前日の重く身体にまとわりつき、心までも冷えた霧雨とはうって変わって、心地よい小春日和の日曜日の事でございます。ベッドサイドのテーブルには、ライフワークでありますところの、人類学だの遺伝学だのの洋書が丸善より届いたままに積み上げられておりました。月移民団の失敗から独り地球へ帰ってきて4年が過ぎようとしておりますが、今だにこの星の重力よりも、本さえ読めないほどの、日々の人間関係の重さに苦しん居るのでございます。
今日こそはと思い立ち、iPhone 18 の電源を落とし、とっておきのウィスキイに月から持ち帰ったハーブを浮かべ、読書三昧と決め込んだのでございます。我が家のベッドは、今は亡き父母が月へ持ち込んだウォーターベッドと呼ばれていたものでございますが、経年変化で『水』の中に空気が入り込み、寝返りの度『こぽこぽ』と音をたてる始末でございます。月での低重力にはおよばないまでも、この優しい浮遊感がわたくしは好きなのでございます。
何度かの寝返りの後、今までの浮遊感ではない、上も下も分らない、かといって墜落しているのではない、奇妙な感覚にとらわれておりました。イカルスの気持ちはいかばかりなどと気楽に思っておりましたところ、足の底に一本の綱が触れるではございませんか。よく見ると綱は『カチャカチャ』音を立てて二本に複製されておりますようで、時々赤い火花が立ち、わたくしの足に痛みを起こしたりもいたします。『ゆわーん、ゆよーん』どこかで、遠くで、懐かしい音がしたのに気をとられ、後ろを振り向いた時でございます、わたくしの身体は無重力のゼリーの中に放り出されたかと思うと、今度は徐々に降下してゆくのでございます。あたりはどんどん暗くなってゆき、わたくしの意識も朦朧としてきたところに、先ほどの『ゆわーん、ゆよーん』といった音が再び聞こえたのでございますが、これは昔母が読んでおりました中原中也の詩に出てくる音ではないかとふと気がついたのでございます。音がする度にわたくしの身体に痛みが起こり、何か異常な遺伝情報が読み取られてゆくようで、知らず知らずに涙がこぼれるのでございます。『ゆわーん、ゆよーん』これはどうやら警報であるようでございます。
酷い痛みに耐えられず声を上げたのを最後に、わたくしはどこかへ瞬間移動したのでございます。身体を起こすとどこにも痛みはございませんし、警報も鳴っておりません。遥か頭上から温かい想いが降ってくるようで、見上げたその先には、、、。月移民団で疲れ果て、皺深くなった晩年の母ではなく、わたくしを孕んで幸せそうに微笑む母の姿があったのでございます。ここは母から貰ったミトコンドリアの中であると、わたくしははっきりと認識したのでございます。しかし母の姿は、母の想いはどんどん薄れてゆき、わたくしは空を見上げ止めどなく、先ほどとは異なる涙を流しているのでございます。
今日こそはと思い立ち、iPhone 18 の電源を落とし、とっておきのウィスキイに月から持ち帰ったハーブを浮かべ、読書三昧と決め込んだのでございます。我が家のベッドは、今は亡き父母が月へ持ち込んだウォーターベッドと呼ばれていたものでございますが、経年変化で『水』の中に空気が入り込み、寝返りの度『こぽこぽ』と音をたてる始末でございます。月での低重力にはおよばないまでも、この優しい浮遊感がわたくしは好きなのでございます。
何度かの寝返りの後、今までの浮遊感ではない、上も下も分らない、かといって墜落しているのではない、奇妙な感覚にとらわれておりました。イカルスの気持ちはいかばかりなどと気楽に思っておりましたところ、足の底に一本の綱が触れるではございませんか。よく見ると綱は『カチャカチャ』音を立てて二本に複製されておりますようで、時々赤い火花が立ち、わたくしの足に痛みを起こしたりもいたします。『ゆわーん、ゆよーん』どこかで、遠くで、懐かしい音がしたのに気をとられ、後ろを振り向いた時でございます、わたくしの身体は無重力のゼリーの中に放り出されたかと思うと、今度は徐々に降下してゆくのでございます。あたりはどんどん暗くなってゆき、わたくしの意識も朦朧としてきたところに、先ほどの『ゆわーん、ゆよーん』といった音が再び聞こえたのでございますが、これは昔母が読んでおりました中原中也の詩に出てくる音ではないかとふと気がついたのでございます。音がする度にわたくしの身体に痛みが起こり、何か異常な遺伝情報が読み取られてゆくようで、知らず知らずに涙がこぼれるのでございます。『ゆわーん、ゆよーん』これはどうやら警報であるようでございます。
酷い痛みに耐えられず声を上げたのを最後に、わたくしはどこかへ瞬間移動したのでございます。身体を起こすとどこにも痛みはございませんし、警報も鳴っておりません。遥か頭上から温かい想いが降ってくるようで、見上げたその先には、、、。月移民団で疲れ果て、皺深くなった晩年の母ではなく、わたくしを孕んで幸せそうに微笑む母の姿があったのでございます。ここは母から貰ったミトコンドリアの中であると、わたくしははっきりと認識したのでございます。しかし母の姿は、母の想いはどんどん薄れてゆき、わたくしは空を見上げ止めどなく、先ほどとは異なる涙を流しているのでございます。
5プライムから3プライムへ
5プライムから 一直線に 3プライムへと 伸びてゆく
5プライムから 戸惑いも無く 3プライムへと 淀みなく奇麗に
2重らせん ほどかれて自由を 勝ち取ったつもりで
細く頼りない 1 本の鎖 標 にコピー されてゆく
彼らは いつも僕 の つまずき 期 待して る
繰り返す 無様な努力を 応援するフリで
いつかの未来に掲げた 希望もわずかな光も
少しも僕には 似わないとでも
5プライムから 一直線に 3プライムへと 伸びてゆく
5プライムから 稚拙なデザインで 3プライムへと コンセプト甘く
僕の不完全さを ポリメ ラーゼは どこへ伝えたいのかな
良いモノだけ拾い集めて くだらないモノの中から
君は なんで 僕の 失敗ばかり覚えて る
繊細で孤独な成功は 全てレーテの水底かい
照れ隠しの嘘も あの日の過ちも
少しは 僕らしいと 許せないのかな
5プライムから 一直線に 3プライムへと 伸びてゆく
5プライムから エラーもろとも 3プライムへとアポトーシスも無く
5プライムから 奈落めざし 3プライムへと 堕ちてゆく
5プライムから メモリの上で 3プライムへと 何の救いも無 く
誰の選択でもなく 増殖してゆく
母の ミトコンドリアで 漂い眠れ
進化の 袋小路が 僕なのに
5プライムから 一直線に 3プライムへと 伸びてゆく
5プライムから 戸惑いも無く 3プライムへと 淀みなく奇麗に
2重らせん ほどかれて自由を 勝ち取ったつもりで
細く頼りない 1 本の鎖 標 にコピー されてゆく
彼らは いつも僕 の つまずき 期 待して る
繰り返す 無様な努力を 応援するフリで
いつかの未来に掲げた 希望もわずかな光も
少しも僕には 似わないとでも
5プライムから 一直線に 3プライムへと 伸びてゆく
5プライムから 稚拙なデザインで 3プライムへと コンセプト甘く
僕の不完全さを ポリメ ラーゼは どこへ伝えたいのかな
良いモノだけ拾い集めて くだらないモノの中から
君は なんで 僕の 失敗ばかり覚えて る
繊細で孤独な成功は 全てレーテの水底かい
照れ隠しの嘘も あの日の過ちも
少しは 僕らしいと 許せないのかな
5プライムから 一直線に 3プライムへと 伸びてゆく
5プライムから エラーもろとも 3プライムへとアポトーシスも無く
5プライムから 奈落めざし 3プライムへと 堕ちてゆく
5プライムから メモリの上で 3プライムへと 何の救いも無 く
誰の選択でもなく 増殖してゆく
母の ミトコンドリアで 漂い眠れ
進化の 袋小路が 僕なのに