東京国立博物館 茶の美術 を集中して取り上げているシリーズ。
今回は、2020年11月4日に訪れたトーハク、目的は特別展「桃山-天下人の100年」でした。
特別展に入ってすぐ、狩野永徳の唐獅子図屏風、楓図屏風、長谷川等伯の松林図屏風の3作が並んで展示
おおー!と思わず息をのみました。(唐獅子図屏風だけが国宝ではありませんが、これは皇室所有のため)
茶器でも、〈国宝 志野茶碗 銘 卯花墻〉、〈重文 黄瀬戸立鼓花入 銘 旅枕〉など名品が並んでいまし
た。この時代は、日本文化の爛熟期だったんだなー と改めて思います。撮影禁止だったのが本当に残念。
そして、本館では、特別展との連携企画「 破格から調和へ 17世紀の茶陶」が特集展示されていました。
最初の写真は、特別展「桃山」を見終えて、本館へ行く途中、庭園に立ち寄ったときのものです。
茶室「転合庵」前の芝生から、本館の眺め。 13:11分撮影
逆に本館テラスから、転合庵を撮影。 上の写真から2時間後なので芝生が陰になっています。 15:13分撮影
特集のキャプションです。
【黒楽茶碗】
楽家初代の茶碗に比べると、趣が異なりますが、これはこれでいいな-と思います。
【黒楽茶碗 銘 かのこ斑】
【黄釉茶碗】
”きれいさび”の言葉通り、端正な茶碗です。
高取焼は郷里福岡の窯であり、小石原焼※の窯も近かったので、親しみを感じます。 ※ 宗家二代目が興した窯、小石原高取
【片身替釉茶碗 銘 深山路】
次は”きれいさび”の前世代となる内ケ磯窯の作品。 織部の雰囲気と、力強さを感じる
内ケ磯窯は、今は福智山ダムの湖底にありますが、 全長46.5 mの登り窯で、開窯当時(1614年)最新式・最大級の窯だった。
内ヶ磯窯跡の発掘調査によって、 作品に唐津焼や備前焼そして瀬戸焼 ・美濃焼などと同じ形・技術があることが分かっている。
1620年には、元唐津藩の武士で茶事を好み、焼き物の釉薬に詳しい五十嵐次左衛門が黒田藩に召し抱えられ、内ヶ磯窯で協同で
作陶に従事し始めた。 しかし、1624年に朝鮮から連れてこられた陶工の八蔵父子が帰国願いを出すと、藩主が激高し、八蔵
父子の蟄居、内ヶ磯窯の廃絶となった。 従って、内ケ磯窯で作陶されたのは、わずか10年ほどのことだった。
茶室転合庵とゆかりのある 【耳付き茶入れ 銘 於大名】
【竹茶杓 銘 埋火】
【柿の蔕茶碗 銘 唐衣】
何かの本で読んだことがあるのですが、日本の茶事に使う高麗茶碗は、朝鮮の現地では出来損ない扱いで
飼い犬の餌用の碗などに使われていた・・・確かに、歪とかムラとか、欠点となるものに価値を感じない
と、餌茶碗も仕方ないところ。 日本人の見立て好きが、餌茶碗を格好の素材にしたのだった。
【魚魚屋茶碗 銘 さわらび】
【狂言袴茶碗 銘 浪速筒】
餌茶碗から一転、端正な茶碗。
そういえば過去に、朝鮮の陶磁をいろいろ見てきましたが、こんな形の茶碗は見なかった。
でも、模様とか釉薬の調子は、朝鮮陶磁だと感じます。 やはり、日本からの注文で焼いたのだなーと納得。
【古染付高砂手花入】
「謡曲 高砂」にちなんだ名称の花入れ、当時(江戸時代)は、謡は身分の別無く愛好されていたので
こんな名付けで、十分、伝わったのでしょう。 それにしても、水草が描かれた花入れ、どんな花を活
けたらと映えるのだろう、この季節だったら菖蒲かなー、捩花も面白いかも。
【呉須赤絵花卉文鉢】
呉須赤絵、漳州窯は景徳鎮窯の白とは違い、やや黄味がかっている。 どこにでもあるような感じのデザインで
つまらないのですが、400年前の茶人には鮮やかだったのでしょう。 料理を盛るとおいしく見えそうです。
大量につくられたのですが、主に日本などへの輸出用で、中国本土にはほとんど残っていないとか。
【南京赤絵蓮鷺文手桶形茶器】
向付は、刺身や酢の物など、メインディッシュを盛った器。 手桶形のデザインは洒落ているし
絵柄は、クールで刺身などに合いそう。
大阪、鴻池家は江戸期の日本を代表する豪商であり、鴻池善右衛門家は代々、茶人の当主を輩出
し、表千家とも縁が深かった。 替茶器・・・調べると、客の多い茶会などで、メインの茶器で
は、量が不足するのを補うためのサブの茶器とのこと。豪商の茶会は、たぶん、大規模で、向付
として使うより、替茶器として使い方が、都合がよかったのでしょう。
【祥瑞茄子香合】
いい雰囲気があります。
茶事をしたことがない私は、茄子の糠漬け入れとして使いたい・・・なーんちゃって、怒られそう。
【呉州染付人物文松皮菱香合】
側面の人物の描き方がユニーク。 それとキャプションにある評価番付、江戸時代は相撲の番付を
真似た順位付けがよく用いられてました。 西前頭八枚目・・・Webで調べると、大関、関脇、
小結、前頭1枚目~となるので、トップの大関から11番目の位置です。東西があるので、トップから
22、23番目の位置になります。
実物の展示は、他館貸し出しで、この時はなかったのですが、2019年10月21日に撮影したものが
ありましたので掲載。 このブルーの色調・・・うーんと唸ります。
・・・
馬蝗絆の伝承を記した史料
平重盛が所持したんだ。
※阿育王山:中国、浙江(せっこう)省東部の山。281年、西晋の劉薩訶(りゅうさっか)が阿育王の舎利塔を建立した地。宋代には
広利寺として五山(禅宗の寺で、最も格式の高いもの)のひとつに
なお、茶碗は2個あって、両方とも鎹が打たれている。 トーハクと、マスプロ美術館で所蔵。
【色絵牡丹図水指】
仁清は、自分の作品にサインを入れた初めての陶工。 京焼を大成した、作家としての自負があったのでしょう。
仁清の作品は、現在、国宝2点、重文20点を数える凄さです。 その一つがこの水指。
個人的には金銀を用いて装飾過多の感があり、好みではありません。 大名の注文によるものだから仕方がないの
ですが。 ただ、牡丹の花と葉の水彩画のような趣はさすがだと思います。
【白釉建水】
こんな作品もつくっているんだ。 現代陶芸展で見るような、シャープでクールな作品。
これは貴人からの注文ではなく、仁清が自分の芸術眼で作ったように思います。
【褐釉肩衝茶入】
この作品も、芸術家の眼が感じられる。
※数茶: 茶道で、銘を秘した数種の茶を飲みくらべ、のちにその銘をあてて勝負を決める競技。十服茶。闘茶。
【色絵紅葉賀図茶碗】
紅葉を寿ぐ宴”紅葉賀”の絵柄。 幔幕に菊や桐の紋があるのは、帝の催す行事であることを示し、光源氏が
青海波を舞うのですが、それは敢えて描かない留守模様。 これも貴人の注文制作でしょう。 茶碗のシル
エットが美しい。
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