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【ふじもん世界放浪「放学記」第5章アフリカ編 モザンビーク恐怖の警察!『バスターミナル事変』勃発!】

2014-01-29 03:42:58 | 日記
2014年1月28日。

《ここが事件の現場となったバスターミナル。今日僕は、衝撃の現場に遭遇してしまった。》

ここはモザンビークの首都・マプト。時間は午前7時。僕は次なる目的地・スワジランドに向かうため、朝早くから市内のバスターミナルに来ていた。

バスターミナルと言っても小さなローカルターミナルで、大型のバスが来るわけではなくミニバスのみ発着の小さなターミナルだ。

ここではいつもの光景が繰り広げられていた。わさわさと集まって来る人々と物売り。なんてことはない、いつもの「アフリカのバスターミナル」の光景がそこにはあった。


マプトからスワジランドへの国境まではミニバスで約2時間。あっという間の距離だ。僕はサクサクとバスの席を陣取り、バスの発車を待っていた。

アフリカのバスはほとんどが時間発車ではなく、「満員発車」だ。つまり、人が集まって満席にならないと、何時間経ってもバスは出ないのだ。と言ってもそんなことは有り得ないので、ある程度待てばもちろんバスは発車する。

いつもの待ち時間だ。僕はいつもと同じように過ごしていた。行き交う人々、断っても断ってもやって来る物売り、「ニーハオ!」と叫んでくるおっさん。それはいつものバスターミナルの喧騒だった。


このままバスは何事もなく発車するものだと僕は思っていた。しかし、この後驚愕の事件が起きる。


ふと誰かが何かを叫んだ。ポルトガル語だし、僕にはさっぱり分からない。しかしかなりの叫びっぷりだ。

すると突然、物売りの人々が慌てふためいた。それも尋常な慌て方ではない。「蜘蛛の子を散らす」とはまさにこのことだ。何故だかもちろん理由は分からない。しかし物売りの人々は、猛ダッシュであちこちに散らばり始めた。


そして間髪入れずに1台の車がバスターミナルになだれ込んできた。凄い勢いだ。

その車とは・・・なんと警察!そして数人の警官が勢いよく飛び降りてきた。

「な、なんだ?何か事件でもあったのか?」僕は思った。

あまりの事態の進展の早さに、もはや僕は為す術がない。乗る予定のミニバスのドアに寄りかかりながら、激しく動くその様子を眺めるしかなかった。


逃げ惑う物売りの人々と追いかける警察。一体何があったというのだ?

ほとんどの物売りはあっという間に逃げ去って行った。10人近くいたであろう物売りであるが、その逃げ足は凄かった。あっという間に全員が散っていった。


と思ったのだが、違った。1人の物売りだけ、警察に捕まってしまった。

40歳くらいの男性だろうか。「ああ、1人捕まっちゃったのか・・・」と思ったのも束の間・・・!


信じられない事態が起きた。

なんと、警官たちはその彼を警棒でボコボコに殴り始めたのだ!突然の惨事に僕は頭がついていかず、眺めているしかなかった。

周りの人たちも特に止めるわけでもない。いや、止められるわけがないであろう、相手は警官だ。ただただその様子を見守るしかなかった。

時間にして何分であっただろう、長い時間ではなかった。3~4人の警官がひとしきり彼を殴ったところで、警官の手は止まった。その隙をついて、物売りの彼は走って逃げて行った。

逃げる彼を追うでもなく、警官たちはその場を去って行った。あれは一体なんだったのだろう・・・?


僕は近くにいた英語が話せるおじさんに事情を聞いてみた。すると、

「バスターミナルの中でものを売るのは違法なんだ。だからたまに警官がやって来るんだよ。」

と教えてくれた。

なるほど、モザンビークでは一応違法行為なのか。しかしそんなの当たり前のように行われているじゃないか。なんで今さら、しかも1人だけ殴るだけ殴っておいてそのまま放置するだけだし、どういうことなんだ?こんなのは日常茶飯事なのか?

と、彼に聞いてみた。すると、

「ああ、たまに捕まる人がいるね。捕まるとああして殴られる。警察はクレイジーだよ・・・。」

と、力弱く答えてくれた。


ケニアでは、もし誰かが街中で犯罪を犯してその場で捕まったとすると、警官だけでなく民間人も含めてみんなでリンチをするという。下手するとそれは死ぬまで続き、私刑が死刑になってしまうというのだ。

僕がモザンビークで見た衝撃の光景。それは「死刑」になるほどのものではなかったが、明らかに異常な事態だった。この国ではこんなことが日常茶飯事だといのだろうか。僕は言い知れぬ恐怖を感じた。


いわゆる発展途上国と呼ばれている国の多くは、ハッキリ言って警察など信用できない。何だかんだとイチャモンを付けてきて金を騙し取ろうとしてきたり、犯人と結び付いて犯罪に手を貸したりなんてことは当たり前だ。聞いた話だが、そんな中でもモザンビークはかなり「信用できない警察」の国らしい。

頭の中ではそういうことは分かっている。これまでいくつもの「発展途上国」を訪れてきた。しかし目の前で実際に起きた警察の暴挙に、僕は頭の整理ができなかった。


数十分後、何事もなかったかのように国境行きのバスは出発した。しかし僕の頭からは、あの殴られてるシーンが離れなかった。せめてもの救いは、彼が走って逃げられるくらいの暴行だったことだ。足を滑らせながら必死で逃げる彼の姿を、僕は一生忘れることはできないだろう。

強烈な印象を最後に残し、僕は次の国・スワジランドへと足を踏み入れた。


2014年1月28日。美しい緑の大地が広がる、スワジランドのエズルウィ二渓谷の安宿にて。



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