幼いころ家が貧しかった。ろくに食べる物がなく、毎日腹をすかしていた。ひもじかった。
そんなある夜、夢を見た。
亡くなった祖父母が出てきて「ついておいで」と言う。言われるがままに後についていくと大きな料亭だった。
中に入ると、すでに亡くなっている叔父や叔母、親戚の人々が集まって賑やかに食事をしている。
祖父が「さあ、おまえも遠慮せんと、たんと食べ」。
祖母が「これおいしいで」と言いながら次々と料理を勧めてくれる。
空腹だったのでみんな食べた。久々の満腹感だった。
朝になり目が覚める。
「なんや、夢あったんか」
しかし、なぜか満腹感は残っていた。
それからは、食べるものがなくとも、ひもじいとは思わなくなったという。
友人の話である。
「蓮(はす)と鶏(にわとり)」
(『金子みすゞ童謡全集』より)
泥のなかから 蓮が咲く。
それをするのは 蓮じゃない。
卵のなかから 鶏(とり)がでる。
それをするのは 鶏じゃない。
それに私は 気がついた。
それも私の せいじゃない。
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