「平和百人一首」とこのシリーズについての解説は、初回記事と2回目の記事をご参照ください。前回記事はこちらで見られます。
なお、かなづかいや句読点は原文のままとするので、読みづらい点はご了承ください。
平和百人一首
釜の湯のたぎるしじまに天地の 神のこころを思ひ見るかな
大阪府北河内郡西宮村 乾 登代子
人間が他の動物より最も誇り得るものは精神である。その優れた精神をもつ人間が同朋を傷つけ合ふ為の兵器を競ふとしたらそれは果して神の心に添うものであろうか。私は精神の墜落であると思ふ。且つそういう競争は果しないものであり従つて闘争はより深刻になるばかりである。
人類が集団して楽しく平和に生きる為にはキリストの愛、仏の慈悲、思ひやりと謙遜、それからゆづり合いでなければならない。正しい事の通る世の中にしなければならない。
一家を、一国を世界を平和にする為には今後もなほ数多の犠牲があるかも知れぬ。
然し我々はあくまで強い意志をもつて子孫を通じ人類の平和の為に努力しなければならない。たとい子供の夢と嘲笑はれても――。
釜の湯はしんしんとたぎつている。
静かな真昼時、私の想念は熱い湯気のように、次から次へとはてしなく流れて行くのであつた。
(登代子)