今、進行中の軍拡と向き合うために…ヤマヒデのお薦め本
「〈会社〉と基地建設をめぐる旅」 加藤宣子著
ころから刊 2024年11月発行 1800円+税
(1)「〈会社〉と基地建設をめぐる旅」が書かれたきっかけは…
本書のプロローグに「辺野古の『海上』から」が置かれている。2014年8月15日、海上保安庁による実力行使で、市民の船が占拠され停船させられた。ここから辺野古・大浦湾での新基地建設が始まった。著者はこのとき副船長を務めていた(実は私もこの船に乗っていた)。
半年後、東京に戻った著者は、新基地建設を担っている企業と向き合う行動を呼びかけた。基地建設を担う企業の本社が集中している東京。そこに住んでいる著者らは、戦争に加担することになる「基地建設をやめてください」と言い続けてきた。ここから本書が生まれた。
そして著者は考え、調べて、聞いた。旅に出て、各地にある基地建設をめぐる現場を歩いてきた。
(2)時間と空間の中で
著者の原点は第1章「沖縄・辺野古の海上基地建設」だ。著者は調べている内に、この国の来し方に気づく。第2章「『富国強兵』と基地建設」、第3章「世界大戦下の基地建設」、第4章「敗戦後、日米関係下での基地建設」、と時代を追い、会社を各地に追っている。
第2章の冒頭は「鉄砲屋・大倉喜八郎と基地建設」で、佐世保に旅に出ている。可能な限り現場主義を貫いている。第4章は①沖縄―米軍統治下の基地建設、②岩国―沖合移転という名のアジア最大の米軍基地建設、③琉球弧の軍事要塞化―馬毛島・奄美・宮古・石垣・与那国の自衛隊基地と、現代に連なる軍拡の為の工事批判を繰り返している。「終わりに」を、「戦争で儲けるな!、戦争を準備するな!」と問い続けている。
(3)著者について
1969年生まれ。大学在学中にNGOピースボートに関わったことをきっかけに市民運動を始めた。辺野古への基地建設を許さない実行委員会、沖縄意見広告運動で活動。2014年からStop! 辺野古埋め立てキャンペーン発起人、共同代表。共著に「NGO運営の基礎知識」(アルク)、共訳に「戦争中毒」(共同出版)がある(本書略歴から抜粋)。
私は2001年以来、辺野古への基地建設を許さない実行委員会の仲間だった。著者は辺野古で抗議船を動かしたり、東京等で会社と対峙したり、行動派だ。同時に事実を究明しようとする知性派でもあり、各地で協力者に恵まれた結果が本書を結実させた。大変お疲れ様でした。
(山本英夫 2025年1月6日記)
◎なお、お求めは、最寄りの本やさんにご注文願います。ISBN 978-4-907239-76-3
あるいは、最寄りの地域図書館に購入希望をリクエストしてください。
または私にお声かけ願います。直にお渡しできる方ならば、1800円です。
なお、書評を書くと著者に言いながら、やれていません。今月末をめどに書きます。著者及び関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。
基地建設に手を染め、膨大な利益を貪る企業に目を向けた著書って、今までになかった視点ですね。しかし、軍事と企業は密接に結びついているのだから、必要かつ大事な視点です。
新たな視点を市民が如何に獲得したのかも読みこんでいただけると嬉しく思います。私もささやかながら協力した本です。