ケイシロウとトークアバウト

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外は神でも内は塩

2024-06-09 23:58:00 | 日記




カッちゃんのダチのかんちゃんが昨年の猛暑の中に、
キャラクターショーのアルバイトをした。
見た目の緩さのキャラクターも、
中は灼熱の激苦。
そんなキャラクター仲間たちは、
ぬいぐるみを脱げば、
仲良しこよしなんやけど、
ひとりの中年男性だけが、
人とは口もきかずに、
ぼっち行動するんやった。
かんちゃんは、
キャラクターのバイトが、
大概が20代から30代層なのに、
この中年男性の年齢に対しても、
気になって仕方がない。

そんなことを感じていると、
仲良しのバイトの先輩が、
あの中年男性のことを教えてくれた。

この中年男性は、
名をシオザキと言い、
1980年代に、
太平洋側のとある田舎で、
農家をしていた。
大きな野菜畑を、
海のそばに作っていた。
ところが、
滅多にない大型台風の直撃と、
それがもたらした塩害によって、
畑は全滅した。
シオザキ一家は、
地域の誰ともお付き合いしない、
孤立した生活をしていた為、
地域の人々の助けはなかった。
その為、
シオザキ一家の野菜畑は売り払われることになる。
これを牧カオリは、
「塩害は縁外にあって起こった」と表現した。

シオザキ一家は、
野菜畑買い戻しの為に、
街に出て、
当時人気やったキャラクターショーの着ぐるみのアルバイトをした。
この頃はキャラクターショーの着ぐるみバイトが不足していたので、
一家は喜んで雇われた。
『ニンジン丸』とかいうキャラクターで、
ニンジン父さん、ニンジン母さん、
そしてニンジン丸がシオザキやった。
キャラクターショーの着ぐるみは思ったほどきつい😓
けど、
野菜畑の為にがんばった。

この一家の頑張りが、
キャラクターショーの同業社間で評判となり、
一家は様々なキャラクターショーで生活することになった。
オニオンファミリーでは、
オニオンファーザー、オニオンマザー、
そしてオニオンボーイをシオザキがすることで、
利便性も良かった。

ところが、
人手に渡った畑の土地価格が上昇して、
とても、
畑を買い戻せるほどの経済的余力はなかった。
そして、
いつのまにか、
父親が病気で亡くなり、
母親も同じ道を歩んだ。

時は、
ゆるキャラ全盛時代になり、
シオザキはひとりで、
畑を買い戻す野心の内に、
着ぐるみバイトを続けた。
そして、
今日に至る!

かんちゃんは驚いた。
こんな凄まじい話はなかなか聞かないからや。
思えば、
ゆるキャラ系着ぐるみは、
アクションありきの、
円谷のウルトラマンショーや、
東映の仮面ライダーと戦隊ショーとは一線を画す。
が、
夏場の暑さは、
釜茹で地獄やという。

かんちゃんのバイトの最終日、
シオザキの姿がなかった。
後で、
先輩から、
シオザキが蓮🪷の咲いているところに旅立った🙏旨のメッセージが、
メールに入った。

かんちゃんは物悲しさのあまり、
再び、
精神科クリニックを営む港ツンコのもとに受診に行った。

港ツンコは、
かんちゃんの両親の許可を経て、
かつてはシオザキの畑があった、
太平洋側の田舎に、
かんちゃんを連れて行った。
そしてこの日はたまたま、
大きな塩害に、
農家の人々が苦しんでいた日でもあった。

港ツンコはかんちゃんと海を見つめながら、
「もともと地球は全てが海だったの。それが時代を経て今日の姿になってんのよ。だから、あの畑は、シオザキのものではなく、元々は塩のものよ。ここだけではなくて世界中がそうよ」と言うので、
かんちゃんは悲しそうに、
「じゃあ、世界中の陸地の所有権は塩にあるんですね」と答えると、
港ツンコは、
「理屈の上ではね」と呟き、
海を見つめた。
そしてかんちゃんに言った。
「生命は塩のあるところから進化したんだから、体が塩分から決別していったように、心の内側も塩まみれの状態から進化していきなさい」