ヤマヒデの沖縄便りⅣ 歩き続けて 歩き続ける 再び

「基地の島」沖縄を歩き続け34年、気ままに綴ります。自然観察大好き。琉球諸島を戦場に据える「島嶼防衛」は愚の骨頂。
 

【拡散願う】玉城デニー知事が国(沖縄防衛局)の変更承認申請に対し、「不承認決定」―不平等の中での不承認

2021年12月06日 | 沖縄県の動き

◎お詫び

 今回の重大な局面変化に対して、私が旅先に居たという事情により、私の見解を明らかにすることに時間を要しました。お詫び申し上げます。

 私が、知事が記者会見すると聞いたのは、旅先の25日日中でした。報道に接したのは26日付け朝日新聞、神奈川新聞、赤旗紙上(東京のある友から頂いた)でした。帰宅後の29日、沖縄タイムスを見て詳報を知りました。

(Ⅰ)玉城デニー知事が、2021年11月25日「不承認」処分

 26日の朝日新聞1面トップに「辺野古 国の設計変更認めずー沖縄知事『軟弱地盤調査不足』」とあり、神奈川新聞は「辺野古の設計変更 沖縄知事が不承認」と。沖縄タイムスは1面トップで「新基地変更を不承認―知事『調査が不十分』―軟弱地盤工事申請 国対抗措置へ」と報じている。

 この日の不承認処分は、必要かつ十分な審査に時間がかかったということらしい。この結果、衆議院選後となり、沖縄3区のオール沖縄候補敗北の一因となった。一方で、来たる1月23日の地元名護市長選前のギリギリの判断となった。

 沖縄の大衆運動は、知事の不承認処分で、久しぶりに活気を取り戻した。だがこれからが正念場だ。沖縄の人々の心魂に浸透する闘いを展開できるのか、また全国的な運動展開・情報の発信を展望できるのか、私たちに問われていることは、果てしなく大きい。敵は「米日同盟」という怪物だからであり、さらに「沖縄は基地で潤っている」という予断と偏見や、「軍事力で国家(自身も?)を守る」という「日本国民」の思い込み、その両者の、2重の壁が私たちに立ち塞がっているからだ。

①国の「埋立地用途変更/設計概要変更承認申請書」とは何だったのか?

 この問題を考えるためには、この国の窓口である沖縄防衛局が、2020年4月21日に沖縄県に申請した上記の「申請書」を再確認しておかなければならない。

 その前に、辺野古・大浦湾の埋め立てVS阻止の闘いの主な動きを再確認しておこう。2013年12月、仲井真知事が突如、埋め立て承認。14年10月、県知事選で新基地建設阻止を掲げた翁長雄志知事が誕生。15年10月、県が埋立承認を取り消し。16年12月、埋立承認取り消しをめぐる国の訴訟で最高裁が沖縄県の上告を棄却。18年8月、県が辺野古埋立承認を撤回。18年9月、県知事選で翁長県政を継ぐ玉城デニー知事が誕生。19年1月、政府が大浦湾側に軟弱地盤が広がり、水面下90mに達する軟弱地盤があることを認めた。20年3月、最高裁が辺野古埋め立て承認撤回をめぐる訴訟の上告棄却。20年4月21日、沖縄防衛局が設計等の変更を沖縄県に申請。21年8月、県が埋め立て区域のサンゴ採捕許可を撤回。そして今回の不承認。

 この日本という国は、「沖縄の負担軽減」を掲げ、普天間基地返還の「代替施設」として、「辺野古が唯一」と沖縄県・沖縄に押しつけてきた。このカラクリ・矛盾・欺瞞については、別稿で論じる予定だ。

 今回の変更承認申請書を一瞥すれば、妖しげな相が浮かんでくる。全文5000ページと言われていたが、本文はたったの19頁。大半が添付文書だ。そして肝心要の設計変更をせざるを得なくなった軟弱地盤の実態と対策=地盤改良工事の具体的な内容が記されていないのだ(詳しい批判は北上田毅氏の「【解説】辺野古・変更申請書の内容と問題点」2020年9月刊参照)。

 19頁の申請書にこう記されている。「変更後の面積」の註に「普天間飛行場代替施設においては、埋立承認後に実施した土質調査結果を踏まえ、設計および施工計画を再検討した結果、A護岸の構造が変更になったこと、および米軍の要望を踏まえ、斜路の向き等が変更になったことにより、埋立区域の面積が縮小になった」(2頁)とある。また、「設計概要の変更の理由」に、「(2)護岸、堤防、岸壁その他これらに類する工作物の種類および構造」の「1 C護岸:(b)変更するに至った経緯:埋め立て承認後に実施した土質調査の結果を踏まえた地盤改良の追加に伴い、設計について再検討し、合理化した。(c)変更後の設計の考え方:海底地形や地層構成を踏まえた工区分けを行うともに、地盤改良が必要と確認された工区に地盤改良を追加し、想定される沈下量を考慮した天端高に変更した」。また、2のA護岸もほぼ「以下同文」だ(若干縮小)。(14頁)

 設計変更申請書を「土質調査結果を踏まえ、再検討」だけで、変更承認申請書をだしてくるこの国の厚かましさ。これで沖縄県に審査しろという傲慢さ。公有水面埋立法の変更申請の趣旨を理解しない傲岸さ。国と県は全く別格だとふんぞりかえる防衛省。   

 ここをぐっと堪えて、考えてみよう。国が肝心要の変更の理由を示さない根拠を、私は以下のように推察している。理由は2つ、あるいは3つ。(あ)軍事飛行場等の設計であり、設計の大半を軍事機密にしておきたい。(い)大雑把な変更承認を一度もらえば、次々と起こるだろう変更承認の手続きを簡略化できると踏んでいるからだろう(3つめは後記)。

②沖縄県が下した不承認の理由

 沖縄県は、これほど悪質で粗雑な「承認申請書」に対し、よくぞ耐えて審査したものだ。検討に値する資料が少ないために苦労したことだろう。4度にわたって、のべ39項目、452件の質問を行ったのも当然だろう。沖縄防衛局が設置した技術検討委員会に提出した資料、および環境監視等委員会に提出した資料を、沖縄防衛局の了解を得て、これらを含めて検討している。

 県の不承認の理由全文は長いが、要旨は簡潔だ。変更には「正当な理由がない」、「埋立の必要性」も合理性がないと判断している。若干引用する。「地盤の安定性等に係わる設計に関して最も重要な地点において必要な調査が実施されておらず、地盤の安定性等が十分に検討されていないことから、災害防止に十分配慮されているとは言いがたい」から「普天間飛行場の危険性の早期除去にはつながらない」ため「埋立の動機となった土地利用(引用者註:飛行場等)が可能となるまで不確実性が生じており、普天間飛行場の危険性の早期除去にはつながらない」ので、埋立の合理性がない。趣旨は明瞭だ。

 公有水面埋立法は、以下の審査基準(同法第4条)を定めている。埋立免許の制限に「(一)国土利用上適正かつ合理的なこと、(二)その埋め立てが環境保全および災害防止に十分配慮されたものであること、(三)埋立地の用途が土地利用または環境保全に関する国または地方公共団体(港務局を含む)の法律に基づく計画に違背しないこと」と(原文はカタカナ交じりであり、引用者がひらがなに修正)。

 沖縄県の変更不承認は全てこの基準に照らして判断されている。長い不承認の理由を逐一あげるのは煩わしいので要約する。まず環境保全については、国の天然記念物であり、環境省が定めたレッドリストの絶滅危惧ⅠA類に追加され、国際自然保護連合のレッドリストにおいて、日本の南西諸島に生息するジュゴンの地域個体群が絶滅危惧ⅠA類にあると評価されている。にもかかわらず、「事業の実施により生じ得る環境への影響を回避または軽減するために採りうる措置が的確に検討されておらず、措置を講じた場合の効果が適切に評価されていない」と、ジュゴンに特化して争点化をはかっている。また、軟弱地盤改良のため、サンドコンパクションパイル工法を実施することによる、地盤の盛り上がりが環境に及ぼす影響についても適切に情報が収集されていないと指摘している。その工法が環境にもたらす影響を軽微だと無視せず、きちんと予測すべしと言うことだ。大浦湾の海底の環境は、「埋め立て予定地」だけでも、ガレ場・砂場・泥場など多用であり、水深は山あり、谷ありで複雑な地形となっている。こうした中の生物相は、個々の環境ごとに生態系を構成して生きており、地盤が盛り上がったり、崩壊したら、大打撃を受けるだろう。

 沖縄防衛局は、こうした埋め立てによる変容を都合よく解釈し、自然環境というものが極めてデリケートに成り立っていることを全く理解しようとしていない事業者だ。この意味で、沖縄県がこの地盤の盛り上がりを問題点に加えたことを、私は的確だと考える。

 次に災害の防止に関する問題だ。その最弱の環をこう指摘している。「改良が必要とされる地盤は、C護岸から護岸(係船機能付き)付近に分布しており、中でもC-1-1護岸のB-27地点付近において粘性土が水面下90mに達している。(中略)一部未改良の粘性土が残置される計画となっているほか、地盤の安定性を保つために使用される軽量盛土の範囲が広範に渡っている。(註:C-1護岸とは辺野古崎沖から弾薬庫方面の西に至る埋め立て予定の先端部の内、大浦湾開口部側343m。水深マイナス30m前後)そのB-27地点は軟弱地盤が90mまで達しているにもかかわらず、その地点の土質調査を避けて、他の約150m、約300m、約750m離れた地点の調査をもってきて、安定しているから問題ないとするなど、問題点を逐一指摘している。また、これまでの国内外における改良工事の実績は海面から70mまでであり、未改良部分が残ると指摘している。結論として「『埋立地をその用途に従って利用するのに適した地盤となるよう災害防止につき、十分配慮しているか』に適合しない」と断じている。

 ここで県は、港湾施設としての構造基準をもちだし、県の論拠を補充している。空港であり、港湾である(係船付き機能付き護岸ーC護岸の西端)以上、当然のことだろう。

 玉城デニー知事は、25日の記者会見で、こうしたことを力強く語り、埋立土砂などに沖縄戦の遺骨が混じった南部の土砂も使うやりかたを人道的な見地からも許しがたいと正面から断じたという。また、大浦湾の埋立ができない以上、現在強行している辺野古側の工事も止めるよう訴えた。

(Ⅱ)これからのこと

①国による沖縄県の「不承認」の無効化、変更の強行に対して、如何に対抗するのか?

 玉城知事は再三、「対話による解決」を国に呼びかけてきた。しかし安倍・菅・岸田政見は、聞く耳を持たず、「辺野古が唯一」と押しつけてきた。裁判を巡る闘いも、司法が司法としての三権分立が崩壊しており(安保事項については、元々か)、政権の国家意思が判決に及んでいる。

 防衛省が繰り出してくる具体的な手法については幾通りかあるようだが、地方自治を押しつぶすやり方を私たちは絶対に認めることはできない。戦争を準備していく国家権力にとって、人々による人権と自治こそが邪魔なのだ。

 私たちの闘いは、現場での闘いにとどまらず、様々な論点を結びながら、沖縄県内外、全国各地を結び、対中戦争に備える軍事網の強化を阻止しなければならない。これは沖縄でも全くたち遅れている。オール沖縄が掲げてきた「新基地建設阻止と、オスプレイの配備撤回」だけでは、いかんともしがたい軍事化に沖縄も包囲されているのだ。また、76年前の沖縄戦を想起し、現代戦の変化を考察し、事の重大性を考えるしかない。そこを打破していく議論を起していくことが緊急不可欠だと私は考えている。【命どぅ宝】を今こそ、この世の中に、生み直していこう。

②県の「不承認」の立場を支持するが、私が警戒していること

 今、私が危惧していることは、米日政権は軟弱地盤を見越し、変更承認申請のような予定通りの建設を無理だと判断しているのではないか。だから、変更承認申請書も出鱈目なのではないか。だから、軟弱地盤に手つかずだとしてもゼロになるのではない。普天間基地は残り、嘉手納基地を補完する基地に強化され、ヘリとオスプレイが新基地建設の部分的な完成をへて(辺野古側を主として)、やってくるという筋書きがありうるだろう。自衛隊との共同使用を伴う形で。

 本件の論考は、別途準備している。続きをお待ち願いたい。(2021年12月6日)

 

 

 

 



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