1929年制作・公開のドイツ映画「パンドラの箱」(無声映画)。
主演は“ルイーズ・ブルックス”、この名前が問題なんだ。
蓮実重彦という老人が書いた、「伯爵夫人」という極めて魅力的な小説に、やれ “和製ルイーズ・ブルックス”だの “裸のルイーズ・ブルックス”だの、この名前がうるさいほど出てくる。誰?と思っていたら…
たまさか、アメーバブロガーさんの“ルイーズ・ブルックスの映画特集”を、渋谷でやっているという情報を見つけ、これは奇縁と足を運ぶ。
こんな古い映画、誰が見るかと思いながら席につくと、左右にしかつめらしい初老の男、まわりには若い女性も… 人気です…
監督:ゲオルク・ヴィルヘルム・パープスト
出演:ルイーズ・ブルックス
原作:フランク・ヴェーデキントの戯曲『地雷』『パンドラの箱』(ルル二部作)
脚本: ラディスラウス・ヴァイダ
日本公開:1930年2月
原作者のヴェーデキントは第一次世界大戦後のドイツ表現主義の先駆者。「ルル二部作」は、アルバン・ベルクのオペラ「ルル」の原作としても有名です。
映画「パンドラの箱」でハリウッドから招来されたルイーズ・ブルックスが主役の“ルル”を演じています。
この作品で、フランス映画界の重鎮アンリ・ラングロワが「ディートリッヒ、ガルボさえも霞んでしまう。ただ、ルイズ・ブルックスだけがそこにいる」という言葉通り神話的存在になった。
あらすじは、
『誰が父だか、誰が母だか、ルルはそれを知らなかった。物心を覚えた時ルルには一人の養父(最初のパトロン)がつきまとい、暮らす所は酒場か踊り場に限られていた。
物語はルルがある大新聞の主筆シェーン博士の寵い者となっているところから始まる。シェーン博士は名家の令嬢と婚約が成立したのでルルに別れ話を持ち出す。ルルはそれを承知せず別れる位なら自分を殺してくれと駄々をこねる。博士はルルの魅力にためらい決断がつかない中にうまうまとルルの術中に陥りどうしても結婚しなければならないような羽目に陥る。遂に博士とルルとの結婚式が挙げられる。
しかし世評の悪いこととルルにうるさくつき纏う男達に博士はつくづく愛想をつかし自分の名誉を保つためにルルに自殺をすすめるが、ルルは誤って博士を射殺し捕らえられる。ルルを取巻く養父、博士の秘書アルヴァ、ルルを恋する「女」、力業の芸人等これを知って共謀しルルを裁判所から逃走させ、とある港に隠れ住み、日夜賭博にひたり放縦無頼の生活を送る。侯爵と名乗る悪漢はルルの前科を探りこれを以て脅迫しルルをエジプト人に売ろうとする。この事件が中心となってルルの同志に裏切り争いが起こり警官隊の追跡となりルルは進退極まって男に変装しアルヴァと養父とともにロンドンへ高飛びする。ロンドンの生活は困苦そのものであり食べるパンもなく着る夜具さえもなく雨漏りの屋根裏に寵って悲劇の訪れを無為に待っている。遂に決心したルルは生活のために自らを売るために街に出る。これを怒るがどうにも手段のないアルヴァ、これを喜ぶ狡猾な養父、外は霧の深くたれこめたクリスマスの夜である。ルルは一人の男の手を取って家へ連れこむ。ところがその男こそは当時ロンドン市街を恐怖にさせていた殺人鬼ジャック・ザ・リッパーで、ルルはその男のために殺される。あまりの運命の転変に茫然自失しているアルヴァは通りかかる救世軍の列についてそれに救いを求めトホトボと霧の街の中に吸い込まれるように消えていく。』引用元 MOVIE WALKER プレス
“ルル”はファム・ファタールすなわち「魔性の女」
実生活でも“ルル”と重なるルイーズ、世間は“ルル”=ルイーズ・ブルックスをイメージするようになった。
『“ルル”を演じるルイーズ・ブルックスも仕事でもプライベートでも自由奔放、言葉も辛辣で気難しく、2度の結婚も破綻。性的にリベラルであり、恋人がいてもアバンチュールが絶えなかった。9歳で性的虐待を受けたとき、母親は「彼女がそう仕向けた」と非難したという。幼くして、後に彼女が演じた無邪気な悪女(=意図せず周りの人間を堕落させ破滅させる)だと決めつけられたことは深い傷を残したに違いない。しかし、ブルックスは自由と本を何よりも愛した一人の人間だった。
』ネット記事引用
ルイーズ・ブルックス(1906〜1985)
記念碑的作品で一度は観る
価値があり、何と言っても
「伯爵夫人」関連で、
“ルル”ってかわいい名前だし
★★★★☆