野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

1998年エコひょうご(財)ひょうご環境創造協会発行に紹介される

2018-09-04 | 野生生物を調査研究する会歴史

まだ任意団体であったころの活動を紹介してもらいました。
武庫川流域の環境保全を中心に活動していたころの紹介です。
その後、本文にもあるように猪名川、揖保川、大和川へと活動は広がっていきます

1998年 エコひょうご 夏号((財)ひょうご環境創造協会発行)

武庫川流域から広がる水辺の保全

出発点は武庫川でした。阪神間を代表する河川も、時代とともに流域の自然環境が変化。
その移り変わりを記録に残すため、生息状況を総合的、長期的に調査しようと平成4年、7人でスタートしました。
活動の三本柱は調査、情報の的確な処理、人づくりです。
調査はコードラード(方形区調査)とライントランセクト(線状調査)という二つの方法を組み合わせてより精度の高いデータを収集。
それらを基に生物の蘇生を図る一方、蓄積した情報は市民講座など環境教育の場でフィードバックしています。
また、公的機関などの活動にも参画し、支援を惜しみません。
「私たちは武庫川に育てられました。今後は、そのノウハウをいろいろな河川流域で生かしていきたいと思います」と、会長の今西将行さん。
武庫川での丹念な調査は冊子「生きている武庫川」にまとめ、流域の小中学校に寄贈。野外学習
現在では会員も33人に増え、調査、データ処理など役割分担も明確です。
さらにユニークなのが「人材バンク方式」ともいえる活動方法。
各会員が取り組みたい事業を提案し、認められれば会員外からも人を集めてグループで動きます。
また、丹波地域で展開されている「メダカのいる里づくり運動」など、他団体とネットワークを図ることも。
実際に会の活動に関わっている人は約180人にもなるそうです。
 「五年以上かかって33人の意志統一ができました。会員が核となり、周りにいる人々も一緒に楽しい雰囲気の中で環境保全に取り組んでいきたいですね」
 昭和40年代の里山を残そうという「S40里山」事業も始まり、活動内容はますます充実しています。


1997年林野庁長官賞受賞における発表実践発表

2018-09-04 | 野生生物を調査研究する会歴史

林野庁長官賞を受賞されたときの発表レジメ

1997年 第31回全国野生生物保護実績発表大会

実践発表1 97.3のレジメ

林野庁長官賞 
野生生物を調査研究する会

水辺環境の創造活動への展開
 これからの自然環境保全対策は、環境政策として「望ましい環境の保全」「快適な環境の創造」をめざした各種の施策が、政策全般にわたり横断的な取り組みとして求められている。
 私たちは、武庫川をフィールドとして、武庫川流域に残る多様な水辺の自然の紹介・展示、そして流域の小・中学校における環境教育など、「水辺環境の創造活動」という事業を行政と教育、そして私たちボランティア団体で企画・実施してきた。
 私たちは、これらの事業を通じて、行政、教育とボランティア団体がどのようにかかわれば、「望ましい環境の保全」や「快適な環境の創造」に取り組むことができるかを学んだ。
それは、基本的な機能企画・調整・評価・連携、専門的・技術的機能、情報の収集・管理・分析・提供の機能を行政、教育とボランティア団体がそれぞれの分野の特徴を生かして取り組むことである。
さらに重要なことは、それらの活動をシステム化することである。

1.はじめに
武庫川は、篠山町の小さな農業用水路を源流に丹波地域、北摂地域の阪神地域の6市2町を流域にもち大阪湾にそそぐ全長約65kmの2級河川である。
昔から水上交通の手段、農業用水、水道用水として生活に密接にかかわってきた。
 近年、三田市は、ニュータウン開発などにより人口増加率はここ数年n本一を示し、平成12年には15万人に述すると予測されている。また、隣接する宝塚iiiも平成11年からニュータウン開発がスタートし、完成時には人口25万人になる。
 武庫川は、田園地帯から都市部に流れる河川であったのが、上流から下流まで次第に都市型河川として、環境が変わろうとしている。
 このような中、三田市は、平成5年に市民の意見調査を実施したところ、「自然環境」に魅力を感じる市民が実に70.2%にものぼった。
また、市政に望むことの第一位が「三mの自然環境の保全と活用」で50.0%であった。
 武庫川も年々自然環境が変化するなか、昔は自由にできたメダカすくい、トンボとり、ホタル狩りなどが大変難しくなってきている。
 このことから私たちは、美しい水辺環境を市民に紹介し、また、流域の小・中学校における環境教育を通して、自然環境保全に対する意識の高揚を図る目的で行政の考えている環境施策にそって、ボランティア活動としていくつかの事業に参画した。
2.事業の実施にあたって
実施に当たっては、まず武庫川の状況を調査した。実施機関は、兵庫県三田保健所、三田市、教育委員会等が中心となり、私たちが協力することにした。
 武庫川の特徴は、水堂・水質面では、生活排水と農業用排水に大きく影響を受けることである。
また、地形面での特徴として、篠山盆地、三田盆地が上流に位置するため流速が著しく遅く、一般的な川の上流の形態をとらない。
 まず、そのような特徴から、武庫川の環境の理解を得るための対応策を考えた。
(1)水質保全のためには(a)水質汚濁のメカニズムの解明(1))市民の水質に対する理解と認識が必要である。
(2)環境保全のためには(a)いつも水辺に目を向ける習慣づけと(1))実践活助の必要性と生活習慣づけが必要である。
 そこで、事業化として市民に対して武庫川の現状の理解と認識へのアプローチを考えた。
コンセンサスの考え方として a)身近なものでポテンシャルがあり、鮮明な印象のあるもの b)三者が事業として整合が取れるもの を考えた。
それは、『水辺」の思い出である。水辺での遊びは子供の頃の思い出として、どの年齢層にとっても忘れがたいものである。
また、それが人生観となっているのではないか。
 水辺環境保全への展開として、「市民に受け入れやすく、創造しやすいこと」をコンセプトとして「子供たちが裸足で入れる水辺環境づくり」を目指すことにした。
3.水辺環境の創造活動

(1)事業の展開
役割は、次のように分担した。
行政側:企画、場の提供、公報、イベント開催
教育側:野外活動等環境教育の場づくり
団体側:企画への参画、調査データの提供、展示物の提供、観察会等の指導協力
(2)実施内容
a)プロローグ事業
「水の週間」に三田保健所がイベントを計画し、この事業に団体として、写真パネル展とメダカ500匹を展示した。
そして、メダカについてのアンケート調査を実施した。
 この反響は大きく、五大新聞に大きく取り上げ られた。
 アンケート調査では、メダカを見たことがないと答えた市民が63%もいた。意見としては、メダカのいる自然環境をみんなの手でつくりたいなど水辺に対する関心の深さを示していた。
 その後、兵庫県三田保健所が次年度から「水辺環境の創造活動」を兵庫県の事業として実施することとなった。
 私たちは、事業企画、調査データの提供、パネル作成.市民アンケート調査企画、自然観察会の開催と指導、イベント会場の展示物の提供など多くの場面で参加、活動することができた。
☆写真パネルの作成:
テーマ「川は生きている」
 武庫川を母として生きる生物の紹介と美しい水辺の景観写真をパネル25枚で構成した。
☆イベント 
 4会場で、水槽の展示をおこなった。水槽の中には、イベント会場地域に生息する魚類・昆虫等を展示した。
また、水槽は、廃棄浴槽を水槽にリサイクル加工し、その中にその地域の池や川の生物生態を横断的に再現することができた。
☆野外観察会の開催
 中学生による水生生物調査の実施とその結果を文化祭に発表報告した。

4.考察
この事業を通してボランティアとしてつぎのようなかかわり方をした。
<直接的なかかわり方>
行政が開催するイベント等や野外教育に積極的に参加し、一般市民が求めている自然環境保全の動向と行政が進めようとする環境施策を把握することによって、市民に還元する。
 たとえば、環境教育の-一環として巡回パネル展の開催や教育センターの環境教育メディア開発への参画(教育用インターネット)を計画している。
<間接的なかかわり方>
 ボランティア活動から得られた情報を市民や教育、そして行政に還元する。
 たとえば、写真集「生きている武庫川」等を作成し、武庫川流域の小・中学校310校に7.000冊寄贈した。また、野外教育への参画(研修、観察会の開催等)を計画し実施している。
 「水辺環境の創造活動」事業を実施したことにより、各イベントへの見学者数は、延べ3万人が訪れたこと、新聞に「川を慈しむ心を大切に」などのタイトルで大きく報道されたこと、「三田市民の意識調査」結果と同棟に、このアンケート調査結果も環境保全に対する市民の関心が大変高いことが示された。
 しかし、一方で市民活動における課題として「小・中学校における環境教育の充実、市民が参加しやすい仕組みの設定、水辺に近付きやすい構造と安心して入れる水辺づくりの必要性」が明らかになった。
 ボランティア団体として、快適な環境の創造を目指していきたい。
 〔発表者 今西将行〕