この写真はモイタではなく、アゼイタオンの露店市
5月半ばにポルトガルに戻ってきたが、意外なことに涼しい。今年1月にポルトガルを出発した時のまま、ベッドには毛布を3枚重ねたままだったが、きっと暑くてたまらないだろうと覚悟していたのに、そのままずっと使っている。1週間前は大雨が降り、夜には激しい雷が轟き、小さなアラレまで窓ガラスにぶつかってきた。ポルトガルテレビのニュースでは、リスボンの近くで道に激しい水の流れができている映像を映していた。
今日は5月28日。第4日曜日でモイタの露店市がある。天気予報では雨と言っていたが、空を見渡すと真っ黒な雨雲が北の空を覆っている。しかし予報に反して降りそうもないので出かけることにした。迷いはなかった。何しろ久しぶりだし、運動不足解消には露店市歩きが一番だ。行くか行かないかを迷っている場合ではない。でもモイタの天気は急変するので油断はできない。今までも痛い目に遭っている。一応、クルマには傘が積んである。
モイタの露店市に着いてすぐに昼食をとることにした。でもモイタの露店市は食堂がたった2軒しかない。以前は数軒出ていたのだが、いつの間にか撤退して2軒だけになってしまった。私たちがひいきにしているジョアンの店もなくなって、アゼイタォンとピニャル・ノヴォとコイナの3箇所で営業しているだけ。ファティマの店は完全に止めてしまって何処にも出していない。
たった2軒の食堂は食事をしようとする人々が詰めかけて、席を確保しようと緊張感が漂っている。食事を終えた人達が立ち上がると早々に次の人が席に着く。競争だ。私たちも空いた席にかけよったが、別の女性に座られてしまった。まるで椅子取りゲームだ。
ジョアンの店ならジョアンが客の順番を把握していて、要領よく席を確保してくれるがモイタではそういう人が居ない。
仕方がないので、もう一軒の食堂をのぞくと、なんとテーブル席が2つ空いている。でもどちらも雨除け、陽除けのテントの外にあるので、陽当たりが良すぎる。どうしようかと思ったが、そこに座ってみると、太陽が当たっているが風がひんやりとして、たいして暑くはない。雨は絶対に来ない感じだ。
ところがテントの端っこの席なのでウェイトレスの目に入らないのかなかなか注文を取りに来てくれない。雨も来ないがウェイトレスも来ない。すぐ前の席には50代のカップルが座っていて、そこに注文を取りにきてようやく私たちに気が付いた。ウェイトレスは「すぐ戻って来るからちょっと待ってね」と言いながら反対側の席に行ってしまった。
それからそうとう経って、ウェイトレスは両手に料理をかかえて隣の席にやってきて、50代のカップルの前に置いた。皿に大盛りのショコフリートともう一つはこれも山盛りのコジード・ア・ポルトゲーサ。どちらも美味しそうだ。それを見てコジード・ア・ポルトゲーサを久しぶりに食べたくなったので私はそれを注文。ビトシの意思は固く最初からモイタではエントレメアーダのサンドとソッパと決めている様だ。それにノンアルコールビールを2本。
注文はなかなか取りに来てくれなかったが、料理は間違いなく素早く来た。ウェイトレスは「待たせてごめんね」「ボナプチ」と言って忙しく立ち去った。
私たちの奥の席にもグループが座った。椅子が一つしかなく、あちこちからかき集めてようやく全員が座れた様だ。私たちと同様、陽射しを気にしてはいない。案外と心地よいのだ。
そして雨の心配も全くなくなっている。誰も心配はしていないのに。心配性のビトシは「雨が降りだしたらこのテーブル一杯に広げられた料理をどうしよう」などと考えている様だ。そして猛烈な早さで平らげている。4枚ものエントレメアーダが挟まれたパンと山盛りのソッパ。マカロニとうずら豆と屑野菜にくず肉のソッパがみるみるなくなってゆく。一方私のコジード・ア・ポルトゲーサは一向に減らない。食べても食べても減らないのだ。雨は来そうにはないからゆっくり食べればよいようなものなのだが、なかなか減らない。血のチョリソが3つも、それに粉のチョリソ、豚の耳皮、豚の脂肉、訳の分からない肉、肉。ジャガイモとニンジンとポルトガルキャベツ。その野菜にはなかなか自分では出せない味が滲み込んでいる。野菜だけ食べてほぼ満足。残している肉類をビトシが横目で睨んでいる。豚の耳皮はコリコリとして美味しいそうだが、私はどうも手が出ない。コジード・ア・ポルトゲーサもお店によって随分と違う。味はいいけど見栄えが…今回は失敗したかなと思う。ショコフリートにしておけばよかったかな。いや、最初からビトシと同じようにエントレメアーダにしておけばよかった。人生、いつも迷いと後悔の繰り返しだ。
でもきょうは迷わず出掛けて良かった。掘り出しものは何もなかったが、予報に反して雨にもあわなかった。帰宅して夕方から少しの雨だ。 MUZ