
「平和百人一首」とこのシリーズについての解説は、初回記事と2回目の記事をご参照ください。前回記事はこちらで見られます。
なお、かなづかいや句読点は原文のままとするので、読みづらい点はご了承ください。
平和百人一首
戦の日々に見上げてものおぢし ことも忘れるる清き大空
東京都中野区宮田町 秋本 輝
憶ふに怖ろしい戦争でした。日本人の誰人が清々しい気持で空を見上げることが出来たでしょう。
大空に爆音が響き渡る時、私達は死を覚悟せねばなりませんでした。
私達の祖先が積重ね築き上げた文化は、一朝にして砕け散つてしまひました。更に尊い幾多の生命が無理に奪ひ去られてゆきました。勝つも負けるも、戦争の下劣な行為であることをしみじみと知りました。
私達は敗戦の今日、極めて不如意な生活に耐えて居ります。戦争とはちがつた苦しみです。
けれども私は、清く晴れて澄み通つた大空を見上げる時、大自然の中に生きている自己の生命を限りなく尊く愛しく感ずるのです。
戦争中に大空を見上げて恐れ戦いたことが嘘のような気がするのです。私達は、清い大空を永遠に清い大空として見、感じてゆきたいものだと思つて居ります。
(輝)