今回の日曜美術館は、『ヴァロットン』です。
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ヴァロットンは、日本はおろか地元フランスでさえ、その名があまり知られていませんでした。
ところが、埋もれてきた画家の大回顧展がパリで開催されると、何と31万人の人々が会場に押し寄せ、展示会は大盛況だったのです。
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19世紀末のフランスで活躍したヴァロットンですが、その絵は謎めき、作品は批判され、長く埋もれた存在でした。
そして今の時代になって、やっと評価されつつあります。
パリでの大人気を受け、日本で初めての回顧展が、三菱一号館美術館(東京・丸の内)
で開催されています。
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特に私が注目したのは、 ヴァロットン40代以降の作品です。
少し変わった性愛の持ち主ではないかと思わせる作品が多く描かれます。
当時の社会のもとでは、批判されかねないでしょう。
今、京都でバルテュス展が開催されていて、非常に人気です。
バルテュス は完全なる美の象徴として、少女を対象に描いています。
卑猥とも思える少女のポージングは、 バルテュスが 少女性愛者ではという疑念を持たせるのに十分な作品です。
しかし、 バルテュスはピカソに「20世紀最後の巨匠」と言わしむる評価もあります。
時代が異なれば、 バルテュスの評価も変わっているかもしれませんね。
フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)は、スイスのローザンヌで生まれます。家庭は厳格なプロテスタントで、幼い頃から厳格な倫理観で育てられます。
16歳で画家をめざしパリに渡ります。
「20歳の自画像」1885
伝統的な写実の技法を学んでいた頃の作品です。
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その後、ナビ派と呼ばれる前衛グループに参加します。
その頃の作品です。陰影のない、平面的な作品で、写実的な作品とは大きく異なります。
「公園、夕暮れ」1895
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ヴァロットンがパリで知られるようになったのは、20代です。
その当時パリでブームとなっていた日本の浮世絵に、ヴァロットンも大きな影響を受けます。西洋絵画にはない表現方法に魅了され、新しい分野にチャレンジします。
それが、版画です。
社会に溢れた矛盾を白と黒の版画で描き出します。
雑誌の挿し絵として大人気になります。
ヴァロットンの所蔵する浮世絵
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「街頭デモ」
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「アナーキスト」
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「自殺」
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「嘘」代表作の一つ
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「最後の手段」
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「お金」
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「5時」
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ヴァロットンは34歳で、裕福な未亡人と結婚します。
しかし、その結婚でヴァロットンは、一層孤独に追いやられます。
「夕食、ランプの光」1899
結婚し新しい家族との食事風景です。
奥さんと、二人の連れ子、そして手前の黒い影が ヴァロットン自身です。
とても、微笑ましい一家団欒の食事風景ではありません。
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「ボール」1899
強い日射しのなか、少女が赤いボールを追いかけています。
遠くの緑の中に、女性二人がなにやら話をしている感じです。
この絵、 ヴァロットンは何を書きたかったのでしょうか。
上から俯瞰しているような構図です。
どこか冷めていて、謎めいているようにも思えます。
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「ポーカー」1902
ブルジョアの妻との暮らしに違和感を覚えます。
後ろ向きでポーカーをしているのは妻です。
違和感のある構図、妻とポーカー相手は正面を向いていません。
ヴァロットンの屈折した精神が絵に表れているようです。
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「貞節シュザンヌ」1922
ヴァロットンの代表作の一枚です。
シュザンヌは娼婦ですが、この絵では貞節としています。
しかし、男女の密談でしょうか。
貞節とはかけ離れた、なにやら卑猥な空気も感じられます。
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ヴァロットンはある題材に傾倒します。
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それは、臀部(お尻)です。
女性のお尻 はヴァロットンの性愛でしょうか。
プロテスタントで厳格な倫理観で育った ヴァロットンですが、心に秘めていたものを一気に吐き出したというような作品です。
「臀部の習作」1884
絵画の勉強中の若いときの習作ですが、臀部に執念みたいなものを覚えます。
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「トルコ風呂」1807
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「眠り」1908
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「4つのトルソ」1916
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「赤い絨毯に横たわる裸婦」
お尻にのめり込んだような絵です。
丁寧なお尻の描き方に比べ、顔はつけ足し程度にも見えます。
違和感のあるポージング、 ヴァロットンはお尻フェチズムではとの評価になりかねない作品にも見えます。
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ヴァロットンが作品として発表した時代と今は大きく変化しています。
作品は画家の内面そのものであり、 ヴァロットンが今日、再評価されるのはわかる気がします。
どこか秘密めき、冷めたような視線が感じられる作品、お尻に漂うエロチズム、しかしデカダントでもない。
私は、放送分の作品しか見ていませんが、東京で開催されている回顧展の全体作品を是非見て、疑問をぶつけてみたいです。
でも東京はやはり遠い、せめて近畿に巡回に来て欲しい。
東京在住の方で、 ヴァロットンの回顧展を見られた方の感想を聞きたいです。
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