生産削減へ政府は責任果たせ
プラスチックによる汚染を防ぐための条約策定に向け韓国の釜山で11~12月にかけて開かれた政府間交渉委員会は生産規制などをめぐって合意できず、来年に仕切り直しとなりました。
プラスチックは、現在年間4億6千万トン以上生産され、1950年の200倍に達しています。分解しにくいため、生産量の急激な増加に伴って海などの環境中に放出されるプラごみの量は急増しています。
このままでは、2050年には魚の量を超えるという予測もあり、目標を明確にした生産規制を盛り込んだ条約の一刻も早い策定が求められます。
■人の血液から検出
クジラやウミガメ、海鳥などの海洋生物が絡まったりのみ込んだりしていることが世界中から報告され、海が大量のプラごみに汚染されていると広く知られるようになりました。
紫外線や波で砕かれ、目に見えないほど微小化したマイクロプラスチックやナノプラスチックが、あらゆる生物の体から検出されるようになっています。
生物の体に入り込んだプラスチック自体が免疫へ悪影響を及ぼすだけでなく、プラスチックを使いやすくしたり長持ちさせたりする目的で添加されたさまざまな化学物質には、発がん性が指摘されるものや生殖に悪影響を及ぼすものがあると指摘されています。
人間も例外ではなく、日本人の血液や臓器からマイクロプラスチックとプラスチック添加剤が検出されています。微小化したプラごみを体内に持つ魚介類や食品包装用のプラスチックなど、飲食物にマイクロプラスチックが含まれる経路は多く、それが主な原因と考えられています。
■廃棄物管理では…
海など環境中へのプラごみ汚染の防止を求める声が世界中で強まるもとで、22年にケニアのナイロビで開かれた国連環境総会で法的拘束力を持つ条約を24年中に策定することが決められ、政府間交渉が行われてきました。釜山での政府間交渉委員会は最後の会合と位置付けられていました。
会合では過半数の国から有害なプラスチックや化学物質の世界的な禁止と段階的廃止を求める声があがりました。しかし、産油国など一部の国の強硬な反対で合意に至りませんでした。
これらの国々は生産規制ではなく、廃棄物管理の強化を主張しています。
廃棄物管理の強化は必要ですが、廃棄物管理を行っているはずの日本のプラごみが国内外の環境を汚染しているのが現実です。日本のように回収したプラごみの大半を焼却すれば大量の二酸化炭素を排出します。
埋め立てすれば有害な添加物が染み出し、環境を長期間汚染し続けます。廃棄物管理は持続可能でなく、生産規制なしにプラごみ汚染を防ぐことは困難です。
日本政府は一律の生産規制に慎重な立場で、多くの国が会議での発言や記者会見で生産規制の必要性を訴えたような積極的役割を果たしませんでした。
日本は有数のプラスチック生産・消費国で、海などに大量にプラごみを放出している国でもあります。政策を転換し、全人類的課題であるプラごみ問題解決に積極的に責任を果たすことが求められています。
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