NHK朝のドラマ「カムカムエブリバデイー」でヒロインの子”るい”が先の大戦で父を亡くした私の生い立と重なり共感とあらためて当時の父や祖父の心境を知るに至った。戦死した父や残された母、祖父達が生後間もない私の将来を案じ付けた命に感謝している。
亡き父は福島の農家の長男で第2次大戦敗戦色濃厚になりそれまで農家長男は猶予されていた応召が根こそぎ動員となり、32歳で招集され補給も断たれ敗戦色濃くなった中国最前線に発つ前、軍の温情から一時帰郷した時母が懐妊している事を知つた。
祖国に生きて戻れないと覚悟し姓別も分からぬ胎児に自分の死後は母と共に他家へ養子に入るなどして家を継ぐ事は無理だろうと推測、文芸や芸術が好きだった父は平和が戻ったら自分が果たせなかった夢を叶えて欲しいとの思いを込め「一億玉砕」が叫ばれる世情に敢て抗い「眞琴」と自分の意志を通して当時に相応しくないうつくしい名を書き残しし出征した。
父はほどなく戦死し私は遺児となった母の嘆きは如何ばかりだっただろう。その3年後佐藤家に私を残すため画策した祖父らは遠縁の復員兵だった継父を迎え私は養子となった。
翌年生まれた弟に祖父は代々戸主が受け継いできた名を付け家の相続を託した。父を亡くした私には命名者の遺志を尊重し古い家に縛らずに自由な世界に羽ばたき好きな事をさせ、弟と夫々が将来的に幸せにと願い命名してくれた、深い洞察力に基ずく愛情をこめた命名だと、今の弟との関係をみてその先見性の確かさに驚嘆している。私は自ら選んだ職業を経て退職後も好きな仕事にし更にその知識経験をもとにボランテイア活動し、今は自由に絵や文を紬ぐ日々を過ごしおり祖父と亡き父の将来を見据えた洞察力の命名に深謝し追従したいと思う。幸いその思いが通じたのか今はコロナ禍で無理になった海外渡航8回十数か国を旅行でき自由を謳歌してきたことは有難く父と祖父に感謝している。