こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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ご無沙汰ですが、せん妄のこと。

2014-09-07 17:38:38 | 訪問看護、緩和ケア
ブログの更新を忘れているわけじゃやないけれど、書かなくちゃ!って言う強迫観念は薄れて、ずっと放置していました。
マイペース、マイペース。

9月1日から仕事に復帰して、結構辛いんじゃないかと思いきや、一日お仕事しても横になりたいとか、痛いとかいうのは全くありません。今のところ・・。

で、1日から初回訪問をして普通の訪問も入れて、すでに新患さんの相談が毎日のようにあるのは、ありがたいやら焦るやらの日々です。

そんな中でも、ポートのフラッシュをめぐり???という事が有り、サイドお勉強をしなおそうじゃないかと、来週の勉強会も企画しました。

そして、昨日は近くのクリニックで「せん妄」のお勉強会があり、参加してきました。

主催はめぐみ在宅クリニックですが、講義は岡山大学のせん妄対策チーム精神科リエゾンチームの皆様方です。

今回は、がんターミナル期のせん妄にどうアプローチをするかというものでした。
DVDを見てから「せん妄」とはどういうものか、認知症との鑑別、薬物療法の簡単な講義をうけ、お休みを入れてグループごとにアプローチ方法をロールプレイでやってみるというものでした。

グループは3人ずつ、患者家族役、医療者役、観察者になって交互に体験するというものです。


実際、せん妄と認知症とどこが違うか言ってみてといわれると、ちょっと言葉につまる私でしたが、なるほどすこしですが理解できましたので、復習がてら簡単にまとめてみます。


せん妄は、何か原因があって、注意障害や意識障害があらわれます。
通常は短期間で、日内変動があり、時に幻覚があったり、意味不明の行動をとって家族を驚かせます。

昨日まで普通だったおじいさんが、まるで夢遊病のように「家に帰らなきゃ」などと言って外に行こうとしたり、壁に虫が這ってるなどと見えないものが見えたり、日にちがわからなくなったりします。
昼夜が逆転も多く見られ、夢うつつの「寝ぼけた」状態と言われています。

よく入院した夜から急に不穏になって、壁におしっこをしようとしたり、会社に行くと言って点滴を引き抜いたりしたひとが、自宅に帰るとケロリと治ってしまったりすることがありますよね。これも典型的なせん妄で、環境の変化や不安な医療行為を除去して治ったということですね。


評価ツールはたくさんあって、ネットで「せん妄・評価ツール」でたくさんヒットしてきます。
中でも、福島大学の先生のPDFはすごくわかりやすかったので、見てください。

せん妄の評価のポイントは
1.日にち・場所の障害(見当識障害)がある。
2.単語の再生の遅延がある。(たとえば、「梅・車・はさみ」を繰り返させて、しばらくあとからもう一度聞いても繰り返せなかったり、なかなか出てこなかったりする。
3.計算の障害  100から7を順番に引いてください。ができない。

脳波を取ると、徐波と呼ばれる特殊な波形が出ます。


認知症の場合は、時間をかけて潜在性に進みますが、せん妄は数時間から数日のあいだで原因を除けば消失します。
認知では近時記憶障害であり、せん妄では注意集中困難となります。

また、せん妄の中でも過活動型せん妄と低活動型せん妄、混合型せん妄があり、低活動型せん妄はしばしば見落とされます。
ターミナル期の患者さんに多く見られるせん妄は、低活動型せん妄なのだそうです。

せん妄は引き金となる直接因子と起こりやすい素因である準備因子、促進・遅延化させる促進因子が有ります。

準備因子としては、高齢で認知機能障害が有り、重篤な身体疾患があり、頭部疾患の既往や過去にもせん妄を起こしたことがあるなどです。
こういう因子を持つ方に、不用意に睡眠薬などを投与することでせん妄を引き起こすことがあります。
このため、せん妄ハイリスク患者のための睡眠導入が必要となります。

直接因子は①身体疾患 ②薬剤 ③手術で、オピオイドも注意が必要です。

促進因子としては、痛みや拘束や脱水や苦痛などで、精神的な不安や抑うつからも促進されます。
また、手術室や入院、場所の変化、明暗、騒音なども要因となり、不眠や睡眠障害も因子の一つです。

これらの因子をなくしていくことだ第一の治療であり、原因を見極めて環境を変えたり、もとの病気の治療をしたり、上手な声かけをするだけでもおちついたりします。


たとえば、昼夜逆転して昼にウトウトしても、昼に寝かせるのではなく、昼夜のメリハリを付け、昼は明るくして日時のはっきりわかるカレンダーや時計を置き、何気なく日付や時間を意識つけたり、よるは真っ暗にせず足元の明かりをつけて、自分が今どこにいるかをわかるようにしておくなど、意識の混乱がないような環境を作ることも大切です。

また、医療的には血液検査などで、電解質以上や代謝異常がないかなど、意識障害をきたさないような管理が必要になります。


それでもひどい時には有効な薬剤がありますので、内服や場合によっては注射でも治療できます。薬剤名に関しては、ここでは書きませんが、レセプトが通るもの通らないものがあるし、病気によっては使えないものもありますから注意が必要だそうです。

そういうお勉強を聞いたあとで、家族がせん妄状態となり、「頭がおかしくなったのではないか?」と不安がる家族に、ちゃんと説明して安心させることができるような練習・・ということで、ロールプレイをやってきました。

みんな役者でさながら家族の不安と驚きを表現していましたよ。(^_^;)
もちろん、医療者役もどうしたら分かり安く理解していただけるかと、パンフレットを見せたりしながら、短いドラマを演じていました。

半日かけての勉強会でしたが、岡山大学の精神科チームの先生方は、とても謙虚でしかもハートの熱い先生方でした。