29.
毎年2月の末から3月の初めにかけて杉花粉症が本格的になるので、外出が億劫になる。事件続きで鬱々となってしまった今年はことさらだった。昨年の夏、2種類の治療を併用してホルモンを抑えたことで、極端な集中力の欠如に端を発し、不安と混沌のスパイラルに陥ったが、今回はそれとは別の抑うつ状態だった。何と表現すればよいのだろうか…とにかく気分が沈み込み、体が思うように動かなかった。あのときのように病的で異様なものではないことが、かえって現実味を帯び、不気味に感じられた。
努めて、無理やり、外に出ると、どんよりした天気の日はますます憂うつになり、晴天の日は空の青さに突き刺されるような気分になり、いずれにしても憂うつだった。花がきれいな季節であれば花が癒してくれるだろうが、この時季はそれもかなわない。オリンピック観戦で氷上の華を追いかけ、片端から好きな音楽を聞き、ビデオ屋に行っては映画を借りてきてひたすら観るような、暗い日々を送った。
本来ならこんなときは、精神の安定を保つのに関与している女性ホルモンが活躍するのだろうが、肝心なそのホルモンを抑えてしまっているのだ。どうやってがんばったらよいのだろう……。Y先生の次の診療は4ヶ月後の予定だった。「次回の通院は2ヶ月後、そのときは特別なことがない限りは診療せずに薬だけ処方する」旨を告げられていたのだ。術後こんなに診療の間隔が空くのは初めてで、それも不安材料だったり、淋しかったりだった。
この抑うつ感が、Y先生が言うところの「特別なこと」に当たるかどうか…先生に言えば、なんとかしてくれるのだろうか…。わがまま患者になろうと決めたはずなのに、いざとなるとそんなことを悶々と考えて過ごしているのだった。
毎年2月の末から3月の初めにかけて杉花粉症が本格的になるので、外出が億劫になる。事件続きで鬱々となってしまった今年はことさらだった。昨年の夏、2種類の治療を併用してホルモンを抑えたことで、極端な集中力の欠如に端を発し、不安と混沌のスパイラルに陥ったが、今回はそれとは別の抑うつ状態だった。何と表現すればよいのだろうか…とにかく気分が沈み込み、体が思うように動かなかった。あのときのように病的で異様なものではないことが、かえって現実味を帯び、不気味に感じられた。
努めて、無理やり、外に出ると、どんよりした天気の日はますます憂うつになり、晴天の日は空の青さに突き刺されるような気分になり、いずれにしても憂うつだった。花がきれいな季節であれば花が癒してくれるだろうが、この時季はそれもかなわない。オリンピック観戦で氷上の華を追いかけ、片端から好きな音楽を聞き、ビデオ屋に行っては映画を借りてきてひたすら観るような、暗い日々を送った。
本来ならこんなときは、精神の安定を保つのに関与している女性ホルモンが活躍するのだろうが、肝心なそのホルモンを抑えてしまっているのだ。どうやってがんばったらよいのだろう……。Y先生の次の診療は4ヶ月後の予定だった。「次回の通院は2ヶ月後、そのときは特別なことがない限りは診療せずに薬だけ処方する」旨を告げられていたのだ。術後こんなに診療の間隔が空くのは初めてで、それも不安材料だったり、淋しかったりだった。
この抑うつ感が、Y先生が言うところの「特別なこと」に当たるかどうか…先生に言えば、なんとかしてくれるのだろうか…。わがまま患者になろうと決めたはずなのに、いざとなるとそんなことを悶々と考えて過ごしているのだった。