金魚cafe

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冷血上巻下巻

2013-02-06 23:27:14 | 読んだ本
高村薫著 毎日新聞社出版

サンデー毎日2010年4月から2011年10月まで連載されていたものを単行本にしたものです。

前にも書きましたがとにかく一つの事件の最初から最後つまり事件発生から逮捕そして取り調べ裁判、判決までをこと細かく書かれています。

実際にこれとよく似た事件があってこれをもとに描いたのかと思いました。

設定はよく似ているけれど中身は違ってましたが、被害者は中流の上、いや世間ではセレブと言われる一家かもしれません。

幸せを絵にかいたような一家。

事件の起こるまでの被害者のことは13歳の少女の目からしかわかりません。

何事も起こらなければ家族で仲良くクリスマスイブを家族でディズニーランドで過ごしていたはずだったのです。

そして犯人は2人組なのですが携帯サイトで知り合っただけでこんな事件を起こしてしまった。

そこからは作者の感情が入らず、実際に起こった事件のように警察がどのように捜査して犯人を突き止めたかが淡々と描かれていてドキュメントなのかと思ってしまいます。

唯一これは小説なのだと思わせるのがマークスの山からずっとシリーズになっている合田雄一郎が事件を犯人をどのように観ていたかというところだけです。

これだけのことを書くのに必要な資料は膨大な数になったと思います。

綿密に淡々とそして端正な文章、これが高村薫さんなのだと久々に新作を読むとその世界にどっぷりとはまります。

マークスの山が30代だった合田ももう40代、その間に別れた奥さんとの死別やいろんなことがあり最初の印象と変わってきたような気がしたのですが、いや、根っこはやはり変わらず合田なんだと思いました。

犯人を逮捕して自白をさせてそれが正しいか検証して、調書を作成して検察に犯人を送ってしまえばそこで終わりで、次の事件が待っているわけで一つの事件だけにかかわっていられないのですが、なぜか合田は犯人たちが気になるようで、犯人たちの何が合田の気になったのか、どうしたかったのかが難解すぎて私にはわかりませんでした。

今は相手のことが憎いからとか、お金が欲しかったからとわかるような理由で起こる犯罪ではなくなって、警察が世間について行けなくなってるんじゃないかと思ってしまいます。

読んでる途中で合田雄一郎の今後どうするのか気になることが書いてあるところがあったのですが、そこはサラッと流して書いてしまってるので次回それが出てくるのかどうか興味があります。

高村先生が次回書かれるのはいつになるんでしょう。