こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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お母さんが、笑ってる。

2012-09-29 16:51:24 | 訪問看護、緩和ケア
先日訪問した患者さん。
残り少ない時間を、ご家族が懸命に支えています。

肝性昏睡のため、意識は朦朧として、あっちとこっちを行ったり来たり。

ケアが終わると、疲れて眠ってしまいました。

別室で、これから起こりうる事や、お別れまでの経過の予測などをご家族にお話ししました。

娘さんは目にいっぱい涙をためて、それでも「大丈夫です。見守れます。」と言いました。
そのあと急に姿を消した彼女が、数分後お母さんの部屋にやってきたときは、赤い目元をぬぐって、笑顔で入ってきました。
お母さんは、いつもいつも明るい人ですから、泣き顔を見せたくなかったのかもしれません。

その時、眠っているお母さんの顔を見て娘さんがいいました。
「やだ・・お母さんったら、笑ってる。」
おもわず娘さんも笑顔になります。

確かに、いいお顔で笑っています。
時々うわごとで何かを言っているので、きっと楽しい夢を見ているのでしょうね。

その笑顔は、不意に私の母と重なり、あの時の何とも言えない気持ちがよみがえりました。

私の母が無くなる前日、意識もなく酸素マスクをして眠っていた母が、やはりふっと笑ったのです。
そして「お母さん・・。」と。

その笑顔があまりに幼くて、まるで小さな女の子のようで、悲しいのと同時に、変な話ですが「よかった。」と思ったりもして・・。
きっと小さなころに戻って、迎えに来てくれたおばあちゃんとの、久しぶりの再会に甘えているのではないかと思ったのです。

今でも、それはきっと本当だったんじゃないかと思っていますが、もうすぐ来るお別れの時間の中で、私にとっては、救われた一瞬でもあったのです。

長い間、家族として一緒にいて、慈しんで育ててくれて、どんな時も見守ってくれて、絶対に私にの味方だった母の、最期の笑顔でした。
だから何年経っても、きっと私が死ぬまで、私は母のあの時の幼い笑顔を忘れることはないだろうし、いつか私が死ぬ時も、最後にいい笑顔を残したいなと思っています。

きっと、この娘さんもずっとずっとお母さんの笑顔を、最期の時間を忘れないだろうと思います。

ご家族に見守られ、どうか、穏やかに旅立てますように。