日本版カジノは大きな成功が約束されている(東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース
東洋経済オンライン 12/17(土) 6:00配信
12月15日午前1時、衆議院本会議での可決をもって、ついにIR推進法(いわゆるカジノ法案)が成立した。同法案には15年の歴史の積み重ねがある。2015年4月に議員立法として提出され継続審議となっていた法案が臨時国会終盤の11月30日に審議入りし、2週間余りで成立に至った。
IR法制は、議員立法のIR推進法、政府提出のIR実施法の2段階方式となっている。そのうち今回成立したIR推進法は、プログラム法であり、政府・関係省庁のIR実施法の整備の取り組みを起動するスイッチだ。今後、政府は、IR推進法の公布日・施行から1年以内に、IR実施法を策定し、国会に提出する運びとなる。
IR実施法は、全国のIR区域数、区域選定・事業者選定のあり方、公益性のあり方、納付金のあり方、社会コスト(ギャンブル依存症、反社会勢力排除、青少年保護、マネーロンダリング対策)の最小化の仕組み、など詳細を規定する。IR実施法案は、早ければ、次期通常国会に提出され、中身をじっくり審議されることになる。
■15年間の積み重ねが大きい
IR推進法の成立までには、15年間の政官財・地方自治体における調査研究、5年間の超党派IR議連および各党内での議論があった。そのうえ、最初の法案提出(2013年12月に提出。継続審議となっていたが2014年11月の衆院解散により廃案になった)から3年を経ている。この間に、IRの経済効果、カジノの負の側面の海外事例調査と日本にあるべき対策(ギャンブル依存症対策、反社会勢力排除、青少年保護、マネーロンダリング対策など)の調査研究を積み上げており、関係者の間で共有されている。
過去15年の中でも、とりわけエポックメーキングなイベントは、2011年の超党派IR議連(旧民主党政権下)における2段階方式(IR推進法とIR実施法)の採用、そして、2014年の政府による検討開始(6月の日本再興戦略にIRを検討する旨を書き込み、7月には政府・内閣官房にIR調査チームを設置した)である。
多数の自治体・企業が正式に取り組みをスタート
今後、政府はIR実施法の策定を正式にスタートする。一方、自治体、経済界は、IR誘致、IR事業化の準備を開始する。IR実施法の成立後には、国が自治体(市町村が発議)から提案を公募して選定する(手あげ方式)。そして、自治体が事業者から提案を公募・選定することになる。
日本のIR区域数の上限はIR実施法で法定されるが、超党派IR議連では「全体で10カ所ほど、道州制の広域ブロックに一つずつ」という大枠が共有されている。
現在、北海道、東北、関東、中部、関西、四国、九州などのブロックで、一つ、あるいは、複数の市町村がIR誘致に名乗りを上げている。同一ブロック内で、複数の市町村が誘致に取り組む場合、市町村間の激しい誘致競争となるだろう。
一方、IRに取り組む企業は、まず、大きく2パターンに大別される。一つは、IRを開発・経営するIR事業コンソーシアムの創業株主を目指す企業群、もう一つは、IR事業コンソーシアムに財・サービスの納入を目指す企業群だ。IR事業コンソーシアムの創業株主を目指す企業群は、大きく3パターンに大別される。IR誘致エリアに根差した企業(地元経済界)、全国区の大企業(都市開発系、レジャー開発系など)、そして、外資カジノオペレーターである。
■関東・関西IRの利益は世界最大級になる
日本のIRは、都市部、地方部とも大きな利益が期待される。IRの利益規模は、後背とする商圏の大きさ(日帰り圏内の経済規模)、施設数(施設間競争)でほぼ決定する。
日帰り圏内の経済規模をもとに関東IRの収益規模を算出すると、営業利益は2000億円になる。関西IRの場合も、営業利益1000億円規模が見込まれる(2021年度以降の想定)。
先行するアジアにおける3大施設はどうか。シンガポールの「Marina Bay Sands」の営業利益は1300億円、「Resorts World Sentosa」は433億円、マカオの「The Venetian Macao」は1019億円である(2015年度実績)。アジア3施設は、それぞれ単一施設として世界最大級の収益力であるが、関東IRの収益はそれら以上、関西IRはそれらと同等の規模となりそうだ。
地方部のIRであっても、十分に世界上位と肩を並べるようなポテンシャルがある。とくに北海道ブロック、東北ブロック(仙台空港周辺への設置を想定、集客範囲は岩手県・宮城県・福島県)、四国ブロック(鳴門市への設置を想定、集客範囲は兵庫県、香川県、徳島県)、九州ブロック(佐世保市への設置を想定、集客範囲は福岡県・佐賀県・長崎県)のIRは、それぞれ20兆円前後の経済規模を誇っている。この経済規模をベースに試算すると、北海道、東北、四国、九州もそれぞれ営業利益100億円以上のレベルになることが想定される。
典型的なIR反対論に対する回答
これだけ大きな経済効果があるIRだが、副作用を懸念する声もある。もちろん、副作用についてはきっちりと手当てをする必要があるのだが、反対論者の主張は事実を正しく認識していないケースが多い。
以下にIR推進法の成立までの議論における典型的な「IR反対論」とそれに対する回答を示す。主に経済的な側面に焦点を置いている。
【反対論 1】海外ではカジノ産業は衰退しており、日本でIRを導入しても経済効果は大きくない。米国のアトランティックシティ(ニュージャージー州)などでカジノ施設の経営が悪化しているのをみても、明らかだ。
→回答 日本と米国では事業環境が異なり、比較の意味は乏しい。米国は競争の結果、カジノ施設は1000カ所に拡大し、一部エリアで過当競争になっている。一方、アジア・パシフィック各国では、政府が施設数を少数に管理し、ほぼすべての施設が高収益を維持している。そして、日本も同様の制度設計となる見通しである。
ちなみに、直近、アトランティックシティでは、一部施設の閉鎖の結果、施設数が適正化し、足元の残存施設の利益は2010年以降の最高益となっている。
■マカオは失敗している?
【反対論 2】マカオは、中国の習近平政権の腐敗取り締まり強化で市場が縮小した。カジノのビジネスモデルのもろさを露呈しているではないか。
→回答 マカオは、政府方針に沿い、コタイ地区にIRを集積させ、カジノ中心から観光地へと変貌を遂げた。その結果、カジノ市場は8月以降、回復し、成長軌道に復帰している。ちなみに、ボトムであった2015年度でも6事業者の営業利益の合計は約4000億円と大きかった。
【反対論 3】アジア、日本のカジノ収益の多くは、日本人客に起因するはず。海外客からの収益が主とならなければ、国際観光に貢献しない。
→回答 確かに、アジア・パシフィックのIRでは、カジノ収益の6~8割が日帰り圏内の住民。そのため、シンガポールのような都市国家を除けば、収益の多くは内国人にとなる。ただし、IRが生み出す地域観光への貢献は、カジノ消費という狭い範囲ではなく、IR全体の集客とIR内外を含む周辺都市における消費、広域観光のハブとしての広域への送客効果と消費の総計である。それら国際観光への貢献は、外国人のカジノ消費よりはるかに大きくなる。
なお、IR内のカジノ施設(施設面積の5%内外)から得られる利益は、IR内の非カジノの観光アトラクション施設群(ホテル、MICE、劇場など。同95%内外)だけでなく、周辺の都市インフラ整備・街づくりにも用いられ、広域観光活性化のエンジンの役割を果たすことができる。
富裕層の資金を循環させる役割を持っている
【反対論】カジノの収益は、消費行為における所得(購買力)の移転でしかない。カジノ収益の増大は、顧客の他の消費支出減少というカニバリゼーション(共食い)をもたらすはずだ。
→回答 カジノの収益は、顧客に射幸性、サービスを提供した対価。コトの消費である点において(モノの消費でなく)、他のサービス産業と同じ。カジノ収益は、富裕層のレジャー支出などを通じ、消費全体のパイを拡大する。なお、少数管理されたカジノを含む統合型リゾート(IR)は、国内外の富裕層を主な対象とし、固定化している富裕層の資金を循環させる役割を持っている。
■社会コストが深刻になるのではないか?
【反対論 5】社会コスト(ギャンブル依存症対策、反社会勢力排除、青少年保護、マネーロンダリング対策)が深刻なものになる。
→回答 先進国の大半は、IR施設を持つが、カジノ施設の運営は厳格に管理され、社会コストは十分にコントロールされている。
とりわけ、ギャンブル依存症対策については、現状、日本は公営競技、パチンコを原因とする問題が放置されている。IR導入を機に、既存の問題も含めて適切な対策を整備すれば、絶対値として状況を改善させることが可能と考えられる。事実、シンガポールは、IR導入を機に、ギャンブル依存症の問題発生率が大幅に改善した。
【反対論 6】外国資本のカジノ企業が参入した場合、日本の金融資産が海外に流出してしまう。
→回答 外国資本が日本のIR事業をコントロール(経営権を獲得)した場合、確かに日本の金融資産が海外に流出するだろう。筆者は、日本産業界、誘致エリアの経済界がIR開発を主導すべきであり、それは十分に可能と考えている。事実、全国の誘致エリアの経済界は、エリアに最適なIRの開発とその運用を実現するべく、自ら事業を主導する方向にある。そのため、地元経済界、日本産業界が中心になって事業会社をつくる形が主流になるだろう。
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いかがだろうか。東洋経済オンラインの読者の皆さんには、ぜひ冷静な判断をしていただきたいと思う。
小池 隆由
ギャンブル依存症対策については、現状、日本は公営競技、パチンコを原因とする問題が放置されている。
公営はほとんど依存症対策は進んでるよ。
だって、1970年代頃までは、「競輪で借金作って一家離散」なんていう記事がしばしばあったけど、今ではまずお目にかからない。
しかも、発売頻度からすると、今のほうが1970年代よりも「ひどい」にもかかわらずだ。
要するに、公営はノミ屋、コーチ屋といった「反社会勢力」を曲がりなりにも一掃したことが大きいと考えられる。とりわけ、電話投票(現在は在宅投票と称されることが多い)の威力は絶大で、今や、中央競馬の売り上げの約7割近くが「在宅投票」となっており、他競技も3割から4割近くに達しようとしている。これで、「買えない券はノミ屋を使うよ」、なんてことをしなくてよくなった。
で、在宅投票はそれこそ、「有り金」の範囲内でしか買えないから、わざわざ借金してまで、という買い方は難しくなる。さらに言うと、公営の客の大半は、今や70代以上だから、大きな勝負ができなくなっていることにも起因している。
これに対し、パチンコ等には場外発売なんてものは存在しないし、もちろん、電話投票なんてものもない。現場でのナマ勝負オンリーなわけだが、要するに、これが「よくない」事態を生んでいる。
「現ナマ勝負」はとかく「熱くなりやすい」。公営が荒廃しきっていた時代も、これが原因だった。で、公営の場合は、それにつけこむ、「よからぬ人物」が勝手に現れ、そういう人物にホイホイと乗せられると、たちまちカネは消えていく。だからこそ、「反社会勢力」を公営から一掃した意味は大きかった。
パチンコの場合は100%「私営」なわけだから、客は果たして、どんな形で儲けなのか、はたまた損なのか、知る由がない。だから、「(徹底的に)勝つまでやらざるを得ない」と思い込む人物が現れ、結果、パチンコ依存症患者が出てしまうことになる。
カジノも恐らく、ちゃんとしたルール決めをやらないことには、依存症を患う人物が少なからず出てくるということを想定しなければなるまい。その辺が、「儲けかスカか」がはっきりしている公営とは違うのだ。
さらに、カジノを行う趣旨は一体何なのか?
まさか、セガ〇ミー、や、〇イナムを儲けさせるため、なんてことじゃないだろうね?
それが主目的ならば、間違いなく、カジノは「流行らない」。
そうではなくて、特養の開設などの社会福祉事業への貢献とかいった、「大義名分」がはっきりとしているならば、それこそ、公営のように、30年近くに亘って拡大一途の成長を見込める可能性も出てくる。
やはり、ギャンブルをやるからには、社会に幅広く貢献するという大義名分は不可欠だよね。