徳永写真美術研究所 Column


徳永写真美術研究所(TIPA)の日常コラムです。

山口通恵を偲ぶプロジェクト

2011-09-25 | 日常生活のお話


山口通恵を偲ぶプロジェクト


山口通恵氏は30余年にわたり
染織教育に携わった大学教授でした。
私にとっては恩師であると共に
大学に勤務していた頃の上司でもあります。
その関係でプロジェクトに関らせていただく事となりました。



このプロジェクトは
氏が2008年9月10日に58歳で世を去り
3年が経とうとする命日に併せて
作品集の出版と遺作展を開催する内容です。

私が主にお手伝いさせていただいたのは
教育者として、作家としての業績と足跡を
『山口通恵作品集』にまとめる作業でした。
出版準備に関する様子はコチラに記していますので参照下さい。

遺作展については
旧知の間柄の先生方を中心に準備が進められました。
まずは作品を集めるところから。
ご家族に協力いただき作品を借り受け
展示計画を練り
作品の状態に応じて額の変更などの作業を進めました。



額を整備する様子



展示作品を選定する小名木陽一先生



遺作展の搬入日。
展示作業に立ち会ったのは
大学関係者だけではなく
大学に出入りされてた業者の方を含む
故人と関りの深かった縁者が結集しました。



大御所の先生方の指示を受け照明の調整をするTakayuki。



展示図面のないインスタレーション作品については
「きっと、山口さんなら、こうするだろう。こうしたはず。」と
皆で故人を想いながらの展示作業となりました。



色と光の染色 山口通恵を偲ぶ
会期:2011年9月6日(火)-11日(日)
会場:ギャラリー恵風 1階・2階



展示風景を紹介いたします。



1階の展示スペース







インスタレーション「水の塔1994」
絞染による着物や屏風
蝋纈染による平面作品や衣装などの
染色技法作品を展示しました。



2階の展示スペース



光の染色として故人が研究した染色技法
(シアノタイププロセス)による作品を展示しました。
この技法の作品は
国立国際美術館など幾つかの美術館に収蔵されていますので
再び見る事ができるかもしれません。
しかし
個展としての展示は見納めかもしれないと
感慨深く見入りました。

私も時折り
この染色技法を写真技法として使用する事があります。
今回の展示を目に焼きつけ
今後の制作活動や授業の場で活かしたいと思います。

Yoshie

山口通恵を偲ぶプロジェクト
ウェブページ
『山口通恵作品集』は上のウェブページよりお求めいただけます。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
徳永写真美術研究所
大阪・鶴橋にて、写真・写真表現・シルクスクリーンの研究活動をおこなっています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
にほんブログ村 写真ブログへ 人気ブログランキングへ

 


『山口通恵作品集』のご案内

2011-09-24 | 展覧会案内


山口通恵を偲ぶプロジェクトの一環として
『山口通恵作品集』が出版されました。



『山口通恵作品集』
発行所 株式会社染織と生活社
発行日 2011年9月6日
A4判 48頁(カラー40頁/モノクロ8頁)
1200円



“光の染色”と呼ぶ太陽光を利用した染色技法
(シアノタイププロセス)による作品を中心にまとめながらも
絞染や蝋纈染による着物、屏風、衣装作品も含み
山口通恵の生涯を顧みるにふさわしい作品集に仕上がりました。
また、作品制作にまつわるエッセイを随所にとりいれ
故人の人柄が偲ばれる構成となっています。














年譜には作家を知る者にとっては興味深い記載が多くあり
教育者として、作家としての業績と足跡を知ることができます。

なお、本書は
染織教育に共に携わった小名木陽一によるあとがきで締め括られています。

関係者の皆さまには
ぜひともご覧いただきたく思います。

徳永好恵

【ご案内】
『山口通恵作品集』は
山口通恵を偲ぶプロジェクトウェブページよりお求めいただけます。


異郷に誘う写真集ー断片の共鳴

2011-09-20 | 写真に関するお話


「ヨウルのラップ」



不思議な言葉です。
とらえどころがありません。
しかし
聞き流す事ができない何かを含んでいます。
その何かは
写真と合わさることで
更にとらえどころのない度合いが強まります。

いったい
この言葉は何なのか



写真家、成田舞さんによる
写真集のタイトルです。


画像をクリックすると写真集の詳細頁が開きます。

8月に写真集出版に連動した作品展が開催されました。
あいにくアーティストトークには参加する事ができませんでしたが
ちょうど展示会場を訪れた時、成田さんとお会いできました。



ずうずうしくも作品集を持って撮影させていただき



購入した写真集にサインもお願いしました。

この写真集
作品タイトルもさることながら
本の作りがユニークです。

あえて写真に流れを作らず
その流れのない断片の写真群が
小刻みにリズムを生み出しているような・・・

ページをめくる中で本を頻繁にタテヨコ動かす行為を
見る者に強いる構成です。

奥付には装丁ならぬ造本、松本弦人氏とあります。
成田さんの話によると
写真集を作るにあたり
松本氏との様々なやりとりの中で完成したとの事。
ある意味
松本氏とのコラボレート作品なのかもしれません。

そして
最も意表を突く部分は
本のカバーを外した時に表れます。
写真家と造本家による仕掛けが
地味に、渋く、見えてきます。
ぜひ
写真集を手に取り
その魅力を感じていただきたいと思います。



成田舞さんから
昨日、ニュースメールが届きました。
「食べられないレストラン」
9月26日~10月8日
会場:Workroom*A
詳細はコチラでご確認下さい。


Yoshie


<お知らせ>

【TIPA写真塾10月スタート講座 受講生募集中】
写真講座 / 表現研究講座 / シルクスクリーンプリント講座
* 詳細についてはコチラ *

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
徳永写真美術研究所
大阪・鶴橋にて、写真・写真表現・シルクスクリーンの研究活動をおこなっています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
にほんブログ村 写真ブログへ 人気ブログランキングへ

 


シルクスクリーン4色刷り実験に取り組む

2011-09-15 | TIPAに関するお話


夏は終りました。終ったはず?
暑い日々が続きますが暦上では秋です。

今年の夏は様々な事があり
例年と比べ、やや多忙でした。
しかし
忙しいながらも
幾つかの構想を練り
実験、試作に着手できました。
現在
その後の成り行きを楽しみにしています。

その楽しみのひとつ



シルクスクリーンプリントによる
4色刷技法の可能性を探る実験を紹介します。

大学時代
写真画像を布に刷る事を専門として
染織コースに在籍していた経緯より
写真と版画を関係付けた表現を
20数年前からおこなっていました。
しかし
当時はパソコンが無い時代。
カラー写真を4色に色分解するハードルは高く
興味を持ちつつも手を出せない領域でした。

TIPAで講座を開催するにあたり
まず、着手したかった事がこの実験。
現代では
フォトショップという便利な画像ソフトの出現で
手軽に色分解ができるようになりました。

2年前にも
シルク講座を担当する清田もえ子さんと一緒に
4色刷技法に取り組みましたが
今回は
4色を刷り合わせるだけでなく
手刷りだからこそ可能な魅力を発見する目的で
実験を再びおこないました。





この実験ではハガキサイズで版を作成しました。
片手でも刷れる小さなスクリーンがカワイイです。
しかし
小さいながらも1作完成させるために
イエロー
シアン
マゼンダ
ブラック

4種の版を刷り重ねるため
相当の仕事量が必要となります。



上の写真は
イエロー、シアンを刷り、マゼンダ版にはマスキングテープで部分的に目止めして刷りました。
目止めした部分はイエローとシアンのみの重なりのためグリーンとなっています。
この後、ブラックを刷る事で画面に締まりを与えて完成する途中段階の図。


作業途中
刷り重ねる過程で刷り損じが多数発生し
なかなかタイヘンでした。
ところが
刷り損じが発生する度に
ミスを魅力として活かす方法を考える中で
多くの可能性を発見できました。



左上から下に、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラックの1色刷り
その下がイエローとマゼンダの2色刷り
そのまた下はイエローとシアンの2色刷り
2列目以降は様々な実験をおこなった結果です。

この後
更にどのような展開ができるか思案中です。

この4色刷り技法は
秋からスタートする表現研究講座で実験を継続します。
現在、この実験を共にする方を募集しています。
興味がありましたらご一緒しませんか。
経験は不問です。
楽しく実験に参加していただける方をお待ちしています!
詳しくはコチラ


ぜひ・ぜひ


Yoshie


<お知らせ>

【TIPA写真塾10月スタート講座 受講生募集中】
写真講座 / 表現研究講座 / シルクスクリーンプリント講座
* 詳細についてはコチラ *

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
徳永写真美術研究所
大阪・鶴橋にて、写真・写真表現・シルクスクリーンの研究活動をおこなっています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
にほんブログ村 写真ブログへ 人気ブログランキングへ

 


京都国立近代美術館でのワークショップ 2

2011-09-04 | TIPAに関するお話


8月28日
京都国立近代美術館でのワークショップ当日は
昨日の天候がウソのように快晴。

ワークショップは
美術館にて展示中の「視覚の実験室 モホイ=ナジ / イン・モーション」展に関連する
「コラージュ→フォトグラム→??」の実験
というタイトルのワークショップ。

ナジが取り組んだ様々な制作方法の中から
コラージュとフォトグラムに注目した実験です。

一般的に
コラージュとフォトグラムは別技法として位置付けられていますが
今回はこの両技法を併用する制作をおこないます。

TIPAにとって
両技法を併用する講座は初めての試み。
技術的には難しくありませんが
制作途中の思考過程において初めてだな・・・と感じます。

作業工程
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コラージュ

コラージュ画面を透明フィルムに複写

日光写真用の印画紙制作
(今回はサイアノタイププリント技法を使用)

印画紙の上に
コラージュフィルムとフォトグラム用モチーフを配置して
光と影の図像を太陽光で焼付け

水現像・乾燥
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



午前中
美術館の講堂にてコラージュと印画紙制作を済ませ
午後より
屋外にて露光作業に取り組むスケジュールで進めました。



露光作業時は
残暑厳しい陽射が照り付けていました。
しかし
暑いと嘆くことなく太陽に感謝。




この日の露光時間は
強い陽射のため最短の約5分。



太陽光に印画紙を晒すや否や
紙の色が劇的に変化する様子が観察できます。



露光中の様子です。
モチーフの配置や色彩が既に美しい・・・。

露光後は講堂に戻り現像作業をおこないました。



乾燥場所には次々に実験の成果が並びました。

その成果は実に多種多様。
このワークショップに対する様々な姿勢が見受けられます。

この実験的精神で取り組む姿勢こそが
モホイ=ナジ的取り組みではないでしょうか。

美術館のウェブサイトにて
ワークショップの様子を紹介した記事が掲載されました。



8月29日毎日新聞 朝刊 ワークショップの取材記事です。

今回
ひとりの小学生が参加してくれました。
彼は写真の研究をしているとの事。
暗室作業についての技法書を参考に
自宅で実践していると聞きました。
モホイ=ナジ も彼の熱心さに驚くことでしょう。
応援したいですね。



ワークショップから一週間が経過した現在
ちょうど台風が到来。
今週がワークショップでなくてヨカッタと再び胸をなでおろしています。

今年の夏はあと1プログラム
来週の日曜日、9月11日(日)
ピンホール写真の魅力を研究するワークショップ
徳永写真美術研究所にて開催します。
お天気でありますように・・・。
それから
まだ受講枠があります。
ご興味がありましたら是非ご参加下さい。
お待ちしております。

Yoshie

<お知らせ>

【1day ワークショップ 参加者募集中】
 ピンホール写真研究9月11日(日)

【TIPA写真塾10月スタート講座 受講生募集中】
*写真講座  *表現研究講座  *シルクスクリーンプリント講座
* 詳細についてはコチラ * 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
徳永写真美術研究所
大阪・鶴橋にて、写真・写真表現・シルクスクリーンの研究活動をおこなっています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
にほんブログ村 写真ブログへ 人気ブログランキングへ