仏教大学で学んだ俺のダチ、
求道(くどう)が、
山寺に実習に行ったときの話。
この日、
先輩僧の於道(おどう)の呼びかけで、
鐘つき台に来いとの指令を受けた求道(くどう)は、
先に来て待っていた。
なんでも、
一流の鐘つき職人を連れて来て、
鐘つき実習をするとのことやった。
この鐘つき職人の名は梶本というらしい。
於道が例の鈴の錫杖を持って現れ、
錫杖ゆすりながら鐘つき台を一周する際、
「仏様来てください‼️仏様来てください‼️仏様来てください‼️」と、
三回叫んだ!
すぐに、
背格好に恵まれた初老の男性、梶本が現れた。
梶本は、
鐘が様々な顔を持つことを語り、
今回は、
禅宗の顔を拝みに来ましたと、
丁寧に話した。
そして、
求道(くどう)に、
鐘をつくように言った。
求道(くどう)は鐘の前で合掌して、
鐘をついた。
鐘の音が響く中、
梶本が不気味に微笑んだ。
そして、
「シンの鐘の音じゃございません。あなたも、自身の頭で覚えるべきですな」と語り、
求道(くどう)の額に触れ、
そこからその手を、
鐘に持って行って触りまくり、
とある部分で手を止めて、
「ここだ」とうれしそうに呟いた。
そして、
求道(くどう)に鐘のすぐ前に来るように言った。
求道(くどう)がその通りにすると、
梶本は、
いきなり、
さっきの手を止めた鐘の部分に、
求道(くどう)の頭を打ち付けた😱
素晴らしくも繊細な綺麗な音色が響き渡った。
求道(くどう)は頭を押さえて、
「何をなさいます🤬‼️」と怒鳴った!
梶本は、
求道(くどう)にしかない音感の境界と、
それに合った鐘の境界とを打ち合わせたと説明した。
そして、
この部分をつくように指示した。
その部分に求道(くどう)がついてみたが、
頭を打ち付けられたときのような音色は出なかった。
梶本が、
「境界がズレている❗️精神修養がなされてない証拠だ❗️」とガナった!
求道(くどう)が不審な表情浮かべて、
鐘の前に来て眺めていたら、
梶本が、
再び、
求道(くどう)の頭を打ち付けた!
先程の、
繊細ながらも美しい音色が響いたが、
求道(くどう)は悲鳴をあげて、
頭を押さえて座り込んだ。
そんな求道(くどう)を於道(おどう)は見下ろして、
「フツー、わしらが鐘に頭ぶつけても、音が鳴るどころか血が出るだけや。梶本さんは素晴らしいやないか⁉︎お前の音を見つけてくださったんやから」と言って合掌して、
「悉有仏性(しつうぶっしょう)にありがたいやないか」と呟いた。
その時、
若い実習僧たちが、
サッカーボール蹴りながら現れ、
一人が思いっきり蹴ったボールが於道(おどう)の方に、
勢いよく飛んだので、
実習僧の一人が、
「於道(おどう)様、危ない‼️」と叫んだ!
於道(おどう)はとっさによけたが、
その際、
足がよろめいて、
鐘に頭をぶつけた。
すると、
重低音の美しき音色が響いた。
於道(おどう)が頭を押さえてうずくまるそばで、
梶本は、
「於道(おどう)殿は素晴らしい😃ご自分で境界を打ち鳴らされた」とほめた。
逃げ去る実習僧たちに、
於道(おどう)は頭を押さえながら、
「わたしはお前らには何もしない。やけど仏様がお前らに立ち向かう!!」と脅した!
そして於道(おどう)は、
自分が頭をぶつけた部分をついた。
すると、
先程の、
美しき重低音の響きに包まれた。
梶本は、
「すべては境界に始まり境界に終わる」と言って、
求道(くどう)に、
もう一度つくように言った。
求道(くどう)がついたが、
フツーの音色しか響かない。
梶本が、
鐘のある部分を触り、
「境界からズレている」と言った。
求道(くどう)は、
その部分をよく見ようと身を乗り出したら、
梶本が、
また、
求道(くどう)の頭を鐘に打ち付けた!!
絶叫して頭を抱える求道(くどう)に反して、
鐘は、
繊細にも美しき音色を奏でた。