9.
私をあの“不安と混沌の悪循環”に陥れたのは、確かにエストロゲンを抑える注射が犯人だったが、それだけではなかった。情けないことに、自ら陥っていた面もあったのだ。あの悪循環の中で物事を前向きに考えにくくなった私は、がんになった原因*追求の迷路に自らはまってしまう…。
最初の告知直後、原因を考えても明確に思い当たらず、一度は悩んだ時期もあったが、何しろ手術と放射線治療という目の前の課題を乗り切るのが先決で、しばらく棚上げにしていた。それを棚から一旦降ろしてしまったが最後、堂々巡りに陥ってしまったのだ。
ごく初期段階で発見、治療できたので、再発や転移への不安はあまりなかった。ただ、原因がわからないと予防ができないので、最初の発病と同じメカニズムで再発があり得るのではないかという恐怖心が、厳然とあったのだ。多くの書物には、「がんになったら生活を見直そう。生活を改善しよう」と書かれているが、原因がわからなければそれもできない。
また、がんになったことを恥ずかしいとは思っていなかったが、今までの生活が否定されたかのような気にもなった。生活の基盤が揺らげば、今後の生活も組み立てられないという不安と自信のなさにも襲われた。がんになったことと原因を浮き彫りにできないこととで、過去が否定され、現在が揺らぎ、将来が見通せなくなってしまったのだ。
『乳がん全書』の福田護先生によれば、乳がんの予防はむずかしいし、誰でもかかり得るらしい。「そもそもがんは遺伝子が傷ついて起こり、その遺伝子変化は先天的なものと後天的なものとがある」としている。後者の要因は紫外線、放射線、薬物、環境ホルモンとさまざまで、変化の予測は不可能と記されている。
一方、「がんの三大治療(手術・放射線療法・化学療法)はしない方がよい」と言い切る安保徹氏によると、免疫学的には「がんの原因は自分の体の中にある」という。
私はこの2つの狭間で右往左往し、迷路から抜け出せなくなってしまった。
* 過去記事 第2章 19.を参照してください。
私をあの“不安と混沌の悪循環”に陥れたのは、確かにエストロゲンを抑える注射が犯人だったが、それだけではなかった。情けないことに、自ら陥っていた面もあったのだ。あの悪循環の中で物事を前向きに考えにくくなった私は、がんになった原因*追求の迷路に自らはまってしまう…。
最初の告知直後、原因を考えても明確に思い当たらず、一度は悩んだ時期もあったが、何しろ手術と放射線治療という目の前の課題を乗り切るのが先決で、しばらく棚上げにしていた。それを棚から一旦降ろしてしまったが最後、堂々巡りに陥ってしまったのだ。
ごく初期段階で発見、治療できたので、再発や転移への不安はあまりなかった。ただ、原因がわからないと予防ができないので、最初の発病と同じメカニズムで再発があり得るのではないかという恐怖心が、厳然とあったのだ。多くの書物には、「がんになったら生活を見直そう。生活を改善しよう」と書かれているが、原因がわからなければそれもできない。
また、がんになったことを恥ずかしいとは思っていなかったが、今までの生活が否定されたかのような気にもなった。生活の基盤が揺らげば、今後の生活も組み立てられないという不安と自信のなさにも襲われた。がんになったことと原因を浮き彫りにできないこととで、過去が否定され、現在が揺らぎ、将来が見通せなくなってしまったのだ。
『乳がん全書』の福田護先生によれば、乳がんの予防はむずかしいし、誰でもかかり得るらしい。「そもそもがんは遺伝子が傷ついて起こり、その遺伝子変化は先天的なものと後天的なものとがある」としている。後者の要因は紫外線、放射線、薬物、環境ホルモンとさまざまで、変化の予測は不可能と記されている。
一方、「がんの三大治療(手術・放射線療法・化学療法)はしない方がよい」と言い切る安保徹氏によると、免疫学的には「がんの原因は自分の体の中にある」という。
私はこの2つの狭間で右往左往し、迷路から抜け出せなくなってしまった。
* 過去記事 第2章 19.を参照してください。