広い畑の一画に朽ち果てた鶏舎がある。
反対側にトタン板が風に揺れる牛舎と崩れかけのサイロがあった。
コケコッコーの鳴き声で起き、モォーモォーで餌を催促される、
そんな往時が偲ばれる懐かしい原風景だ。
ここんちの爺様は毎朝3個の生卵とコップ1杯の牛乳を飲んでいた。
さぞかし頑強なガタイで馬車馬のように働いたんだろう。
92歳の天寿を全うした爺様が鬼籍に入って20有余年、
跡取りが農耕を放棄したので鶏舎も牛舎も朽ちるばかりだ。
爺様はよく文句を言っていたと。
「俺らはこの地に親の代から住んでいる。
あとから来たよそ者に鶏糞のにおいをなんとかしろとか、
牛のなき声がうるさいとか、とんでもない話だバカ野郎」
うん、うん、よく分かる。
爺様が生きていれば相槌を打てたのに...。
信金に勤めている跡取りの長男はぼくらの麻雀仲間のひとり、
焼鳥屋で酒を酌み交わす飲み仲間でもある。
前に彼を迎えに行ったとき、庭の芝生の真ん中に小さな砂場と
おもちゃを見つけた。
よちよち歩きの孫のために作ったそうで
孫は特別に可愛いと云う。
写真を見せながら3人の孫を紹介する爺バカチャンリン、
うちは孫いないんだけどww
彼の息子も百姓をする気はないとのこと。
二代農地の継続がなければ畑は荒れて野原に戻る。
農耕民族の日本の源流はどこに流れて行くのだろう。
そう思いながらわが身を振り返れば、
親が残した山の家はなんとか維持しているが、
両親が丹精込めた畑はタダで人に貸している。
雑草が生い茂ってご近所に迷惑をかけたくないが本音。
これからもっと少子高齢化が進むと彼やうちみたいな
農耕放棄の世帯が当たり前になっていく。
これからの日本の舵取りはたいへんだ、
頼むよアベちゃん。
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