いじめに関して次のような記事が掲載されていたので紹介しよう。
いじめっ子は脳が原因…更生は無理?
3歳の子どもでも他の子どもに暴力ばかりふるう「問題児」がいます。
一般にはその子の「個性」として扱われていると思いますが、どうもその「個性」は病気とまでは言えないまでも、脳の働きが通常とは異なることが原因のようです。
もしそうであれば、暴力的な子どもに対して説教しても、罰を与えても、少年院に入れても、更生は不可能ということになります。今後は、脳の働きを検査して「精神疾患」として治療していくという方法に変えなければいけないのではないでしょうか。
科学論文の記事です。
「ナショナルジオグラフィックニュース」より
人の災難を喜ぶいじめっ子の脳
John Roach
for National Geographic News
November 7, 2008
脳のfMRIスキャンを使用した最新の研究によると、すぐにけんかを始める、うそをつく、物を壊してはしゃぐ、そんないじめっ子の脳には、他人の苦しみを見ると喜びを感じる回路が備わっているかもしれないという。
今回の最新研究は、「Biological Psychology」誌の最新号に掲載される。
研究チームの一員でシカゴ大学の心理学者ベンジャミン・レイヒー氏は、「この発見は予想外だった」と話す。
研究チームでは、いじめっ子は他人の苦痛を目撃したときになんの反応も見せないだろうと予想していた。
なぜなら、彼らは冷酷で、感情を高ぶらせることがないために、例えば良心の呵責(かしゃく)を感じることなくおやつ代を盗むことができると考えていたからだ。
レイヒー氏は、「人が他人の苦痛を目にすると、自身が苦痛を経験したときと同じ脳内領域が光ることはこれまでの研究で判明していた。
感情移入を示す反応だ」と話す。今回の最新研究では、いじめっ子の脳の場合、該当領域がさらに活発に活動を行っていることが判明した。
しかし、いじめっ子が示す感情移入反応は、扁桃体(へんとうたい)と腹側線条体(ふくそくせんじょうたい)の活動によってゆがめられたものだと思われる。
扁桃体や腹側線条体は脳内領域の中で報酬や喜びに関係すると考えられている部位である。
「つまり、いじめっ子は人の苦痛を見るのが好きだと考えられる。この考えが正しい場合、彼らは弱い者いじめをして他人を攻撃するたびに心理的な報酬を受け取り、反応の強化が進んでいることになる」とレイヒー氏は話す。
今回の最新研究では、うそや窃盗、公共物破損、弱い者いじめといった経歴を持つ16~18歳の少年8人の脳活動を検査した。8人の少年は臨床分野で攻撃型行為障害(aggressive conduct disorder)と呼ばれる症状を持っており、そのような経歴を持たない同年代の少年グループとの比較を通じて調査が行われた。
検査では、苦痛の状況を描く短いビデオ映像数本をいじめっ子グループに見せた。
映像には、つま先に金づちが落ちるシーンなど不慮の事故を描くものと、ピアノの演奏中にふたを閉め演奏者の指を挟むシーンなど意図的な行為を描くものが含まれていた。
脳のfMRIスキャンを行った結果、喜びに関係する脳内領域と、苦痛に関係する脳内領域の活動が判明し、さらに、感情の統制に関係する脳内のある部位が、いじめっ子の脳では活動していないことが明らかになった。
言い換えると、いじめっ子は、例えば昼食の列に並んでいるときに子どもが誤ってぶつかってきた場合などに、自分を抑制するメカニズムを欠いていることになる。
「自己制御を欠いている点を処置する、あるいは埋め合わせる治療法を開発する必要があるだろう。いじめっ子が自己制御を欠いているのは事実だと考えているし、他人を傷付けるたびに心理的な報酬を受け取り、反応の強化が進む可能性がある」とレイヒー氏は語る。
クレムゾン大学家族・近隣生活研究所でオルヴェウスいじめ防止プログラムを担当するマレーネ・スナイダー氏は次のように話す。
「今回のテーマについて脳撮像による科学的調査で次第にさまざまなことが発見されるのは驚くことではない。脳がどのように機能しているのか、その解明は始まったばかりなのだ。脳の仕組みの理解が進めば、有意義な関与方法を見いだすことができるようになるだろう」。
ナショナルジオグラフィックニュース
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=8967503&expand
このことが真実とするならば、何らかの治療に近いプログラムが必要であり、早期発見が必要と考えられる。
また、過去に子どもの発達障がいについて詳しい医師から、同じように発見は早ければ早いほどいいと聞いたことがある。
ただ、当事者同士では限界があり、地域社会システムとして構築する必要があるともいわれていた。
そろそろ本気で、社会全体として「いじめ」に対して取り組むときがきていると思う。