ほんわか亭日記

ダンスとエッセイが好きな主婦のおしゃべり横町です♪

「雪さんが亡くなって」

2016-05-11 | エッセイ
2016年5月11日(水)

朝から、もの凄い風。上から見ると、街路樹が大きく揺れている。
音も凄くて、外に出る気が起きない・・。
下のスーパーが閉店すると、こんな日でも、新しいスーパーへ歩いて行かなくちゃ
ならないんだな・・。お年寄りには、大変だろうな・・。

さて、そこで、今日は、昨日の例会に出した、エッセイを・・・。(文中仮名)
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「雪さんが亡くなって」 
 二月末、ダンスサークルの会長の奥さん、雪さんが亡くなったと、友人から急ぎの連絡が入った。
ご主人とペアを組んでダンスの試合にも出場していたベテランの方で、サークルの女性たちのまとめ役だった。
私も新入会の頃には、毎回、笑顔で迎えて下さり、女性の踊り方を繰り返し教えて頂いた。
それからも、雪さんの美しいダンスは、私たち後輩の目標となっていた。秋口から入院され、あまり良くないとは聞いていたが……。
すぐ、会長ご本人から副会長の私にも電話があり、私からのお悔やみの言葉に、
「難病に罹って秋からの入院だったが、二月に急変、意識不明が続いて、今朝……」
 と、説明してくださり、葬儀の日程も教えて頂いた。会長はサークルどころでは無いだろうから、もう一人の副会長に連絡、
「あんな綺麗な方がねえ……」と、言い合いながら、会員への連絡、会からの香典、弔電の手配をした。
二日後の通夜の会場には、入り口に、雪さんのダンスのドレスやご主人と踊っている写真が飾られ、ホールには、
花好きの彼女らしい花の祭壇が設えられていた。その中央の、微笑みをうかべている彼女の遺影に、
「七十ちょっとなんて、早すぎる……」との思いが湧いてくる。
 お通夜は、読経の前に喪主挨拶があり、続いて、お坊さんのお話があるという進行で、
お坊さんが、花の好きな彼女の戒名に「華」の字を入れたと説明をしていた時だった。
彼女の遺影を囲んでいた白い花束の左側の束の中から、白いストック一房が、す~っと流れるように動き、
彼女の遺影にかかるように垂れた。
暖房の風に押されたのかしら?いや、きっと雪さんのお別れの挨拶と、思えた。
ご遺族もお坊さんも、背中側に起きたことを見ていない。周りの方たちをそっと見たが、誰も気づかなかったように俯き加減で、
小声も漏れてこなかった。
彼女からの静かなお別れを、事々しく言い立てるのを控え、私は通夜振舞いの間も、その出来事は胸に収めておいた。
 次の土曜日にサークルに行くと、会計の恵さんから、相談を受けた。サークルのお金は、会計さんの手元の現金の他に、
銀行にも預けてある。その通帳の名義人が、サークル名プラス雪さんなのだ。通帳を作るとき、サークル名だけでは
銀行は受け付けてくれず、当時の会計の雪さんの名前が要り、その後、そのままになっていた。これまでは、お金を下す時は、
雪さんご本人が手続きをしてくださって、問題は無かったが、カードも作っていなかったし、これからは、お金を下ろすには、
どうすれば良いのだろう、と。
恵さんから会長さんに電話で相談して貰うと、会長さんが、今からすぐ銀行に出向いてくださるというので、
恵さんと私も、駅前の銀行へと出かけた。
 土曜日の銀行は、ATMコーナーだけが開いていて、会長さんは、そこに、しゃんと立って待っていて下さった。
今は、亡くなった後の戸籍の手続きなど、慌ただしいそうだ。私も、夫が亡くなった直後は、心が大揺れの中、
戸籍を一生分辿ったり、年金の手続きをしたりと、夫の存在を社会的に一つ一つ消して、入れ替わりに、
自分のこれからの生活を作るのに必死だった……。そんな最中に申し訳なかったが、会長さんは、
「ちゃんとしとかなくちゃな」と、通帳をATMに通した。すると、一年分の利子数十円が記帳されて出て来た。
雪さんの名のこの通帳は生きているのだ。けれど、雪さん本人が居ないとお金は下せない。判子も、雪さん任せで、
どれがどれやら分からないそうだ。そこで、恵さんが利子と正確な残高を書き留め、通帳は、会長さんにお渡しした。
会長さんは、月曜日に銀行へまた来て、相談して下さるそうだ。
「サークルのお金だけれど、名義人が亡くなったので、名義人変更をして欲しいと言えば、なんとかなるだろう」
 と、言われ、少し安心した。それで、現実生活はスムーズに流れるようになる。ただ、それは、雪さんの存在の跡を、
また一つ、消すこと……。会長さんから、
「女房のダンスの衣装やらドレスやら、山ほどあって、整理が大変なんだ」
 と、聞くと、すぐ、恵さんが、
「ああ、処分するなら、サークルに持ってきて下さい。私たち、頂きたいです」
 と、答えた。おしゃれだった雪さんの素敵な衣装。「うわ~、頂きたいわ」と、私も思わず、声を弾ませてしまった。
 会長さんは、四十九日が過ぎたら、きっとサークルに戻って来て下さると約束して下さった。
衣装も持ってきて下さるそうだ。私たちも、雪さんの形見分けに、頂こう。そして、慌ただしい今ではなく、
少し落ち着いたであろうその折りにでも、私は、雪さんからのお別れの挨拶を、静かに、会長さんにお伝えしたいと思う。
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例会では、あっさり書きすぎているとの意見もあったけれど・・・。

夜、ダンスの友人から電話で、新しいリーダーさんと新しいサークルを立ち上げようと
しているけれど、いろいろと、周りの声があるらしい。
ウィステは、新しい諺よと、
「出る杭は、打たれる。出過ぎた杭は、打てない」と、教えてあげたわ。(^^)
ウィステは、もうこれ以上サークルには入らないけれど、頑張ってね。
コメント
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