こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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老人の臍ヘルニア

2013-08-15 22:46:42 | 訪問看護、緩和ケア
先日、訪問から帰ったスタッフが、相談に来ました。
「○○さん、今日突然お腹が膨らんでしまったんです。もともとお腹はぼわんとしているのですが、お臍を中心に固くぼっこり突出していて、痛みを訴えています。
お臍の部分は広がって、うっすらと紫色になっています。今までないものが、はっきりと触知できます。」とのこと。
「臍ヘルニアかもしれないね。嵌頓しちゃうと大変だから、すぐ受診させないとね。」
「そう思って、受診を勧めたんですが、かかりつけの先生じゃないと、どうしても嫌って言うんです・・。でも、その先生お盆休みで今日はいらっしゃらなくて。けあまねさんにも伝えましたが、ご本人は痛みも軽くなったから、明日まで様子を見させて欲しいって・・。」

うーん、困りました。

この方は、ご高齢であるうえ独居なので、お一人で受診させるのも心配です。

しかも、かかりつけの開業医さんをとても信頼していて、その先生でなければ緊張してしまって、かえって具合が悪くなるから、様子を見させてくれと懇願されたとか・・。

とりあえず、一旦戻り報告をしに来たのです。

そう、この年代の皆様は、とても頑固なのです。
嫌と言ったら絶対嫌。

でも、このまま放っておくわけにはいきません。

午後もう一度様子を見に行った担当ナースから電話が入りました。

「やっぱりまずいです。さっきよりお腹全体が膨隆してきています。お粥を二口食べたそうですが、それ以上は食べれないとのことです。お腹の音は弱いですし、ガスも見られません。金属音はありません。見に来てもらいますか?」とのこと。

すぐに私も訪問しました。

笑顔で可愛い小柄なおばあちゃまですが、上腹部だけが妊婦さんみたいにポンと張っています。
お臍を中心に直径15センチくらいに固く飛び出した腸があり、おへその色もかなり悪い状態でした。
痛みはそれほどひどくなく、「明日まで待てるのだけれど・・」と言っています。

「○○さん、これは待たない方がいいですよ。夜中にお腹がすごく痛くなったら、お一人だから大変です。これは、すぐに外科の先生見せて、お腹の中にしまってもらわないと。病院に行ってもらっていいですか?」

こんな時に管理者という役職名が功を奏します。
「偉い人がわざわざ来てくれたんだから、きっとそうなのね。分かりました、病院に行きます。」と言ってくれました。

別に偉くもなんでもないのですが、スタッフの「うちの大ボスです。」と紹介するものだから、すっかり恐縮されてしまいました。

でもおかげで、了解していただきました。

こちらで指示書を頂いている病院に連絡し、状況を説明して救急外来の受け入れを要請できました。
その間に、スタッフがケアマネに連絡し、ご家族が来るまで受診に付き添ってくれる手はずが整っていました。

30分後には、○○さんは急外を受診することが出来ました。

翌日、結果を聞いたところやはり「臍ヘルニア」でした。

「とっても危なかったね。このままだったら腸がねじれて緊急手術だったよ。早く受診してくれてよかった。」と先生に言われたとか。

炎症反応がなかったので、とりあえずは徒手的に還納してもらったそうですが、やはり手術が必要になる可能性が大きいようでした。


実は、こういう話はよくあることで、受診を渋る患者さんをなんとか受診させるための、あの手この手がなかなか大変なのです。

今回のように、結果「受診してよかった。」時ばかりじゃなくて、「何しに来たの?」なんて言われちゃうことだってあるので、動くのが億劫な患者さんを、万が一を想定して受診まで手はずを整えながら、うまく誘導しないと、あとあと不信感を残すことになってしまいますから。

そうして、普段からお体をよく観察していた結果が、こんなふうに異常を察知できるということなのです。

こんなふうに訪問看護は、異常を早期発見して早期に医療機関につなげる役割があることを、もっとみんなにしってもらいたいと思っています。