増田寛也・岩手県知事が来年4月に行われる岩手県知事選挙に立候補しないことを表明した。
Yahoo 岩手ニュースより(抜粋)
岩手県の増田寛也知事(54)は30日、任期満了(07年4月29日)に伴う知事選に立候補しない意向を明らかにした。現在3期目の増田知事は臨時会見で「3期12年を一つの区切りだと決めていた」と述べ、多選を知事引退の理由にあげた。今後は「まったく白紙」とし、国政への転出は「100%ない」と否定した。
増田知事は東大法学部卒で、旧建設省を経て95年の知事選で小沢一郎・新進党幹事長(当時、現民主党代表)に擁立され初当選した。03年の知事選では地方選挙で国内初のローカル・マニフェストを掲げた。05年の全国知事会会長選にも立候補、現会長の麻生渡福岡県知事と選挙戦を繰り広げた。
増田知事は、多選批判が出た佐藤栄佐久前福島県知事の逮捕は直接影響していないとしているが「知事が4期目になると、県庁内にものをいえる空気がなくなる。私の職業倫理観に誠実に従った行動だ」と語った。【林哲平】
◇切り捨てないか不安を隠せず--競馬関係者
経営改善計画が議論され、存廃の瀬戸際に立たされている競馬関係者にとっても衝撃は大きい。千葉四美・県調騎会会長は「増田知事は競馬存続に今までよく取り組んできたので、不出馬は競馬に対しより厳しくなる感じがする。新しい知事が前の知事が決めたことと切り捨てるのではないか」と不安を隠さない。おひざ元の奥州市の相原正明市長は「増田知事の任期中にキチッと問題は仕上がる。新しい融資スキーム(枠組み)を組み、存廃基準を明確にするなど知事は競馬問題に取り組んできた。新しい知事も今までの経過を踏まえた形で考えることになるだろう」と話した。
◆増田知事との一問一答
◇「懸案、全部片づけて」
増田知事と出席記者との一問一答は次の通り。
――(不出馬の)理由と退職後の身の振り方は。
知事 地方自治には自らの原体験がある。茨城県出向時代の県知事は4期目で知識の面でも詳しく、県庁全体が物を言う気にならないのを見聞きした。結果として知事が5期目にゼネコン汚職で失職。任期が長いと弊害は大きいと常々思ってきた。身の振り方は全く白紙。国会議員に転身することは全くない。辞めてから考えればいい。
――最近相次ぐ多選知事の不祥事の影響はないのか。
知事 全くない。
――不出馬の決断はいつごろしたのか。
知事 ちょうど任期6カ月で、(知事選の)候補者を選ぶのに時間を残しておかないと、本当に選択肢が狭くなるのではないかと見ていた。暮れでは遅すぎると思いがあった。
――出馬断念は県政を投げ出すという声もあるが。
知事 必ずどこかの時点でけじめをつけなくてはいけない。先送りをできるだけ避け、片付けられるものは全部片付ける。競馬についても次の知事が難しい判断をするのではなく、今全部枠組みを作る。競馬問題や県北沿岸振興などの懸案に、任期の残り全力をかけて成果を出したい。
――次の県議選、知事選でのスタンスは。
知事 県議選は、私が手伝えるところがあって従来気持ちを同じくしてやってきた方から要請があれば最大限協力したいとは思うが、今後のことになる。知事選の後継はない。私が知事選のために動くことはない。
――多選批判で、辞める改革派知事もいる。
知事 (任期が)長いと経験ができてくるがそれが危ない。自治体の首長は自らの見識を示していくべきだ。後に続く知事や首長に(相次ぐ不祥事を)乗り越えて分権を進めてほしいと伝えたい。
――民主党の小沢一郎代表の不支持や達増拓也衆院議員の出馬表明は影響したのか。
知事 影響はない。従来からの考え方だ。
――一連の競馬問題が影響したのか。
知事 影響ない。任期中に残り6カ月で最優先で取り組まなくてはいけない課題だと思う。
――マニフェストを達成していれば次の選挙に出る資格を持つとしているが、自らのは点検したか。
知事 これからマニフェストは首長全員に必要。ただそれと任期は別のこと。マニフェストの結果は(任期の)最後に明らかにする。後に続く知事が新たなものを作り県民の信任を得ることが大切。
――次期知事選には政党がそれぞれ候補を出してくるだろう。仮に4選してればどこにも所属しない知事が出たが、このことについて忸怩(じくじ)たる思いは。
知事 全くない。あまり早くしゃべりすぎると皆さんがついてきてくれない気もするが、しゃべったんでからっとしている。明日から立場ははっきりしている。
■解説
◇ポスト増田で活発な論戦を
「論理を重視する」「自分にも他人にも厳しい」。周囲からこう評される増田寛也知事らしい会見だった。知事は長いと風通しが悪くなる、だから3期まで――。福島や岐阜の不祥事で知事の多選批判が高まる中での決断。県民の多くはトップの決断に一定の評価をしつつ、同時に将来への不安を感じたのではないか。
財政健全化で今年度予算ではプライマリーバランスを達成したものの、県債残高は依然1兆4537億円(05年度末)を超え、一人当たりでは104万円。期待される自動車産業集積もまだその緒についたばかり。景気回復の実感にはまだ乏しく、手腕を期待する声も聞かれる。
不出馬が決まったことで、県政界は統一地方選、参院選へと続く選挙イヤーに向け、新たなギアが入った。知事選に出馬する達増拓也衆院議員を先頭に、連動選挙で大勝を狙う民主と、知事候補者がゼロに戻って苦しい自民の対立構図になるが、マニフェスト選挙など増田知事の残した成果を確かなものにする論戦を、県民は期待する。【林哲平】
やはり、根っこには競馬問題があり、しかもその問題にかなり苦悩している様子が伺える。
増田知事は競馬存続の方向の考えであり、そのため、あらゆる形で岩手競馬再建へと取り組んできた。
しかしながら、増田知事が競馬問題に深入りしていけばいくほど、競馬組合の経営の杜撰さが浮き彫りに出て、そのたびごとに県議会から厳しい突き上げがあった。
例えば、旧競馬場の件だが、新・盛岡競馬場オープン後もしばらくは売却のあてもなく、ほったらかしの状態。経営危機問題が表面化して漸く火がつき、売却先は決まったみたいだが、当然のことながら売却価格は「二束三文」。
さらに、赤字の箇所が多いテレトラックの問題にしても、見通しの甘さというのか、売りに出せばすぐに買い手がつくかのように議会に答弁した。しかしながら釜石も種市も今年度中の売却はできず、ついに今年度も赤字が決定的となった。
他にも赤字要因のものは一杯あるんだが、岩手県競馬組合が垂れ流した累積赤字はなんと330億円。
しかも、三菱UFJ信託銀行と土地信託契約を結んで営業を行ってきたバルソビルの信託契約解除に伴う累積赤字分も背負わねばならない有様で、このビルの累積赤字は「別途」137億円もある始末である。
一応、競馬組合の赤字分、約330億円について増田知事は、緊急財政支援の名目で穴埋めするつもりだが、問題は果たして今後、岩手競馬の将来性のどうなのかという点については、いまだ触れられていない。
そして思うに、増田知事とすれば、もう競馬問題は岩手県だけで解決するのはムリであり、国に何とかして出てきてもらいたいというのが心情だろう。
しかしながら、三位一体の改革につき、地方自治体に出来る限り財源移譲させようという政府の考え方と矛盾することになり、結局、国の「出馬」はアテにできない。
さらに今後、仮に一時的救済策として岩手競馬を救えたとしても、今後の岩手競馬の見通しはどうなるのかと厳しく議会で問われると回答に窮した増田知事はついに「最終手段」というのか、
という話を持ち出してきた。つまり、増田知事の競馬問題に対しての取り組みというのはそこまでが「限界」なんだといえる。
これは増田知事に限らず、どの人がやっても同じことだと思う。そもそも、競馬組合は今更こんなことを言うのは何だが、どんな「経営見通し」を行ってきたのか?といわざるを得まい。
普通の企業であればとっくの昔に「破産状態」である。しかし自治体が運営しているからという理由で「潰れない」という意識が競馬組合にあり、さらにいえば、尻拭いは県がやってくれるだろうという、明らかに甘ったれな考え方にこれまで終始してきた。
そして、増田知事に代わる人がもし明確なプランを持って、
「岩手競馬を廃止する」
ということになったとしたらもうその時点で岩手2場は「終わり」である。
残された任期約半年。増田知事は何とか競馬問題を円満に解決の方向へと向かいたい気持ちはあるのだろうが、恐らく、半年程度の期間ではムリである。
あとは競馬関係者側が何とか岩手競馬を存続の方向へと向かうべく次の知事に一連の事項を託すしかないのではないか。
そして、競馬関係者側からやはり、岩手競馬を今後どうするのかというビジョンを提示せねばどうにもなるまい。
やれることはいくらでもある。全国の地方競馬場を行脚するなり、はたまた首都圏のウインズでも、月曜日は売ってもらうといった手段を競馬関係者側が策を講じなければ、一連の事態は解決できないように思う。