葬儀のこれから⑲より
家の者が亡くなればその家の跡撮りが喪主となって葬儀を開き、香典はその家(喪主)がいただくことになる。例えば母方の祖父が亡くなったといって、自立していない孫が香典を出すことはない。香典を包むようになるのは、例えば分家した場合であって、長子相続する場合は、その家の戸主として香典を包むことになる。ようは家族それぞれが香典を包むのではなく、家の代表として包む。香典に限らず、地域社会の付き合いは家単位で行われることがほとんどだ。したがって、よほど親しくない以上、同じ屋根の下に住む者が香典をそれぞれで包むことはない(と思っているがそうではない地域、家もあるのかもしれないが)。何を述べたいのかといえば、別家したとたんにつき合いが始まる相続外の兄弟は、実は義理が嵩むというわけだ。どの時点で後を継ぎ、代替わりするかもあるが、相続者は親の付き合いを引き継がなくてはならないが、そのいっぽうで代替わりするまで義理に直接関わることはない。親の義理はともかくとして、相続者も別家した者も父が亡くなったといえば同じように叔父・叔母たちとの義理をしていかなくてはならない。義理の発生である。
実は別家した兄弟の義理の負担が大きいとして、それを補う意味で「枝義理」という風習がある。『長野県上伊那誌民俗篇上』「葬制」の中部の項に「枝義理は親や兄弟、叔父叔母や、しゅうと弔いの人に香奠をつかうのである。それらの人達は香奠も多くかかり費も多いので、これを助けるという意味で始まったともいう」とある。ふつうの場合、香典は喪主にあてたものだが、喪主ではなく喪主の兄弟や亡くなった人の兄弟あてに行うものをいう。ようは喪主とは親しくないが、亡くなった人と近しい方と親しかった場合、その近しい人宛に香典を包むのである。この「枝義理」というものを検索すると引き出される事例はほんのわずか。ようは枝義理の風習は上伊那に特徴的なものなのかもしれない。
例えばこんな質問がウェブ上にある。
女房の両親が亡くなった時のことです。それぞれ長男が喪主で葬儀が営まれ滞りなく終わりましたが、そのあとで、次男が集まった香典の中から自分に関係のある会社関係とか個人的なものを自分のもだと言って持ち帰りました。二度までも!長男も拒絶はしたのですが、兄弟で金銭のことでもめたくなということで黙認してしまったようです。葬式費用、通夜の費用お返しなどすべて長男が負担してます。こんなことってあります?常識のレベルが違うのでしょうか?現代風な考えかたのでしょうか?誰か教えてください。
というものである。回答として適切なものは次ぎのものだろう。
長男が葬式の費用を全額負担したんですか?ご両親は葬式費用などは残さなかったんですか?遺産などはゼロだったのでしょうか?そこのところがはっきりしないとなんともいえませんが。
二男の方は今までそれなりに出していたので香典がきました。これからも頂いた分のお付き合いは二男のところから出て行きます。それを丸々長男が受け取るとしたらこれからは長男がそれなりに出すようになります。それが付き合いと言うものです。長男はその気持ちがありますか?
長男が全て負担したとはあなた方は全然出さなかったんですか?そこの説明がなくてそれだけを取り上げても非難できないとおもいますが、、、。
ようは葬儀代は誰が負担するのかということ、そして兄弟の中でそうした関係がどう整理されているかが基本となる。その上で次のような意見を聞いてもらいたい。
私の経験では、こちらではそういうことはよくあります。
葬儀後、それぞれの親戚が香典帳を確認し、これは私の関係だといって、その香典を袋さら持っていきます。もちろん、お返しの品物代(1000円程度のお茶が多いです)は払いますが、葬儀代までは負担しません。それは喪主の役目だからでしょう。
枝義理といいまして、わざわざ香典袋の右上に何々様と、書いてくる方もいます。
誰からいくら頂いたと記入する香典帳からは、その人たちはペンで消され、持っていった者たちが、その後の義理をそれぞれがすることになります。
つまり、直接関係のない人たちへの義理を、喪主がこの先ずっと続けていかなくてもよいのです。
地域により風習が違うかもしれませんが、私の地域ではそれが普通なので、ひと言コメントさせていただきました。
ここに初めて「枝義理」という言葉が登場する。
こういう意見もある。
今回は旦那の姉が亡くなったので子分などは気を使って枝義理をしてくれました。しかし私の知り合いではあるものの、私の旦那ももちろん亡くなった義姉も知らない人が昨日家に枝義理を届けてくれたのです。葬式当日ならばその場で香典返しも出来るのですが改めて家に持ってこられたらまた香典返しをもってその家を訪ねなくてはいけません。「ご丁寧にしてくれなくても・・」と言ったところ、「先日父の時にいただいたから・・・」と言うのです。彼女の実のお父さんが一ヶ月ほど前に亡くなられたので、香典を持って葬式に行きましたが立場が全然違うと思うのです。
ようは親戚筋ならわかるが、現代の交友は広範なため、喪主にとっては無縁な方から香典をいただくことも多い。最たるものは会社関係であって、喪主の兄弟の会社関係の方からいただいた香典に対しての葬儀の場での香典返しはともかくとして、その後のつきあいは喪主ではなくその兄弟が引き継いでいくことになる。とすれば質問の事例はけしておかしな話ではないのである。
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