ナコンパノムの朝は6時前の日の出に始まった。ラオスのデコボコの山の彼方が白み始めた。と、思う間もなく太陽が黄金色の顔を出してきた。川面が銀鱗に輝きだした。部屋のベランダよりカメラのシャッターを重ねてきった。みるみる太陽はメコン川を荘厳な天然色のパノラマにしていく。流木と間違えそうな細長い小舟が十流に登りつつ、再び下流に押し返され、朝の漁にいそしんでいるのが見える。ホテルを出て河畔を散歩する。岸舟で青年が糸を手繰り寄せて漁している。ジョギングしている父娘が走りすぎる。木陰で太極拳のような体操をしている老人もいる。露のかかった草叢の中をのぞくとこぶし大のカタツムリははっている。すべてこともなし、の光景である。
河畔をやや南に下がると小さなイミグレーションオフィスに着く。かつては重要な役目を果たしていたであろうが今は閉鎖されたままである。そこには警告板が英語とタイ語で書かれている。
「大麻等すべての麻薬はタイ麻薬法により所持は違法である。ヘロイン、モ ルヒネ、コカイン、大麻はタイ麻薬法で禁止されている。これら麻薬を持ち 込んだ者、持ち出した者は5年から終身刑の東国もしくは死刑に処せられ る。」
麻薬の密売に手を焼いていたんであろう、あるいは今も売買を摘発しているのであろう。朝の町を散歩していて気が付いたことは、人々がよく掃除をしている光景である。家の中はもちろん街路も大きなほうきでごみを掃き集めている光景があちこちで目についた。荷車で炭を商う商人も見かけたまだひんやりとした心地よい朝の7時、サムローを降りた人はミニトラックに乗り込み、ミニトラックを降りた人はバスに乗り込み町から出ていく。誰も静かだがぎっしりと乗り込む。他の町と同様にこの町にも時計塔が聳えている。近づいて見ると仏歴2503年建立、とありヴェトナム語のつづりが見える。ヴェトナムから贈られたものらしい。時計の針は11時17分で止まっている。まことにすがすがしい朝である。平和である。しかし、川向こうのラオスではすっかりとタイとの生命線を断絶したかのように閑散として沈黙している。
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