「国策の闇」封印は許されない
2021年開催の東京五輪招致を巡る新たな闇が浮上しました。石川県の馳浩知事が招致活動の際、内閣官房機密費(報償費)を使って、国際オリンピック委員会(IOC)の委員に贈答品を渡していたと都内の会合(17日)で述べました。馳氏は13年の招致決定当時、自民党衆院議員で党の東京五輪招致推進本部長でした。馳氏は発言に「事実誤認」があったと、すぐに全面撤回しました。しかし、どこが誤認なのか一切語らず、疑惑は深まります。国策で推進した巨大イベントの裏で何が行われていたのか。岸田文雄政権の責任で真相を明らかにすべきです。
「いくらでも」と安倍氏
馳氏の発言は、スポーツ振興に関わる会合で行った講演の中でのものです。当時の安倍晋三首相から「招致は必ず勝ち取れ」「金はいくらでも出す。官房機密費もあるから」と言われたことを紹介しました。
その後、開催都市決定の投票権があるIOC委員約100人全員に1冊20万円するアルバムを作成して、届けたことを具体的に語り、官房機密費を実際に充てたとしています。馳氏が会合の参加者に発言のメモを取らないように念を押していたことも、信ぴょう性が高いことをうかがわせます。
馳氏は、発言を撤回する理由について、文部科学省からの指摘があったなどと言うだけで、詳しい説明を拒否しています。「撤回」で幕引きを図る姿勢はあまりにも無責任です。
招致活動で物品を贈ることなどは、IOCの倫理規定で禁止されています。馳氏の発言通りだったとすれば、倫理規定に反する行為を国挙げて行っていたことになります。
買収に等しいことに税金である官房機密費が投じられた疑いが濃厚になっているのは重大です。年間約12億円とされる官房機密費は、領収書が不要とされ、チェックする仕組みもなく、使途が問われない「闇ガネ」と言われています。
取扱責任者の官房長官の判断で支出されています。東京五輪招致を推し進めた安倍政権当時の官房長官は菅義偉前首相です。当時の官邸でどのような議論があり、官房機密費をどのように使っていたのか。馳氏の述べたこと以外に五輪招致に投じられていないのか。菅氏は国民に明らかにしなくてはなりません。
松野博一官房長官は「国の機密保持上、使途などを明らかにすることは適当でない」などと述べ、調査にも応じません。IOC倫理規定違反が問われる疑惑に税金の支出が取りざたされている事態を深刻に受け止めようとしないのは大問題です。馳氏や菅氏をはじめ関係者の国会招致は不可欠です。
国会での疑惑解明が必要
東京五輪招致では、当時の五輪招致委員会理事長の竹田恒和氏に関わる金銭授受疑惑があり、フランス司法当局が同氏を捜査対象にし、問題となりました。
広告大手電通出身の五輪組織委員会元理事の汚職事件や、多くの広告会社による談合事件など五輪の闇が次々と明らかになっています。組織委元理事の汚職事件では森喜朗元首相も事情聴取されるなど政治家関与の疑いも指摘されています。疑惑を封印することは許されません。国会での徹底解明が必要です。
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