第２章 怒涛の日々 ２１．

２１．
　数日後に控えたY先生の診療、最終告知に備え、やっておきたいことがまだ残っていた。最悪の結果を前提にしたY先生への質問事項や、セカンドオピニオンを求めるN先生への質問は、Bさんに借りた本類を参考にしながらエクセルシートにまとめた。入院を前提に考えると、留守中の家事や植木の世話など、気にかかることは枚挙に暇がない。入院前に無理は禁物だとも思うので、できる範囲で一つ一つ片づけていった。少し調子が気になる歯があるので、それも今のうちに治療しておこう。

　年が明けて以来放ってあったキッチンの換気扇やガスレンジ、流し回りの掃除にも精を出した。じっとしていて病気のことを考えてしまうより、体を動かして気が紛れる方がよっぽどよかった。家事も片づいて一石二鳥というものだ。水やりや花がら摘みなど、植物の世話をしているととても癒され、元気がもらえた。

　趣味にも救われた。数ある趣味のうち長年断続的に続けてきた和紙工芸が、手ごろで実益を兼ねていることを思い出した。和紙の着物を着せたつま楊枝の人形を、割り箸の袋に貼りつけるだけのもの*だが、それに没頭した。入院のときに持参して、同室の患者さんや看護師さんたちにプレゼントしようと思っていたのだ。

　そんなある日、母校の高校の同窓会から、唐突に感謝状が贈られた。７年間同窓会の仕事をボランティアでしていたが、病気とは関係なくたまたま３月末で辞めることにしていた。それに当たり、会長が関係者と文言を吟味し、心のこもった感謝状を作ってくださったのだ。労を労い、「この間、持ち前の明るい性格とユーモアで、同窓会に和やかで楽しい雰囲気を与えて下さいました」とある。病気で落ち込んでいた私には、とても嬉しく励みになる言葉だった。―そうだった、大事なことを忘れていた。私の持ち味、ユーモアを忘れてはいけないぞ！―


* 別途アップした「クラフト」カテゴリーの記事、「和紙工芸　～箸人形～」をご覧ください：
http://blog.goo.ne.jp/takuetsu1958/e/0e00ed0ae9f75cddef6ef05148a6fa95