えつこのマンマダイアリー

♪東京の田舎でのスローライフ...病気とも仲良く...
ありのままに、ユーモラスに......♪

第1章 ある日突然… 18.

2007年04月04日 | 乳がん闘病記
18.
 その日は、夫が出張先から直帰したため、まだ外が明るいうちに帰宅した。夫に伝えなくてはいけない。彼は、私が検査に出かけたことすら忘れているかのような、のんきな顔をしていた。かえって伝えやすいと思った。

 「今日検査行ってきたよ。ほぼ悪性に間違いないって言われちゃった…」 あっさりそう言うと、虚を突かれた夫は「え゛っ……………?」と言ったきり、二の句が継げない様子だ。常に沈着冷静な彼が見せるには、あまりに珍しいほど心底驚き、うろたえた表情だった。私の分析どおり、やはり楽観していたのだろう。

 彼は気を取り直すかのように言葉をつないだ。「ほぼ悪性っていうことは、まだ確定はしてないんだろう?」 そこでその日の検査や診断の経過、翌日からの検査の予定を私がざっと説明すると、夫は深刻な顔のまま無言になった。私は……気を張っていたのか、涙は出なかった。

 ほどなく息子も娘も帰宅し、どういうわけか偶然、夕飯前に家族全員が家に揃った。平日にしては珍しいことだ。ちょうどよい。子供たちにも本当のことを話しておこう。手術はたぶん避けられないから、いずれは話さなくてはいけないのだ。専門学校を卒業して歌の勉強をしながらフリーターをしている娘は21歳。息子はこの春大学生。浪人しているから、年が明けると20歳になる。それぞれきちんと現実を受け入れてくれるだろうと思った。

 「実はね、お母さん、乳がんみたいなの。明日からいろんな検査をするんだけど、今のところ手術することになると思うの。でも、初期で見つけられたから、軽くて済むと思うのよ…」
 検査のことさえ告げられていなかった彼らには、まさに寝耳に水のことで、さぞ驚天動地の極みだっただろう。娘は一瞬顔色を変えたが、すぐに平静に戻った。戻ったというより、意図的にそうしたのだと私にはわかった。それは見事なまでのコントロールだった。一方、息子は動揺しているのが明らかに見てとれた。3人の中で一番動揺を顕わにしていた。

 それぞれの反応に心が痛み、その日で一番哀しく辛かった。でも、涙は決して見せてはならないと思った。

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2 コメント

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ボチボチおつき合いください! (takuetsu@管理人)
2007-04-06 15:09:03
相澤さん、ご訪問&コメント、ありがとうございます。
こちらこそ、胸が詰まりました

「この二年間の苦しみは筆舌に尽し難いと思います。」 いえいえ、初期で発見、早期治療ですみましたので、案外筆舌に尽くせますですよ。

なんて、ふざけているわけではないのですが...実際問題、同じ病気でももっと重症の人が、がんではなくても難病と闘っている人が、大勢いらっしゃるわけで...そういう方からすれば、私のように軽くすんだ人間の闘病記はどんなふうに映るのだろうか? 却って傷つけたりするのではないだろうか? そんなことを考えながら書いております。

それでも、人は自分の経験した範囲でしか実感を伴っては書けないですものねぇ...私は私が経験したことを、あるがままに書くしかないと思っております。

ご主人様、お元気で何よりです。またお立ち寄りください。

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ご挨拶 (相澤ミチ子)
2007-04-06 09:46:28
プログ開設やりましたねー!どうお過ごしでいらっしゃるかと気になる毎日でしたが、満開の桜を満喫した余韻のあとに桜色の華やかなやさしい画面をいただき画面にすいよせられました。この二年間の苦しみは筆舌に尽し難いと思います。初めから涙が出てしまい、これから読み続けられるか分かりませんが、色々なことに挑戦していらっしゃるあなたを知ることが私にも勇気をいただける気がしました。お便り楽しみにしております。ご無理せず続けてくださいね!バタバタの毎日でゆとりがなくご連絡せずすみません。主人は少しずつ疲れが出ていますが勤めております。 
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