ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

147. モンシックで山火事

2018-09-01 | 風物

8月の初め、猛暑がやってきた。連日40度以上の気温が全国的に発生。46℃の気温を初めて体験したが、これは耐え難かった。クーラーもない部屋にこもってじっと耐え忍ぶのは限界を感じて、冷房の効いているショッピングモールに出かけて猛暑を凌いだ。誰もが同じ考えを持つようで、普段は空いているソファやベンチがすべてふさがっていた。

そして8月4日、恐れていた山火事が発生した。それも南のアルガルベ地方のモンシックで。

去年のペドロガオン・グランデの山火事の惨劇いらい、道端や山際の下草刈りを徹底して行い、燃えやすいユーカリ林の伐採をかなり広範囲に行ったはずなのに。

モンシックは今まで何度も訪れている。カルダス・デ・モンシックという冷泉の湧く場所もあり、そこに一泊した翌朝には5リッターのタンクに水を汲んで家まで持ち帰っていた。その後、谷底にあった療養所が洪水で流される災害があったが、私たちの定宿にしていたホテルは無事だった。しかしその後しばらくぶりに訪れてみると、ホテルはなぜか閉鎖していた。居心地の良い部屋と広いベランダ、放し飼いにしてあるクジャクが時々ベランダにやってきた。ホテルのプールは夕方遅くまで西日が当り、そこで泳いだ後は肌がすべすべになったものだ。

モンシックの山火事は日増しに燃え広がり、なかなか消える様子がなく、近くの村や町に火が迫り、パニックになった。

一人暮らしの女性はどうしてよいか判らないふうで、家の門を出たり入ったりしていた。他の女性は荷物を一杯に詰め込んだ旅行鞄を数個引っ張りながら出てきた。見かねた消防士が女性に代ってかばんを持って避難を手伝っていた。

火の手は村の家にまで迫り、一家総出で消火に必死。水道ホースで水を撒いたり、6リッター空き瓶に溜めてあった水をバケツに移し替えて迫った火に撒き散らしたり。周りには空になったボトルが20個以上も転がっていた。我が家でも同じようなボトルに水を入れて、いつも15個以上確保しているが、そのままでは火に向かってかけても間に合わないのがこのニュースを見て判った。

山火事は山々を焼き尽くして次の日も、次の日も燃え続けた。シルベスやポルティマオンにも迫る勢いで、アルガルベのビーチまで煙が迫って、リゾート客も不安そうに空を見上げていた。

8月4日から始まった山火事は7日間燃え続け、ようやく鎮火した。負傷者は数人出たが、死者は一人も出なかったことは不幸中の幸いだった。

広範囲の山が焼き尽くされて被害が次々に明らかになった。ユーカリや松はもちろんだが、メドロンホと呼ばれるヤマモモの木も焼けてしまった。ヤマモモの果実から作る強い酒はアルガルベ地方の特産品だが、その栽培している山も燃えてしまった。回復には時間がかかるという。

そしてこの地方の山にはリンス・イベリコというイベリア半島固有のヤマネコが生息しているのだが、その保護飼育場も周りがすっかり焼けていた。ヤマネコが焼死したというニュースは見なかったので、たぶん大丈夫だろう。無事に保護されていたら嬉しいけれど。

リンス・イベリコのサイト

https://www.ellinceiberico.com/

 

 

 

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