tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『映画 立候補』

2013-07-21 21:02:52 | 映画-あ行
 今日は、参院選投票日。おととい期日前投票をし、だからという分けではないけど、その後この映画を観る。

 泡沫候補と言われる、選挙の色物候補者たち。2012年大阪市長選挙時のマック赤坂に密着しつつ、他の立候補者たちを追いかけ、手術のため立候補を断念した落選15回経験者の羽柴秀吉、活動家外山恒一などにインタヴュー。

 300万円の供託金を出し、没収されるというのに(一定数の票が入らなければ没収される)、それでもなぜ立候補するのか。

 結局よく分からなかった。説明できるのなら、彼らはとっくにしているのかも。世界の見え方が、世界のとらえ方が、私や大多数の人とは違うんだろうなという気がうっすらとした。彼らは堂々としてるし、なにより正攻法だ、とは言える。やり過ぎな感は否めないにしても。
 テレビの特番のような形で、特番では出来なそうなことを、特番のようなものとして作った映画、という感じだった。面白かった。

 ひとり、外山恒一氏が論理的で、常識人なのだった。

 藤岡利充監督、2012年、日本。


     

『オブリビオン』

2013-06-04 22:39:38 | 映画-あ行

 oblivionとは、忘却とか、忘れられている状態という意味らしいです。
 そうなんだ。

 迫力あった。

 ジュリア役のオルガ・キュリレンコのインタヴューによると、CGが使われているのは、バトルシップのチェイスシーンだけらしい。見てて何となく分かるので、懐かしい感じがした。
 チェイスシーンは、スター・ウォーズにも似ている。空と砂漠が広がっていて、生活感のない空中住居(?)には、残された監視員、トム・クルーズとその妻の通信士が暮らしている。二人は「あなた、行ってらっしゃい」、という感じとはどうも違うのだけれど、この妻だって、心を抜かれた人形ではないようなのだ。ほかの人類と一緒にタイタンへ行きたいという願いが、ただ彼女を動かしている。ただしトム君演ずるジャックと自分が、運命共同体だということに、気づいてなかったようだけど。
 SF映画で描かれる未来は色々あるけど、こういう景色は結構好きだ。シンプルで、記憶の空白が表されているんだろうか。
 ここまでが前半。後半になると少しスピード感がアップして、はらはらどきどき。

 個人的に今回、トム・クルーズが一番かっこよかった瞬間は、コックピットの真横に来た敵を、銃で撃ち落とすところ。 

 隣にがくがくしている妻を乗せ、ビュンビュン攻撃してくる敵に撃たれて、今にも墜落しそうなバトルシップ。がたがた揺れる中でドアも吹き飛び、そこへ敵が追いついて併走する形に。絶対絶命!撃たれる!と、そんな状況で、ですよ。「あなた~」と叫ぶ(違ったかも)妻を横に、体を上下に揺られながら、ふっと横を向き、左手の上に銃を持った右手。狙いを定め、一発で仕留める。顔色一つ変えない。
 決して自信満々のキャラクターではないし、どちらかと言えば、他人のいないところで淡々と自分の仕事をこなすマイペース風だけど、いきなりプロの冷静さを見せるのであった。非人間的とも思える静かな顔は、トム様、美しい。ぱちぱち。揺さぶられ続ける、今回の受け身の役柄においてはわりと異例で、やっぱりこういう瞬間もなくっちゃね。

 最後の方で、ちょっと筋が分からなくなったけども。(個人的にSFでありがち)

 ジョセフ・コジンスキー監督、2013年、アメリカ。

  

『愛、アムール』

2013-05-13 20:17:10 | 映画-あ行
 ミヒャエル・ハネケ監督が、『白いリボン』に続き、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した作品。2作品連続。その他アカデミー賞外国語賞などなど。


 やっぱり、悲しい気持ちになってしまうけど。

 一言で言えば、老・老・在宅介護のお話。ということだけれど、三面記事や、テレビでは絶対に描かれないことだけを、描いている。とりこぼされた(重要でないとみなされた)ことだけで、この映画は作られているように見える。前作の『白いリボン』でも言えるけれど、ハネケ監督は、三面記事的な出来事を、三面記事的でなく描き上げる才能があるみたいだ。
 とりこぼされること。それはもしかしたら個人のわがままに関することなのかな。それぞれのエゴが明確にその形を成している時には、人生かくも長くて豊かだと感じられるし、形を整え合うことに美しさも感じる。

 イザベル・ユペール演ずる娘や介護人の言葉に、とっさに反発を覚えた。その他の誰の言葉にも、「知らないのに」となぜか私が反発する。それも不思議だった。自分だって語られないのだから知らないし、自分が娘だったら、ほぼ同じ反応をするだろうと思う。

 家に迷い込んだ鳩を、つかまえて外へ追い払う。そしてその事を手紙に書いている。「信じないかもしれないけれど、」という前置きで。

 二度もそんなことがあっただなんて、信じられないでしょう、でもつかまえるのは、そんなに難しくはなかったよ。
 誰に宛てた手紙か分からないけど、音楽家の夫がそう書いている時、彼は満足感とか達成感の中にいるように見えた。

 2012年、フランス・ドイツ・オーストリア。

 

『アルバート氏の人生』

2013-03-23 21:34:36 | 映画-あ行
 製作、主演をつとめた女優さんのグレン・クローズのインタヴューを読んだら、「究極のところ、これはサバイバルについて、そしてアイデンティティについての物語なの。」と仰っている。

 出演者(たいてい主演)のインタヴューをついつい読んでしまうんだけど、読むと自分の思っていたことと違うことを言っていることが多くて、「ハズレ」なのか?と思ってしまう。
 設定の奇抜さを横に置けば、地味な映画だと思う。ただその地味さが、深まり広がりを持つのは、アルバート氏の夢が次第に現実を離れ、一人歩きしていくところのように思う。哀れでもあるけれど、ラストがあるからいいじゃないか!アルバート氏の夢、妄想、人生は、現実を動かした。
 サバイバルと言うなら、アルバート氏は見事にサバイバルしたように思えば、後味のよい映画だった。2011年、アイルランドの映画。ロドリゴ・ガルシア監督。