あれが青森の灯だ
やがて午前零時と思われる頃、前方より数知れぬ人影や提灯が横隊を、
なし前進してくるのを微かに認めた。
一同奇異を感じたが、隊長の元気な「救援が来た。」との言に躍り上るような
気持ちでしばらく待った。
期せずして吾々の足がその方向に進路を変えたのに大尉は何を思ったか
「同じ方向に進むべからず」といった。
早くも提灯の列は縦隊と変り、目前に迫って来た。
止むなく避けようとしたが、隊列は直進して来る。
不思議なことに今まさに突き当たると思ったときに右に折れ、
忽然として灯火が消え吾々の囲は又元の暗闇、
一同唯唖然として立ちすくんでしまった。
狐狸の仕業か? 亡霊か? 心の錯乱か?
不思議な現象に直面して、心は惑い方向を失いさまよう中に微かな汽船の
ドラの音に正常な意識をとり戻した。
その方向は遥に右方から聞こえる。
眼をこらし全身の神経を集中してその方向を見ると、
電灯らしい光が点々と見えてくるではないか。
青森であるとを直感し、初めて夢から醒めた心地であった。
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