大川原化工機 控訴審が結審
原告「被害、早く解決して」
東京高裁
軍事転用可能な機器を無許可で輸出したとして「大川原化工機」(横浜市)の社長らが逮捕、起訴され、その後に起訴が取り消された事件で、社長らが捜査の違法性を訴え、国と東京都に賠償を求めた訴訟の控訴審の口頭弁論が25日、東京高裁(太田晃詳裁判長)であり、結審しました。判決は来年5月28日の予定です。
一審判決は「警視庁公安部が通常要求される捜査をすれば、3人の嫌疑に合理的な根拠が欠如していることは明らか。漫然と逮捕したことは違法だ」などとして、国と東京都に計1億6200万円の賠償を命じました。国、都と同社側の双方が控訴していました。
控訴審で、同社側は公安部の捜査メモなどの新証拠を提出。公安部が「輸出規制要件の解釈をねじ曲げた」と主張しています。控訴審では、捜査に加わった警部補が証人として出廷。公安部が社長らの逮捕に踏み切ったことについて「捜査の決定権を持っている人の欲だった」と証言しています。この裁判では、一、二審で3人の警部補が事件のねつ造を証言しました。
都側は、当時としては合理的で適正な捜査が行われたと主張しています。この日、都側が出した書面では、警部補3人の証言を“虚構”と攻撃する内容となっています。
閉廷後の会見で会社側代理人の高田剛弁護士は「(3人の証言を)虚構という言葉で形容するのは非常に危険だし、(公安部)は今まで何も検証していない印象を受けた」と述べました。
勾留中に胃がんがみつかり、起訴取り消し前に死亡した同社元顧問の相嶋静夫さんの遺族は「捜査不足でえん罪に至ったと思っていたが、提訴から3年余りの経過を見ていて、えん罪ではなく警察犯罪による事件だと感じている」と語りました。
大川原正明社長は「ねつ造というつくられた事件でわれわれは被害を受けた。とにかく早く解決していただきたい。企業、それから社員は非常につらい期間があった。(高裁判決では)それに対する損害賠償的なものをもっと深く考えていただきたい」と判決への期待をのべました。