もう何年も、この時を待っていた。
席に座っても、何かまだ信じられない気持ち。
本当に聞けるんだ・・・
やがてメンバーが出てきて、こちらはいつになく、ちょっと緊張。
そして最後尾から・・・・・・
入ってきた姿をみて、思わず涙ぐみそうになる。大袈裟な、とは思うものの、それほど待ち望んでいた本物が、目の前にいる。それも4mと離れていないところに。
かーさんの一番のお気に入りのギドン・クレーメルと、彼の率いるクレメラータ・バルティカ。
席は前から2列目の真ん中左より。
あれほど直接聞きたかったクレーメルが、すぐそばにいる。
迎える拍手の様子で、熱狂的ファンがいることが分かる。
数年前の空気が張り詰めたようなリサイタルの再演なるか・・・
クレーメルがスタンバイすると、ふっと会場に沈黙が下りる。
マーラー:交響曲第10番「アダージョ」
静かに始まる曲。やがてクレーメルの最初の音が提示される。
やはり研ぎ澄まされ、磨き上げられた音が、丁寧に差し出される心地よさ。
ああ、やっぱり変わっていない。
乾いた大地に甘露がしみこむように、心の底にしみわたる。
いくらでも いくらでも、体が音を吸い取っていく。
そして心の底が潤されると、初めて心が目覚めて演奏全体を眺め回すゆとりが出る。
ああ、若い人たちなのに、なんて力強く一つの音になれるのだろう。
そこにはまさに、大編成のオーケストラの力量を持つ、小さな集団があった。
1曲目は、そうして静かに静かに、余韻を残して終わった。
クレーメルがフッと気を緩め、弓を下ろすまで、空間には気持ちのよい静寂があった。
フライングブラヴォーなどのない聴衆の、なんとうれしいこと!!
ショスターコーヴィチ:ヴァイオリン・ソナタ 作品134
日本初演だそうなこの曲は、現代音楽らしい不安定とも不安とも思える音の流れを、フッとどこかのパートが聞きやすく快い旋律で受け止め、全体がしっかりした大地に柔らかく着地する。そんなイメージのくり返し。特にチェロのパートリーダー(女性)がすばらしく、艶のある情愛満ちた音を出していた。
一つ一つの旋律に、心が漂い迷っては、静かに導かれて大地に下ろされる。そんな曲。
カンチェリ:リトル・ダネリアーダ
日本初演。グルジアの映画監督ダネリアへのオマージュとして、クレーメルのために作曲されたそうな、大変面白い趣向の曲。
時として最強奏される音は、何か重労働のような。それにメンバー全員のため息やチュクチャクといった声のないつぶやき。
会場から笑いが起こる。クレーメルもニヤッ(^^) 楽しそうですね。
聞くうちに脳裏に浮かぶ情景は、どんよりと雨の降る、ヨーロッパのどこかの古いうらびれた街中。
涙顔に化粧したピエロが、心の中で嘆きながら、道化ている。そんな感じ。
ちなみに公演後にパンフレットをみると、作曲者のカンチェリ自身のコメントとして
「(前略)私はこの作品で、私の音楽の中には『涙が流れている』ばかりではなく、時として私は微笑むことも出来るのだということを示そうと努力したからである。」
どうやら私の想像力は、間違っていなかったらしい。
それどころか、涙顔のクラウンはドンピシャ?
ピアソラ:ブエノアイレスの四季
クレーメルが、ピアソラのもともとの作品にヴィヴァルディの四季を絡めて、有名にしてしまった曲。
クラシックのコンサートと言いながら、気分はすっかりアルゼンチンタンゴ!♪
思わず体が踊りだしたくなる。(って、あいにくアルゼンチンは踊れませんが)
会場中が、ノリノリになってくるのが分かる。
思わず「アルフレッド・ハウゼか!」っというツッコミを入れたくなるほど。
情熱とセンチメンタル。思うしか出来ない、遠くの恋人を想って、想って・・・
ピアソラ:フーガ・イ・ミステリオ(アンコール)
ショスタコービッチで使われたグロッケンシュピール(鉄琴)が前面に出て、メンバーをバックにクレーメルとの協奏。力強く、時に流麗に、清らかに、なんとも見事な演奏。
グロッケンシュピールが、これほどセクシーになれるとは思わなかった。
表立って出てくる事は少ない楽器だけに、とてもラッキーな演奏。
本当にこのメンバーは若い人ばかりなのに、一人ひとりの力量がすばらしいと感じる。
最強奏の時に生まれる一体感。
それにしてもこの人たちは、本当によくアイコンタクトをとっている。
プルト同士、他のパート同士、始終アイコンタクトをとっている。
時として、微笑み交わしながら。時として、ジェスチャーつきで。
また、クレーメルを良く見ている。
それが、一糸乱れず一つの音になりきるポイントだろう。
ブラッヴォー!!です。
クレーメルの超絶技巧も健在で、愛器(ニコラ・アマティ:1641年製)の音も情感と奥深い艶と温かみがあって、本当に堪能しました。
体中 クレーメルの音に浸って、口を利きたくないままの家路。
いつまでも体が満たされた充実感でいます。
これはめったにないことで、本当に良い演奏に感動した証。
本当に幸せなひと時でした。
プロの批評家はなんと言うかわかりませんが、ファンとしては十分に「ご馳走様!!」です(^^)
ちなみに、今日の演奏会はNHKのカメラが入っていました。
とてもうれしい。放送を録画できますもの♪
放映予定日は「8月3日 22:25~ NHK教育テレビ 芸術劇場」です。
席に座っても、何かまだ信じられない気持ち。
本当に聞けるんだ・・・
やがてメンバーが出てきて、こちらはいつになく、ちょっと緊張。
そして最後尾から・・・・・・
入ってきた姿をみて、思わず涙ぐみそうになる。大袈裟な、とは思うものの、それほど待ち望んでいた本物が、目の前にいる。それも4mと離れていないところに。
かーさんの一番のお気に入りのギドン・クレーメルと、彼の率いるクレメラータ・バルティカ。
席は前から2列目の真ん中左より。
あれほど直接聞きたかったクレーメルが、すぐそばにいる。
迎える拍手の様子で、熱狂的ファンがいることが分かる。
数年前の空気が張り詰めたようなリサイタルの再演なるか・・・
クレーメルがスタンバイすると、ふっと会場に沈黙が下りる。
マーラー:交響曲第10番「アダージョ」
静かに始まる曲。やがてクレーメルの最初の音が提示される。
やはり研ぎ澄まされ、磨き上げられた音が、丁寧に差し出される心地よさ。
ああ、やっぱり変わっていない。
乾いた大地に甘露がしみこむように、心の底にしみわたる。
いくらでも いくらでも、体が音を吸い取っていく。
そして心の底が潤されると、初めて心が目覚めて演奏全体を眺め回すゆとりが出る。
ああ、若い人たちなのに、なんて力強く一つの音になれるのだろう。
そこにはまさに、大編成のオーケストラの力量を持つ、小さな集団があった。
1曲目は、そうして静かに静かに、余韻を残して終わった。
クレーメルがフッと気を緩め、弓を下ろすまで、空間には気持ちのよい静寂があった。
フライングブラヴォーなどのない聴衆の、なんとうれしいこと!!
ショスターコーヴィチ:ヴァイオリン・ソナタ 作品134
日本初演だそうなこの曲は、現代音楽らしい不安定とも不安とも思える音の流れを、フッとどこかのパートが聞きやすく快い旋律で受け止め、全体がしっかりした大地に柔らかく着地する。そんなイメージのくり返し。特にチェロのパートリーダー(女性)がすばらしく、艶のある情愛満ちた音を出していた。
一つ一つの旋律に、心が漂い迷っては、静かに導かれて大地に下ろされる。そんな曲。
カンチェリ:リトル・ダネリアーダ
日本初演。グルジアの映画監督ダネリアへのオマージュとして、クレーメルのために作曲されたそうな、大変面白い趣向の曲。
時として最強奏される音は、何か重労働のような。それにメンバー全員のため息やチュクチャクといった声のないつぶやき。
会場から笑いが起こる。クレーメルもニヤッ(^^) 楽しそうですね。
聞くうちに脳裏に浮かぶ情景は、どんよりと雨の降る、ヨーロッパのどこかの古いうらびれた街中。
涙顔に化粧したピエロが、心の中で嘆きながら、道化ている。そんな感じ。
ちなみに公演後にパンフレットをみると、作曲者のカンチェリ自身のコメントとして
「(前略)私はこの作品で、私の音楽の中には『涙が流れている』ばかりではなく、時として私は微笑むことも出来るのだということを示そうと努力したからである。」
どうやら私の想像力は、間違っていなかったらしい。
それどころか、涙顔のクラウンはドンピシャ?
ピアソラ:ブエノアイレスの四季
クレーメルが、ピアソラのもともとの作品にヴィヴァルディの四季を絡めて、有名にしてしまった曲。
クラシックのコンサートと言いながら、気分はすっかりアルゼンチンタンゴ!♪
思わず体が踊りだしたくなる。(って、あいにくアルゼンチンは踊れませんが)
会場中が、ノリノリになってくるのが分かる。
思わず「アルフレッド・ハウゼか!」っというツッコミを入れたくなるほど。
情熱とセンチメンタル。思うしか出来ない、遠くの恋人を想って、想って・・・
ピアソラ:フーガ・イ・ミステリオ(アンコール)
ショスタコービッチで使われたグロッケンシュピール(鉄琴)が前面に出て、メンバーをバックにクレーメルとの協奏。力強く、時に流麗に、清らかに、なんとも見事な演奏。
グロッケンシュピールが、これほどセクシーになれるとは思わなかった。
表立って出てくる事は少ない楽器だけに、とてもラッキーな演奏。
本当にこのメンバーは若い人ばかりなのに、一人ひとりの力量がすばらしいと感じる。
最強奏の時に生まれる一体感。
それにしてもこの人たちは、本当によくアイコンタクトをとっている。
プルト同士、他のパート同士、始終アイコンタクトをとっている。
時として、微笑み交わしながら。時として、ジェスチャーつきで。
また、クレーメルを良く見ている。
それが、一糸乱れず一つの音になりきるポイントだろう。
ブラッヴォー!!です。
クレーメルの超絶技巧も健在で、愛器(ニコラ・アマティ:1641年製)の音も情感と奥深い艶と温かみがあって、本当に堪能しました。
体中 クレーメルの音に浸って、口を利きたくないままの家路。
いつまでも体が満たされた充実感でいます。
これはめったにないことで、本当に良い演奏に感動した証。
本当に幸せなひと時でした。
プロの批評家はなんと言うかわかりませんが、ファンとしては十分に「ご馳走様!!」です(^^)
ちなみに、今日の演奏会はNHKのカメラが入っていました。
とてもうれしい。放送を録画できますもの♪
放映予定日は「8月3日 22:25~ NHK教育テレビ 芸術劇場」です。
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