2014年4月9日(水)
昨日、治療した歯が痛くて、固形物が食べられない。
だから、今日は、ダンスにも行かず、一日、篭っていたわ。
そこで、昨日のエッセイの例会に出した作品を・・。(文中 仮名)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ガス漏れ」
ホームに下りたところで、携帯電話が鳴る。人の流れを避けて見慣れぬその番号に出ると、
「○○ガスの会田といいます」と名乗った。出掛けに連絡したガス会社の人からだが、私は
これからバスに乗り換えなければならないので、話はさっさと済ませて欲しい。なのに、彼は、
「ガスが漏れていました。場所は、駐車場のコンクリの下です」
と、告げてきた。
昨日、七月に亡くなった母の家と土地を売るため整理業者さんを入れ、家一軒、すっかり空に
してもらった。片付けながら、彼らは、「まだまだしっかりした家ですね」と、言ってくれ、
父母のきちんとした生活を誉めてもらえたようで、少し嬉しかったが、帰り際に、外のガスメーターの
側で、「ガス臭いんですが……」と、言いだした。十二月の夕方の冷え冷えした空気を嗅いでみたが、
「そういえば臭うかな?ガス器具を外したせいかな?」
と、曖昧に話を終えてしまった。気にはなったので、今朝、確かめに行くと、やはり、止めてある
ガスメーターの近くが臭う。母の家の隣りのご主人にも来てもらうと、「ガス臭いねえ」と、
言うので間違いない。ガス爆発でご迷惑をおかけしたくないし、急いでガス会社に電話で連絡した。
ガス会社は、すぐ来てくれるそうだが、私は、
「用事があって、今から外出しますので、連絡は携帯電話にお願いします」
と、検査を頼み、慌しく家を出た。今日は、友人が招待券を二枚貰ったからと私を誘ってくれた
歌謡ショーを見に行く日なのだ。
ショーに遅刻したくない。友人も待っている。けれど、ガス漏れとは尋常では無い。
それにしても、コンクリートの下とは意外だった。
「ガス漏れを発見した以上、修理していかなくてはなりません。それで、駐車場のコンクリートを
壊さなくてはなりませんが、宜しいですね。修理方法は二つありまして……」
と、彼は、私に修理することへの同意をとってから、修理方法を説明し始めた。ホームなので、
アナウンスは入る、人がざわざわと動き、携帯からの声は聞きづらい、おまけに、修理方法なんて、
突然聞いても分からない。ちょっと待ってくださいと言いたいが、それでも、今、決断しなくては
ならないらしい。焦りながら、
「どちらのやり方のほうが良いんですか?」
と、聞いてみるが、彼は、どちらとは、言ってくれない。そこで、
「修理って、いくらくらいかかるんですか?」
と、肝心な事を聞いてみた。コンクリートを壊すとなると、シャベルカーでも使うのだろうか?
いったい、いくらになるのだろう?母の家は売りに出したので、修理にそういくらもかけられない。
安い方にしたいと思ったのだが、「それは後で説明します」と、あっさりかわされ、良く分からない
修理方法を話し続ける。どうも、公道と私有地の境でガス管を遮断する「公私ナントカ」というやり方か、
漏れた箇所の管を取り替える「ナントカカントカ」というやり方から選ぶらしい。私は、
「それでは、みなさんはこういう場合、どちらのやり方でするほうが多いのですか?」
と、聞き方を変えてみると、「公私ナントカ」の方だとの返答だったので、そちらにしてもらった。
すっかり時間をとられ、バスに乗ったころ、友人から、「今、どこ?」と、電話が来てしまい、
バス停から会場まで走って、ようやく開演十五分前に席にすべりこんだ。席は二階で、
せり出したような上等な席で、二人で、「ヨーロッパの貴族みたい」「歌舞伎みたい」と、
非日常のショーを楽しんだけれど、それでも心に一抹、
「もしかしたら、数十万円かかる工事を頼んでしまったのかもしれない」と不安が居座っていた。
母の家のガス工事がどうなったか気になって、歌謡ショーの後、友人とお茶もせずに、
急いで帰って来たら、工事はもう済んだようで誰もいなかった。畳三分の一くらいの広さに
駐車場の入り口のコンクリートが切ってあり、ジャリで埋め戻してある。ガス会社に電話すると、
すぐに担当者が説明に来てくれ、「ガスは止めました。この家の売買の際、買主の方に、入り口から
ガスメーターの所まで、ガス管を新しく設置して下さいと伝えて下さい」と、言われた。
気になっていた経費は、会社負担だそう。つまりタダと分かり、結果として良い方を選んだのかなと
ほっとして、肩の力が抜けた。
不動産屋さんにも電話して、経緯を話すと、
「それで良かったです。古家ですから、いろいろありますが、家は解体して、新しく建てるのを
前提で売りますし……」
という返事だった。間違ってはいなかったようだが、「古家」という言葉が胸に落ちて来た。
両親の住んだ家は、もう「古家」と呼ばれる建物なのだ。ならば、同時期に建った私の家ももう
「古家」になるのだろう。私や家族を包んでくれ、これからも包んでくれる筈の我が家が……。
私は家の門の扉をぎ~っと開けて、我が家に戻った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここのところ慌しく、エッセイの種も引越しがらみになってしまう・・。
さて、午後からは、なんとか痛みもおさまり、食べられるようになったわ。(^^)
今日は、いざ引越しの前のぐ~たらデイでした。
昨日、治療した歯が痛くて、固形物が食べられない。
だから、今日は、ダンスにも行かず、一日、篭っていたわ。
そこで、昨日のエッセイの例会に出した作品を・・。(文中 仮名)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ガス漏れ」
ホームに下りたところで、携帯電話が鳴る。人の流れを避けて見慣れぬその番号に出ると、
「○○ガスの会田といいます」と名乗った。出掛けに連絡したガス会社の人からだが、私は
これからバスに乗り換えなければならないので、話はさっさと済ませて欲しい。なのに、彼は、
「ガスが漏れていました。場所は、駐車場のコンクリの下です」
と、告げてきた。
昨日、七月に亡くなった母の家と土地を売るため整理業者さんを入れ、家一軒、すっかり空に
してもらった。片付けながら、彼らは、「まだまだしっかりした家ですね」と、言ってくれ、
父母のきちんとした生活を誉めてもらえたようで、少し嬉しかったが、帰り際に、外のガスメーターの
側で、「ガス臭いんですが……」と、言いだした。十二月の夕方の冷え冷えした空気を嗅いでみたが、
「そういえば臭うかな?ガス器具を外したせいかな?」
と、曖昧に話を終えてしまった。気にはなったので、今朝、確かめに行くと、やはり、止めてある
ガスメーターの近くが臭う。母の家の隣りのご主人にも来てもらうと、「ガス臭いねえ」と、
言うので間違いない。ガス爆発でご迷惑をおかけしたくないし、急いでガス会社に電話で連絡した。
ガス会社は、すぐ来てくれるそうだが、私は、
「用事があって、今から外出しますので、連絡は携帯電話にお願いします」
と、検査を頼み、慌しく家を出た。今日は、友人が招待券を二枚貰ったからと私を誘ってくれた
歌謡ショーを見に行く日なのだ。
ショーに遅刻したくない。友人も待っている。けれど、ガス漏れとは尋常では無い。
それにしても、コンクリートの下とは意外だった。
「ガス漏れを発見した以上、修理していかなくてはなりません。それで、駐車場のコンクリートを
壊さなくてはなりませんが、宜しいですね。修理方法は二つありまして……」
と、彼は、私に修理することへの同意をとってから、修理方法を説明し始めた。ホームなので、
アナウンスは入る、人がざわざわと動き、携帯からの声は聞きづらい、おまけに、修理方法なんて、
突然聞いても分からない。ちょっと待ってくださいと言いたいが、それでも、今、決断しなくては
ならないらしい。焦りながら、
「どちらのやり方のほうが良いんですか?」
と、聞いてみるが、彼は、どちらとは、言ってくれない。そこで、
「修理って、いくらくらいかかるんですか?」
と、肝心な事を聞いてみた。コンクリートを壊すとなると、シャベルカーでも使うのだろうか?
いったい、いくらになるのだろう?母の家は売りに出したので、修理にそういくらもかけられない。
安い方にしたいと思ったのだが、「それは後で説明します」と、あっさりかわされ、良く分からない
修理方法を話し続ける。どうも、公道と私有地の境でガス管を遮断する「公私ナントカ」というやり方か、
漏れた箇所の管を取り替える「ナントカカントカ」というやり方から選ぶらしい。私は、
「それでは、みなさんはこういう場合、どちらのやり方でするほうが多いのですか?」
と、聞き方を変えてみると、「公私ナントカ」の方だとの返答だったので、そちらにしてもらった。
すっかり時間をとられ、バスに乗ったころ、友人から、「今、どこ?」と、電話が来てしまい、
バス停から会場まで走って、ようやく開演十五分前に席にすべりこんだ。席は二階で、
せり出したような上等な席で、二人で、「ヨーロッパの貴族みたい」「歌舞伎みたい」と、
非日常のショーを楽しんだけれど、それでも心に一抹、
「もしかしたら、数十万円かかる工事を頼んでしまったのかもしれない」と不安が居座っていた。
母の家のガス工事がどうなったか気になって、歌謡ショーの後、友人とお茶もせずに、
急いで帰って来たら、工事はもう済んだようで誰もいなかった。畳三分の一くらいの広さに
駐車場の入り口のコンクリートが切ってあり、ジャリで埋め戻してある。ガス会社に電話すると、
すぐに担当者が説明に来てくれ、「ガスは止めました。この家の売買の際、買主の方に、入り口から
ガスメーターの所まで、ガス管を新しく設置して下さいと伝えて下さい」と、言われた。
気になっていた経費は、会社負担だそう。つまりタダと分かり、結果として良い方を選んだのかなと
ほっとして、肩の力が抜けた。
不動産屋さんにも電話して、経緯を話すと、
「それで良かったです。古家ですから、いろいろありますが、家は解体して、新しく建てるのを
前提で売りますし……」
という返事だった。間違ってはいなかったようだが、「古家」という言葉が胸に落ちて来た。
両親の住んだ家は、もう「古家」と呼ばれる建物なのだ。ならば、同時期に建った私の家ももう
「古家」になるのだろう。私や家族を包んでくれ、これからも包んでくれる筈の我が家が……。
私は家の門の扉をぎ~っと開けて、我が家に戻った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここのところ慌しく、エッセイの種も引越しがらみになってしまう・・。
さて、午後からは、なんとか痛みもおさまり、食べられるようになったわ。(^^)
今日は、いざ引越しの前のぐ~たらデイでした。