ここのところ時間がなかったから―――といっても,時間があってもなかなか読み進めなかった「浅野美子作品集 3」をようやく読破しました.
全83ページなのに,もっと早く読まなきゃなぁ.
読み始めが2007年5月3日なので,ほぼ2年かけてしまった.
プレゼントしてくれた先生に不義理を続けておりましたが,それでもようやくすっきりしました.
私は読書家というわけでもなく,しかも小説を全然読まない人間だったので,なかなか最初は抵抗がありました.
比較できるものがないので深いことは言えませんが,それでも2年前と比べると小説の楽しみ方がわかるようになってきた気がします.
浅野美子さんの作品は,主人公の日常や感性にある種の引かれたラインがあり,そこに気づくとその周波に乗れる感じがします.
しかし堀口誠氏の解説にもあるように,一見穏やかながらも「切れ味の鋭いナイフ」がつむじ風に乗って飛んでくるところがあり,読み手に緊張感を与えるという特徴があります.
そして,これまた堀口誠氏の解説からの引用になってしまいますが,「それでいて自己中かというと,広域な知識と高度な客観性がブレーキの役を果たしていて」読み手に不公平感を感じさせません.
このあたりが私には非常に心地よく,太宰治なんかはそれができていないままナルシズムに走るので,私なんかは読んでいるとそのうざこさにイライラを通り越して怒りだしてしまいます.
そういう意味では私の小説アレルギーを20年ぶりに取ってくれた貴重な本をプレゼントしてもらえたことに,心から感謝します.
浅野美子さんは鈴鹿の作家で,2005年3月19日に48歳の若さで亡くなられました.
父の浅野弥衛氏は抽象画家で,名古屋市美術館で多数作品を観ることができます.
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