考えている。
この事件の発端は、俺が真冬に心霊スポットを取材して記事にすれば面白いのではないか、と言ったことだ。
反対を唱える者もいたが、編集長という地位を使って無理矢理この企画を押し通した。
そして部下数名を取材に行かせた結果が、この有様だ。
正直、この件にはもう関わりたくないのだが、犠牲となった三人のためにもこの企画をやり切るつもりだ。
三人以外で取材に行った者達は、次は自分が死ぬのではないか、と怯えているが、なんとか説得して記事を書かせている。
仕上がった記事の校正に集中していると、ガリガリに痩せ細った手が書類を差し出してきた。
「編集長、記事書キ上ガリマシタ……」
えらく枯れた声だな、と思いながら、差し出した者の顔を確認せずに原稿を受け取ろうとし、
「あつっ!」
思わず手を引っ込めた。
俺が触った場所から、突如原稿が燃え出したのだ。
慌てて顔を上げたが、そこには誰もおらず、残ったのは灰だけだった。
その晩、俺は全身汗だくになって目が覚めた。
嫌に現実味のある夢だった。
夢の中の俺は、暑く照りつける太陽の下、村の中を水を求めて歩き続ける。
どうやってこの村に来たかも覚えておらず、ただただ歩き続ける。
やっとのことで井戸を見つけ、水が飲めると喜んでその井戸に飛び付き、中を覗いた。
そこで目が覚めた。
井戸の中がどうなっていたかは思い出せない。
昼間の怪奇現象とこの夢、何か関係があるのだろうか……
翌日、寝不足でややウトウトしながらキーボードを叩いていると、視界の端に原稿が見えた。
誰だ無言で置いていった奴は、と苛立ちながら、その原稿を引っ掴んだ。
『ベチョ』
触れた用紙は湿っていた。
寝呆け眼で原稿に目を向ける。
なんだこれは……真っ赤で……やや鉄臭い……もしや、血……?
眠気など吹き飛び、慌てて真っ赤に濡れた原稿から離れた。
手には血であろうものがベッタリと着いていた。
その晩、俺は妻に起こされた。
顔面蒼白で呻き声をあげていたので、慌てて起こしたらしい。
今日もひどく鮮明な夢を見た。
真っ暗な縦穴を落ちていく。
何度も壁にぶつかり、激痛が襲うが、意識は飛ばない。
そして背中から地に落ち、何かの突起が身体に刺さる。
骨折、打撲、出血で失神しそうになった所で、起こされた。
もうこりごりだ……早く解放されたい……
翌日、朦朧とした意識でデスクに座り放心していると、一人の男が正面に立った。
「編集長、記事、仕上がりました」
そう言って書類を差し出してきた。
「あ……ああ……」
警戒しながら書類を受け取ろうとすると、男が言った。
「俺の記事、絶対載せてくださいよ?」
「も、もちろんだ……」
俺は深く考えず、そう返事した。
直後、男は俺の手を、小指のない左手で握った。
『指切りげんまん嘘ついたらその指もらう』
背筋に寒気を感じ、咄嗟にその手を振り払った。
すでに男の姿はなく、原稿だけが残されていた。
恐る恐るその原稿を手に取り、内容を読んだ俺は悟ってしまった。
どうやらこれが、俺の最期の仕事になりそうだ。