いきけんこう!

生き健康、意気兼行、粋健康、意気軒昂
などを当て字にしたいボケ封じ観音様と
元気印シニアとの対話。

旭山動物園の動物たち : 氷点下9度、遊泳を楽しむイワンは14歳

2008-12-14 21:50:54 | 散策
その日の朝、11月25日の朝は、旭川地方が冬に入ってから最も寒い朝でした。
札幌の二条市場で花咲ガニを買い、札幌ビール園のジンギスカンに舌鼓を打った24日は、5年振りに訪れた北海道を満喫した一日となったのですが、何かもの足りない元気印。

そんな気分を察した家内は、
「ペンギンの散歩が見られる旭山動物園へ行ってみない」
「割引航空券は、搭乗便の変更は無理だよ」
制約がある航空券だから、気乗りしません。

羽田‐千歳のシニア割引運賃は、JAL、ANA共に25,250円ですが、満65歳以上を対象にしたもので、搭乗前日までに購入しなければなりません。
別に16,850円の株主優待券もありますが、貧乏暮らしの我が家には株式投資をするだけの余裕はなく、34,600円もする片道交通費は、家内と合算すると138,400円にもなって、貧乏家計を圧迫します。

窮鼠は猫を噛む例えがあります。日頃の情報収集癖が、火事場の馬鹿力を出したのです。
結論を先に書きます。96歳で他界した義母を心置きなく見送ることが出来ました。
半ば諦めていた株主優待券より安い16,800円の航空券がエアードウにあったのです。
しかも、満60歳以上であれば誰でも利用できるDOシニア60は、今年還暦を迎えた家内も利用出来ます。

さらに、DOシニア60は、旭山動物園の日帰り見学を可能にする威力をも発揮します。
千歳14時30分発22便から18時45分発24便への変更は、一発でOK。
現役時代にフル活用していた格安航空券に付随している「搭乗便変更不可」を連想しての判断は、杞憂に終わったのです。

「乗客を優先するエアードウを利用して良かったですね。道産子のひいき倒しではありませんよ」

ボケ封じ観音さまは、微笑んでいます。

これで、旭山動物園を見学して、千葉へ帰る家内の思いは現実になります。
早々と家内は、旭山動物園きっぷを探しあてます。毎日、新聞の折込チラシと睨めっこしている主婦の生活の知恵は、場所を問わずにフル回転していたのです。

札幌から旭川までの往復特急自由席運賃、旭川駅から動物園までの往復バス代、動物園入園料を含めて大人5,700円の「旭山動物園きっぷ」が発売されていたので、明日の朝岩見沢から旭川へ行き、千歳空港へ直行する計画が即決したのです。
ちなみに、旭山動物園きっぷは、新千歳空港から旭川まで7,700円、子供が大喜びするスペースを設けてある特急・旭山動物園号が運行されています。

さて、旭山動物園の冬期開園時間は、10時30分から15時30分迄です。
翌25日、旭川駅10時7分着の特急に乗り、駅から動物園行バス停へ向かいます。
キュ、キュ、キュ、と雪を踏むきしみ音が足元から聞こえ、冷たい外気が腿を突き刺します。

「今年、一番さぶい朝ですよ。昨夜はマイナス12度にもなったしょ」

寒さに肩をすくめてバス乗り場を案内しているおじさんは、さぶい顔してバスを待っている乗客に話しかけてきます。忘れてかけていた道産子弁に、さぶさが和らぎます。

先ず、ペンギン館に入ります。
180度見渡して展示する水中トンネルから、頭の上を泳ぐペンギンを見上げながら奥へ進みます。
このペンギン館の出現は、動物園は水の中を見せるのは下手である、とされていたこれまでの常識を覆したといわれています。
ペンギンを見上げる水中トンネルに初めて入ったのは他の水族館ですが、そのルーツがここだと知ると、旭山動物園への思いが募り始めます。

ペンギンにプールじゃなくて、海を創ってやりたい。
常識って何なんだ?
これを好きな言葉にしている、新しい発想の施設を次々と生み出しているゲンちゃん、こと坂東元(ばんどう・げん)副園長が目指した「行動展示施設」のひとつでした。
工事中の「エゾシカの森」が来春完成すると、行動展示施設は11になりますから、年間入園者数が上野動物園を凌ぎナンバーワンになる日もそう遠くはない、と期待している元気印です。

ペンギンの散歩は12月中旬から、と知ってご機嫌ななめだった家内は、トンネルから出て手が届くところで身繕いをしているペンギン達と出会い、同じ目線のペンギンに見詰められてから少し機嫌を取り戻したよう。距離を取らないでアットホームにペンギンと接しさせようとするゲンちゃんの狙いは、家内の気持ちを捉えてしまった。

次はアザラシ館。
旭山動物園を紹介しているパンフレットには、円柱状の透明な水槽のなかで戯れる3頭のアザラシ、垂直の状態で正面を向いているアザラシの写真が掲載されていました。
パンフレットのアザラシが頭の片隅にあったので、アザラシと対峙して写真を撮りたい。

円柱状の透明な水槽「マリンウエイ」の周りは、水面に向かって駆け上るアザラシを観る見学者で群れていました。
前にいる見学者の頭が写らないで、アザラシの正面を捕らえる位置をファインダーで覗きながら探して、アザラシの登場を待ちます。

アザラシが来ます。
カメラの正面になる直前でシャッターを切りますが、マリンウエイを直進するアザラシの速度が速く、モニターで確認したアザラシは、マリンウエイに入った直後か出口間近に写っている。
超特急アザラシに興奮して、撮影モードをスポーツモードに切り替えることも忘れ、オートモードのままで撮っていたのですから、何度挑戦しても失敗でした。シャッターチャンスに強いニコンD80も形無しです。

「あいつは面白そうだ、ちょっかい出してやろう。
好奇心旺盛なアザラシは、時々、泳ぎを止めて見学者を観察することがあるようです。
パンフレットに掲載されているアザラシは、カメラマンと遊んでいるんです。ニコンD80に責任はありませんよ。
動物の遊び心を引き出す空間創りを毎日、年中考えているゲンさんや仲間たちの苦心の創造物「マリンウエイ」は、旭山での主役を競っているアザラシたちの桧舞台なのです」

旭山動物園の虜になってしまった、ボケ封じ観音さま。

アザラシ館を出ると、電光温度計はマイナス9度を表示しています。
午後にはマイナス5.7度まで気温が上がりましたが、閉園直前になっても変わりません。

帰宅して数日後、旭山動物園のホッキョクグマの名前と歳を調べました。
旭山で生まれ育ったハッピーが去年7月15日未明27歳で死亡してからは、旭山動物園で飼育されているホッキョクグマは、コユキ、ルル、イワンの3頭です。
年齢順に33歳、14歳、8歳、性別では、メス、メス、オスの3頭から、2頭を日替わり公開しています。

11月25日、ホッキョクグマ館で窓越しに対面したのは、生命感に溢れた
14歳のイワンなのです(写真)。
平成12(2000)年12月8日、ロシアのペルミ動物園生まれの、旭山では唯一のオス・ホッキョクグマだったのです。

水中に飛び込み水上へ飛びだして呼吸するイワンを、数センチ前に観た時、思わず身体を引きました。
彼が水面上に飛び上がった迫力ある瞬間を撮ろうとチャンスを待つのですが、マリンウエイのアザラシの如く、こちらの思い通りに彼は行動しません。
呼吸する場所が一定でないから期待する写真が撮れない。そんなもどかしい感情が騒ぎ出しても、遊び心が起きないイワンは、息を吸い終え平然と泳いで行くのでした。
寒さの訪れと共に、うっすらと覆っていた後足の裏の毛は抜けてしまい、ツルツルになっています。大きな前足で水をかいで泳ぎますが、後ろ足は浮いているだけでした。

話によると、夏場の浅瀬に顔をつけて鼻提灯を作って遊ぶ得意技をイワンは持っているようです。
顔の半分を浅瀬に浸けて鼻から息を吐き出してブクブクと泡を作る遊び。子供が風呂でやっていますね。ネットサーフインをするとその様子が閲覧できます。
DOシニア60は、ネットサーフインに引っかかったんですから、どなたか挑戦されては如何でしょうか。

「イワンから見ると、ちょうど見学者の頭が水面から出たり入ったりする位置にしています。
ホッキョクグマは、氷の割れ目や呼吸孔でアザラシを待ち伏せたり、日向ぼっこをしているアザラシを急襲したりして捕食しています。
水面から頭を出すものを襲うイワンの習性で、見学者の頭を餌だと思って水中へ飛び込んでくるのです」

プールに飛び込み遊泳するイワン、もぐもぐタイムでは、餌の「いかなご」を追って動きまわるイワンに対面した見学者が喜び感動して、彼にはストレス解消をもたらしている。
まさに、見学者をイワンの遊び相手にしてしまうゲンちゃんの狙い通りです。

ダイブが得意で、平成6(1994)年11月20日生まれのルルは、当日展示館にも野外の放餌場にも姿はなかったのですが、イワンとの間に新しい生命を誕生させようとの努力が続けられています。11月初め頃から自分の部屋に閉じこもっているとの話でしたから、その兆候が見えたのかもと、元気印の期待は膨らみます。

野生のホッキョクグマは、平成16(2004)年に絶滅危惧種に指定されました。
千葉に住む道産子ですが、ルルにエールを送ります。

ところで、もう一方のコユキは、外の広い放餌場でした。
彼女は、ロシアで野性育ちですが、昭和50(1976)年生まれ、と手書きのワンポイントガイドで紹介されています。
数日前の大雪で積もった放餌場の雪上に寝床を作り、北国では貴重な快晴の冬陽を浴びて気持ち良さそうに朝寝をしていました。
雪寝床にごろ寝している33歳のコユキは、春眠暁を覚えず、と安らぐシニアの姿そのものです。

反面、ホッキョクグマは陸上で最も大きい肉食動物で、何年も餌を与えている飼育係であっても、コユキの個室に入ると「いつかは食べてやる」と狙っているのです。

ホッキョクグマは、自分の生活習慣を頑なまでに守るジョッパリです。
そして、コユキもジョッパリです。

 「放餌場に出たユユキは、餌がなくても1カ月は部屋に戻らない。空腹に耐えられなくなっても係員に媚びることなく、何食わぬ顔で寝室へ帰ります。それほどまでして、自分の生き方を頑なに守るんです。しかし、彼女は、ガラス細工のように繊細な神経の持ち主なんです」

平成14(2002)年12月15日消印の「旭山動物園からの手紙」などを詠んでいると、愛すべきコユキが姿を現します。
野生のホッキョクグマの寿命は25~30歳。
動物園で飼育されている33歳のコユキは、日本で2番目に長寿とのこと。
最長寿のホッキョクグマが何処にいるのかは、聞き漏らしましたが・・・。

「私に任せなさい」

またまた、ボケ封じ観音さまの出番です。

「34歳になったばかりのポールが最高齢になりました。
昭和49(1974)年12月9日にカナダの動物園で生まれ、生後11カ月の時、京都市動物園へ来たオスです。今年5月29日に、釧路市動物園で飼育されていたコロが肝不全で死亡したので、33歳のコロから34歳のポールに代わったのです。

余談になりますが、ポールの母親デビーは、カナダのウイニペグにある動物園で飼育さています。
今年、世界最高齢のホッキョクグマとしてギネスブックに認定されたデビーですが、11月27日、寄る年波には勝てず安楽死させています。41歳11ケ月でした。

ついでに、日本の飼育最長年齢記録は、上野動物園で飼育されていたロシア生まれの雪男(ゆきお)が持つ34年9カ月です。彼は、平成5(1993)年3月15日に没しています。今の雪夫(ゆきお)は、雪男とは別個体です。
人間の年齢に換算すると、90歳以上に相当します(京都市動物園)」

ボケ封じ観音様の解説は尽きることがありません。

「世界と日本の最高齢ホッキョクグマが共に、今年死亡していることを知っていましたか。
ホッキョクグマの飼育最高齢は、33歳~35歳に分布しています。人間の歳に換算すると80歳から100歳以上になる、と動物園関係者は推定しています。ホッキョクグマは日本人の平均寿命以上を全うしています」

ホッキョクグマ館のもぐもぐタイムは、時間が合わず見学出来ませんでした。
もぐもぐタイムで餌の「いかなご」を水槽に投げ込むので、水槽の窓が汚れす。見学者が見やすいように、1.5ケ月に1回、窓掃除していると、ホッキョクグマ・ワピチ・調理を担当している佐藤智弘さんが教えてくれました。
普段、見学者が知りえない苦労が伝わってきます。

旭山動物園ホームページの「しいくのぶろぐ」には、動物と飼育展示係員(旭川市役所飼育係員の辞令名称)との心暖まる交流が綴られています。自然体で生き生きと耀やく動物が見学できる「行動展示」を導入して、旭山動物園を復興させた秘密の一端が垣間見えます。

長くなりましたが、マイペースな職場環境を夢に抱いているゲンちゃんが、昨年7月25日、母校・酪農学園大学で行った講演記録から抜粋して、坂東元獣医師からのメッセージとしてお伝えし、終わりにします。

「野生種に対してあるべき価値観、ルールとは、人間と対等な命、共存と調和なのです。
 動物園の動物たちは野生動物であり、その生命力は凄まじく、理屈抜きで生きようとしています。動物園の動物は、与えられた環境の中で生きるだけ生きる存在で、死は必ずある。それに向かって、どういう生き方をさせてやれるかが、我々の使命。生きている間は愛情を持って飼うこと。最後、死をどう看取るかで、命をすべて看たことになるのです。動物園は、生まれたことだけを知らせるのではなく、死も公開する義務があると思います。
 人間社会でも、死は見ないようにしているのが、現在の日本の風潮ですが、それでは日本に未来はない。人間も動物も、社会のルールが崩れると、子供の生存率が下がります。自殺と殺人の増加など、最近の日本はブレーキのない社会となってきていると思います」




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