丹 善人の世界

きわめて個人的な思い出話や、家族知人には見せられない内容を書いていこうと思っています。

我が家にあった本

2010年05月07日 | 個人史
僕が少年・青年時代を送った家で、一番本をよく読んでいたのは僕だと思っている。
博識だった一番上の義兄は高校を出ると会社の寮に入り、その後結婚して独立したので、一緒に暮らした時期は短かった。
二人の兄も高校で全寮制の学校に入り、卒業後は遠方の会社に入社し、家に戻ってくることはなかったので、中学生の頃などに貸本屋で漫画を借りていた以外に家で本を読んでいる姿はあまり見なかった。

そんな風なのに、なぜか家には僕が購入するはずのない本がいくつもあった。
まず不思議なのは聖書があったこと。きちんとした体裁の聖書で、どうして我が家にあるのか不思議だった。一度「キリストの物語」を読もうかと思って、十字架の話は普通の本では最後の話なので「聖書」の最後のページあたりにあるだろうと思って開いたのだが、一向にそんな話は出てこない。さりとて最初から読もうとしたら、最初の数行で挫折してしまった。
(もちろん、今は、旧新約聖書を版を変え何度も通読してはいるが)

「下村湖人集」という分厚い本があった。誰が読んでいたのやら。
ちょうど当時NHKの連続ドラマで「次郎物語」をやっていて、最初の方は難しくて見てはいなかったが、主人公次郎少年が中学生になった頃からドラマにはまりだし、ちょうど家にあった「次郎物語」を、最初の用は読まずに、TVで放映していた頃の部分から読み始めて、とうとう最後まで読み通した。もっとも最初の方はいまだに読んではいないのだが。

「氷点」も家にあった。内藤洋子という少女がTVの主役に抜擢され評判になった頃で、これも読んだ。同じ作者で「塩狩峠」もなぜかあって、これは後に大学時代に薦められて読んだが。
内藤洋子が他のドラマに出演した石坂洋次郎のシリーズ物の本もなぜか家にあってこれも数冊読んだ。もっとも彼女が出演したドラマの原作は読まずじまい。TVも見ていなかったのだが。

そして一番不思議なのが、当時TVでは画期的だった、田村正和主演の眠狂四郎シリーズ。この原作本である「眠狂四郎無頼控」の文庫本が最終巻以外全部あったこと。だからTVでやっている背景から知ったり、TVは原作を適当に省略したり、設定を変えたりいじったりしていることがよくわかった。中学生の何も知らない純情な頃ではあったが、ドラマより原作の方がずっと良いなと感じていた。

最終的にこれらの本は引越のどさくさで無くなってしまったが。

ギター講座

2010年05月07日 | 個人史
ギターの覚え方で、クラシックをやるのなら今でも市販の教則本を使うのが一番かもしれない。僕がクラブの顧問をしていた「軽音楽部」は実質はギター(マンドリン)合奏部だったのだが、全音の教則本を使って2ヶ月はしっかり基本を教えていた。

部活ならそれもありだが、手っ取り早くギターを弾いて歌を歌いたい場合にはそれでは逆効果。指導者がいない自己流の場合にはすぐに飽きてしまう。そんな人のために、一つの月刊誌のギター講座ではポイントを絞っていた。いわゆる、ギターを覚えるにはギターコードを覚えるのが一番。これが正解だと思う。

ギターは左手で弦を押さえて音の高さを決め、右手でリズムやメロディーを奏でていく。左利きの人でもそれで行うのが普通。たまにまったく逆に持ち替えて弾く人や、ギターの弦をすべて張り替えて左利き用に作り替える人もいたりはするが、ピアノに左利き用がないように、基本的にはギターも同じ。

右手は弦を弾きおろすストロークで方法でかまわない。それでリズムを付けてもいいけれど、格好良く見せるには、基本の形である薬指が1弦、中指が2弦、人差し指が3弦専門になり、親指でベース音の4~6弦を担当する形で、親指でどれか1音弾いた後で残りの3本の指で同時に4本の弦を弾く、つまりはポン・ジャジャジャ、という4拍子のリズムとか、ビギンと呼ばれるズ・チャーチャ・ズチャズチャ、というリズムを覚えるといかにも上手に弾いているように見えるし、応用で何拍子でも対応できる。ストロークでも上下運動をリズムをつけて行うと格好が付く。右手はこれで十分。

さて問題は左手。
教則本ではしっかり音を覚えて正しい指使いで押さえてメロディーを覚えるようになっているが、それでは飽きてしまう。実は3種類の押さえ方を覚えるだけでかなりの曲を歌うことができる。

音楽の時間をまじめに勉強した人は、「主要3和音」という言葉を習っている。
3つ以上の音を同時にならしてハーモニーを作るのを和音というが、どの調の曲でも3つの和音というのが存在する。移動音階で言うと、(1)ドミソ、(4)ファラド、(5)シレソ、という和音で、この3種類を知っているとたいていの曲がこの組み合わせでできている。
ギターの場合、ハ長調に限って言うと、(1)ドミソ……C、(4)ファラド……F、(5)シレソ#ファ……G7、という3つの和音(コード)を知っていると良い。
シャープもフラットもつかない楽譜で、平行短調と呼ばれているのが、ハ長調の場合にはイ短調になって、この場合の3和音は、(1’)ラドミ……Am、(4’)レファラ……Dm、(5)ミソシ#レ……E7、となる。
ハ長調の曲の場合、短調の和音も含めて合計6個のコードを覚えるだけでほとんどの曲を弾きこなすことができる。

この6個の中で押さえ方の難しいのはFのコードだけ。もっとも簡略の押さえ方もあったりするのでごまかしもきくけれど、弦の上から下まで人差し指で6弦すべてを押さえてしまうセーハという押さえ方を一つは覚えるのも悪くはない。

残念ながら世の中の曲はハ長調だけではない。しかし#が一つついたト長調の場合、長調の3和音は、G,C、D7となり、短調がEm、Am、B7となって、ハ長調の6つの和音と3種類違うだけ。しかも新しく増えるD7は押さえ方も簡単で覚えやすい。短調のB7は、実はクラシックギターを始める人が誰でも弾きたがる「禁じられた遊び」の前半部分の最後に出てくる指使いなので、この曲をついでに覚えた人ならたやすく覚えてしまうコードでもある。

♭が一つついたヘ長調の場合には、残念ながら押さえ方が難しいものが増えるのでお勧めできない。しかしこの場合には、元の曲の高さを変えてしまうという裏技がある。半音で5つ分音を低くするとハ長調の曲になるのでそれで歌うといいし、あるいは逆に半音2つ分高さを上げるとト長調になる。もちろん本当には#の曲と♭の曲では雰囲気が違うので変えてしまうとよくはないのだが。

このように高さを変える方法にはある決まったパターンが存在する。

#が2つの曲ニ長調では、半音2つ分音を下げるとハ長調。3つの場合には半音2つ下げてト長調。
♭2つ曲は半音3つ下げてト長調、♭3つの曲は半音3つ下げてハ長調。

このように、ハ長調とト長調のコードを知っているだけで、どんな調の曲でも高さを変えれば、必ずハ長調かト長調に直すことができる。

同じ時期にギターを始めた友人のT君と、よく話し合ったものだ。高さを変えるのではなく、ギターのネックの部分に上から下まで押さえつけてしまうような何かがあれば、高さを変えることなくすべての曲をハ長調かト長調の演奏で弾けるのにな、と。そんな道具作られれば良いのにな。
なんと、同じ事を考える人がいたものだ。ある日、いつもは通らない道にある楽器屋のショーケースの中にそれがあった。何に使う道具か説明は一つもなかった(実際説明書きは外国語だけだった)が、見ただけでギターの高さを変える道具だと気づいた。カポタストロ、通称カポと呼ばれるギター用小道具との出会いだった。

前述のように、♭2つまたは3つの曲はギターの3フレット目にこのカポをはめれば、ト長調・ハ長調で高さを変えずに歌うことができる。♭1つの曲なら5フレット目につけるとハ長調になる。
#2つ、3つの曲は2フレットにつけるとハ長調・ト長調に直せる。#4つ、5つの曲なら4フレットにつけると良い。

ギター演奏の世界があっと言う間に変化してしまった。
フォーク歌手でもこれ以降はカポをつけるのが常識になり、某フォーク歌手はエレキギターにもつけたいと公言していたが、何と今ではエレキギター用のカポまで存在するから不思議。

こうしてギターコードは2種類の調の主要和音、計8つと、後はいくつかの合計でも15個以内のコードを覚えれば世の中の歌のほとんどを歌うことができる。