tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『東ベルリンから来た女』

2013-05-20 20:30:26 | 映画-は行
 う~ん、何か難しかったな。単純に楽しめる映画じゃなかった。でもラストが好きだったので、良かったと思うけど。

 東ベルリンとか、東ドイツとか、東ドイツの田舎とか、そういうところを想像するのが難しかった。分からないことだらけだ。そもそも主人公バルバラの動機がよく分からない。分かるようで、分からない。

 私には、東ドイツのことは分からないのだな、という徒労感が残った。
 これからどうするの?、10年後には東ドイツはなくなるんだった。と思うと、また煙に巻かれたような気持ち。サスペンスとはそういうものなのかもしれない。個人的なことなのか、社会的なことなのか。バルバラが余所者なので、事態が複雑な気がする。
 そんなことは気にするな、とも思うけど。

 クリステイアン・ペッツォルト監督、2012年ドイツ、第62回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)受賞。

 東ベルリンから来た女 [DVD]

『パリ20区、僕たちのクラス』

2013-05-03 21:16:29 | 映画-は行
 舞台は、すべて学校の中。ほぼすべて教室である。

 観ている間、途切れることなく身につまされた。先生に共感したり、生徒に共感したり、自分の中学校時代を思い出したりして忙しい。思春期は、逐一どうふるまってよいのか分からず、分からないままいつの間にか卒業した。そして今だって分からないんだけど。

 
 学校っていう空間は不思議なところだなと思った。特に義務教育は。集まり方がこうやって見ると、面白い。しぶしぶなのか、楽しんでるのか、その両方か。もしくはそういうとこから20億光年くらいぶっ飛んだところで、日々がつつましやかに送られているのかもしれない。

 ただし授業は、つつましやかどころではない。

 フランソワ・ベドゴーさんは、元教師で、原作者で(『教室へ』)、脚本・主演をつとめている。24人の生徒達は、全員演技経験のない、20区に住んでいる本当の中学生ということだ。人種もばらばら、国籍もばらばら、学力もばらばら。

 授業での「自己紹介文」や、面談の様子など、それぞれの生徒に愛着を感じ始めた辺りで、2時間ちょっとの映画が終わった。解決できる問題はないんだし、正解もないんだし。でも時間は過ぎて行く。中庭で、先生も生徒も、サッカーをしていて、ただ流れる放課後に身がふるえる。

 ローラン・カンテ監督、2008年、フランス。第61回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。

パリ20区、僕たちのクラス [DVD]

『ホーリー・モーターズ』

2013-04-11 21:18:17 | 映画-は行
 もう一回観たいな。
 一つ一つの場面は印象的で、えええ~、ほんとに~、という感じの出来事が続いて行くんだけど、全体として、何故あんなハード・ワークを(毎日)こなしているのか、それを知りたい。運転手のおばちゃんもね。疲れすぎです。わざと疲れを見せてるんでしょ。そして。

 主演のドニ・ラヴァンの筋肉が重そうだ。
 ドニ・ラヴァンを見ているだけで面白くて、主演に拠ってるところも大きいように思う。しかし劇場の壁に貼ってあったインタヴューによれば、監督は、主演がどこに住んでいるかも知らないらしい。文通はしてないんだな、と思った。なんてね。

 ラストは、何だったんだろう。単にやりたいだけという解釈しか思いつかない。それとも何か大切なオチなのか?

 もしもう一回観ることがあれば、ラストの5分は観ずに、席を立とう。と言って、やっぱり観ちゃうんだろうけど。レオン・カラックス監督、2012年フランス・ドイツ。


『ハンガー・ゲーム』

2013-04-07 20:52:16 | 映画-は行
 DVDで観た。ゲイリー・ロス監督、2012年、アメリカ。

 一緒に観ていた旦那が、「これは続きがあるな。」と言う。なんと。その通りだ。その名も『ハンガー・ゲーム キャッチング・ファイアー』。2013年12月公開予定。タイトルから想像すると、どうやら火をキャッチするらしい。そのままだ。でもすごいぞ。それ以上分からん。

 主演のジェニファー・ローレンス。注目の若手女優ということだけど、ほんとうに目が惹きつけられる。『ウィンターズ・ボーン』の役柄も、今回のカットニス役も、狩りの上手な姉御役だ。情の深い彼女たち(役)は、守るものをはっきりと持っていた。狂気におちいらずに、正しい執着というのがあるんだとすれば、無口な彼女はぴったりだと思う。喋り始めれば狂気があふれ出てくるような気がして、その匂いもまた心地よい気がする。正しい狂気は行動する。正しい狂気?要するに、ジェニファー・ローレンスの説得力のことだけど。

 2月に公開されたらしい、『世界にひとつのプレイブック』を見逃してしまった。残念。またDVDで観よう。面白いのかな。



 

『白夜』 ブレッソン

2013-04-02 20:30:13 | 映画-は行
 美しい映画だなあ。
 言ってみれば、若い男女の揺れる心が描かれてるわけなんだけど(多分)、それを包み込む夜のパリの街や、真っ黒なセーヌ川、きらきらと宝石のように動く遊覧船、唄う人、橋、信号、グラス、黒いポンチョ、そんなものが美しい。

 やっぱり夜は長い方がいいな。この夜には、どれだけのものが含まれているんだろうと思う。「明日があるから」と思ったりしない。このまま拾って歩けば、すべての瞬間がこの夜につながっている。ロマンティックだ。あと、街は小さい方がいい。「終電逃すとアレだから」と思わないし、「こっから電車で30分」と思ったりもしない。みな適度な距離で、その街の住人であってほしい。それで、その夜の住人であってほしい。
 ロベール・ブレッソン監督、1971年、フランス。

『塀の中のジュリアス・シーザー』

2013-03-27 20:37:09 | 映画-は行
 すごい映画だなあと思った。
 どの部分が現実で、どの部分がフィクションなのか、舞台なのか、刑務所なのか、現在なのか、ローマ帝国なのか、分からなくなってくる。
 パオロ&ビットリオ・タヴィアーニ監督による、2012年・第62回ベルリン国際映画祭金熊賞、受賞作品。

 ローマ郊外にあるレビッビア刑務所で、演劇演習としてシェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』が上演されることになる。囚人たちを集めたオーディションの様子から、刑務所内の様々な場所での、練習風景。役にのめり込み同化していく囚人たち。それを眺める囚人たちもまた、次第に観客そのものとなっていく。そしてついにはローマ帝国の住人となり、目の前にキャシアスを見、ブルータスを見、アントニーの話を聞く。

 喝采、怒声。友情、裏切り、野心、企み、闘い、絶望。シェイクスピアによって書き込まれた様々な感情が、刑務所から舞台から洪水のようにあふれ出て、私たちもそこへ巻き込まれて行くのだ。
 囚人たちが帰るのは、監房だった。一人の囚人が、「演じることを知ってからは、監房は牢獄になった。」と言う。演じることで自由を知ったのだろうか。目の前の人生や、監房の生活はただ一つの現実ではないと、彼の日常は横にずらされたようだ。それを観る私も、関節はずしのような憂き目にあう。2012年、イタリア。