あさ7時、ファミリーレストランに入る。
普段は、早朝のファミレスには用事がないが
都合で、出社まで1時間空いてしまった。
腹も減った。
・
広い店内には男性の客が一人。
俺は二人目の客だ。
モーニングセットを注文。
トイレに行こうと
セルフのドリンクバーの横を通り過ぎた時
見てしまった。
・
先客の中年男性が、ドリンクバーのコーナーの
スプーンや砂糖などの棚から、
割り箸の束をわしづかみした。
そしてすばやい動作で、ジャケットの内ポケットに
その束を収めたのだ。
・
一瞬の出来事だ。
俺は、見てはいけないものを見てしまった気がして
その場に立ち竦んだ。
その男性、特に生活に困窮している風でもない。
割り箸を15膳ほど持ち帰っても
生活の糧になるとは思えない。
いい年をした大の男が
やることなのかと、情けなくなった。
・
その、「割り箸わしづかみ男」はコーヒーを
コップに満たすと、素知らぬそぶりで
席に戻って再び、朝食を取り始めた。
・
まあ従業員にいちいち言うほどのことでも無い
と思い、俺も朝食に専念する。
・
3人目の客が入ってきた。
その客、60歳半ばくらいか。 髪はボサボサ
ひどく顔色の悪い男性だ。
痩せた身体に、眼だけが光っている。
その客は、従業員を呼ぶと
「朝定2番」を注文。 それと
「ねえちゃん に、に、日本酒を熱燗で2杯」
と付け加えた。
・
熱燗~?
人が今から仕事に行こうかという時間に
熱燗? それも2杯?
・
うらやましい!
俺はうらやましい!
髪はボサボサ、着ている服はよれよれ
でも、あさ7時から酒が飲める生活は
うらやましい!
・
トーストを口に運びながら
視点をその男に向ける。
その「朝から熱燗2杯男」は
運ばれてきた熱燗酒を
一杯目は、きゅーっとひとくちで
飲み干した。
熱くないのか?
二杯目は、言葉にならないつぶやきと
定食の鮭の切り身とともに
みくちで口の中に送り込んだ。
飲み干した二杯目のコップをテーブルに
コトンと置くと、ふーーと長い
ため息をついた。
・
見ない振りして見ていた俺の視線と
その男の視線が合った。
その時、かすかに微笑んだような
気がした。
・
他人の人生の一瞬を
垣間見た気がする。
今日は、朝から重い。
店の外の雨が、輪をかける。
・
4人目の客は、ごく普通のサラリーマン風の
男性。
・
5人目の客は、入ってくるなり
席にも着かず、いきなり従業員の女の子に
「モーニングAね。 目玉焼きは両面、よ~く
焼いてよ。 ウィンナーもよ~く焼いて。
野菜に掛けるドレッシングは、野菜だけに掛けてよ」
「ほかのものにドレッシングが掛からんようにしてよ!」
と、細かく指示を出す。
この男は、同じ指示を2回繰り返した。
・
税込み399円のモーニングセットに
これほど細かく注文する客は、初めてだろう。
目玉焼きといっても、直径10センチに満たない
ちっちゃな代物なのだ。
誰が目玉焼きを、どう食おうと勝手だし、
こだわりといえば、こだわりだが
なんかやり取りを聞いていて、淋しくなる。
・
そして、この「注文のうるさい男」は
なんと、ドリンクバーコーナーの前で
ストレッチ体操を始めた。
脚を伸ばし、背筋を伸ばし
ついには、あのイナバウアーまで
披露し始めた。
店内の通路もど真ん中で
何を考えているのか
中年男のイナバウアー。
・
色んな客を見慣れていて、
少々のことには動じないであろう
従業員の女の子も
さすがに、このイナバウアーには
唖然として、立ちすくんでいる。
・
しずかちゃんのイナバうあ^-なら大歓迎だが、
コーヒーをお変わりしに行った俺にとっては
この「注文のうるさい、ストレッチ男」の因幡うあーは
至極、迷惑、邪魔、気色悪っだ!!
第一、この男が通路をふさいでいるので
コーヒーが注げんやん!
・
しばらく、にらんでいると気づいたのか
男は体操をやめ、コーヒーを持って
テーブルへ行った。
・
ああ~~ 今日は朝から、重い。
もういやだ!
何のバチで、朝も早くから
割り箸万引き、
熱燗一気飲み
中年男の因幡うわぁ!
を見ないといけんのか!
今日一日、何か良くないことの起こる
前兆なのか???
朝から、疲れた俺tananobuでした。
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