えつこのマンマダイアリー

♪東京の田舎でのスローライフ...病気とも仲良く...
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第6章 ホルモン療法 31.

2007年10月20日 | 乳がん闘病記
31.
 その頃、荒川静香さんの金メダル獲得に日本中が一気に湧き、私の心にも灯がともるようだった。さらに私を勇気づけてくれたのは、同じくフィギュアスケートのアメリカ代表として出場し、世界で初めてスロウ・トリプルアクセルジャンプを決めた、ペア選手の井上怜奈さんだった。彼女は若くして父親と同じ病である肺がんにかかり、単身異国でそれを克服した上で五輪に参加、しかも初の偉業を成し遂げたのだった。なんて強くて偉い人なのだろうと思った。

 また、乳がんの先輩患者であるとともに大学の2年先輩でもある絵門ゆう子さん(元NHKアナウンサーの池田裕子氏)にも、随分助けられた。絵門さんが朝日新聞で連載していた記事『絵門ゆう子のがんとゆっくり日記』に毎回勇気をもらった。私よりずっと深刻な病状にもかかわらず、明るく果敢に人のために活躍する彼女がとてもまぶしかった。また、高校の先輩であるSさんが私の病気を知ったときに贈ってくれた本が、絵門さんの著書『がんと一緒にゆっくりと ―あらゆる療法をさまよって―』だったので、その本にも支えられた。さらに、Sさんの奥様がやはり乳がんの先輩患者であるだけでなく、発見が遅れたために脳に転移、現在は自宅療養中という身の上だったので、ご夫婦で闘病されている姿に私は心打たれていた。

 そんなある日、ヨガのS先生がレッスンの後食事に誘ってくれた。霊感があるという彼女は、また私の危機を感じ取ってくれでもしたのだろうか…。義父の認知症のことや自分のホルモン治療の副作用について先生に話を聞いてもらううちに、だいぶ気持ちが楽になっていった。
 また、S先生はこんな話をしてくれた。1年前私が発病したときに息子がとても心配していたという話を、最近人づてに聞いたという内容だった。それを聞いた途端、どっとあふれる涙を抑えられず、私は先生の前で号泣してしまった。発病以降でも公衆の面前で泣くなどということはなかった私は、自分でも驚いてしまった。すると先生は「そうすることが、今のK畑さんにとってきっと必要なことだったんですよ」と言いながら、慈愛に満ちた表情でそっと見守ってくれた。そうして結果的にS先生にカウンセリングしてもらうことで、私は心の傷が癒されていくのを感じた。

 そんな折、甥っ子が息子と同じ大学の理工学部に合格したという朗報が入った。彼が高校入試で苦い思いを味わったことを知っていただけに、それはひときわ嬉しいできごとだった。息子と同様、予備校には行かずに自力で合格したのも、伯母としてとても嬉しく誇らしかった。

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4 コメント

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藤之助さんへ:多謝深謝...... (takuetsu@管理人)
2007-10-23 22:12:30
藤之助さん、このブログばかりか、拙著まで読んでくださろうとは! なんとお礼を申し上げたらよいのか...感謝感激です。(花粉症の時季だと、感謝感激雨花粉!とか言うふざけた輩なのです、私...。)

拙著は出版してから早や10年が経とうとしておりますし、滞在していたのはさらにさかのぼること7年ですから、今お読みいただくと隔世?の感があるかもしれません。世の中、数年くらいの単位でかなり変わってきていますものね。

そんな世の中なので、ますます里山歩きが貴重な時間です。里山のこと、そちらのブログで勉強?させていただきますね。
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ざっとですが (藤之助)
2007-10-23 19:04:45
ブログは一通り目を通してますよ。
ご著書も手配中です。

千葉敦子さんの文章はまだ20代の私に鋭く突き刺さって、未だに抜けてません。
収入は必要な分だけ取って後は寄付してしまうなど、信じられない事もやられてましたね。
闘病記はビックリでした。
貫かれた客観性というのでしょうか、物書き魂の凄さに脱帽です。

takuetsuさんの文章も好きですよ。
さらさら流れる小川の如し、ですね!
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藤之助さんへ:ありがとうございます! (takuetsu@管理人)
2007-10-22 16:45:42
里山の記事以外も見てくださったのですね、ありがとうございます。嬉しいです。

ご紹介ありがとうございます。
千葉さんの本、闘病記ではありませんが読んだことがあります。歯切れのいい、スカッとする後味だった気がします。
闘病記も読んでみようかしら...。20年以上前のことですから、今とは違った闘病だったことでしょうね、いろいろな意味で...。

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心に残る (藤之助)
2007-10-22 03:09:05
ブログの主旨と外れてしまうかも知れませんが、私が感銘を受け著作を読み漁った人に”千葉敦子さん”がいます。
takuetsuさんと同じ病気でその闘病の様子をジャーナリストとして記述した作品もあります。
彼女の物の見方や考え方にはずいぶん影響された気がします。
もっとも影響されっぱなしで残っているかどうかははなはだ疑問ですが。。。

著作の一覧が紹介されています。
http://mumrik.air-nifty.com/blog/2005/06/post_c84c.html
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