『エルヴィス』、バズ・ラーマン監督、2022年、アメリカ、159分。原題は『Elvis』。
監督のバズ・ラーマンは、ど派手で、ドラマティックで、怪しくて、大きなもの__いわゆるお芝居的なものが好きなのかもしれない。
『ダンシング・ヒーロー』1992年、『ロミオ&ジュリエット』1997年、『ムーラン・ルージュ』2001年、『オーストラリア』2009年、『華麗なるギャツビー』2013年、と来て、『エルヴィス』。
「キング・オブ・ロックンロール」、42歳で亡くなったレジェンダリーなスーパースターを描くのに、その感覚はポップな額縁として悪くないような気はする。
煌めくビジューを散りばめたオープニング。ゴールドで囲まれ、光を反射する真っ赤な`ELVIS’の文字。
絢爛豪華なスクリーンであればあるほど、進行する物語に儚さを感じる方式は、『ロミオ&ジュリエット』と変わらない。
エルヴィス・プレスリーのレコードも持っていないし、テレビ番組やWikipedia以上に彼の事を知ってはいないけど、愛の迷子として描かれるスターは最後まで子供のようだった。まるで昔むかしに見た、ぼんやりとした遠い夢。
もう一人、脚本家のようにストーリーを操る豪腕、マネージャーの「トム・パーカー大佐」がいる。
演じるのは、トム・ハンクス。
リアリティを一手に引き受けたようなこの悪役が、心地よいうたた寝から起こす目覚まし時計の役割をしてくれる。
有り難いかどうかは、観る人次第というところかな。
↑エルヴィスを演じたオースティン・バトラーは、クランクアップの翌日、倒れて体が動かなくなってしまったそう。
ライブ・シーンも沢山あり。オースティンの振付は、『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディを演じたラミ・マレックの振付と同じ人らしいです。